本当に恐ろしいものは









+++






 『ルナちゃん』


 とある学校でいじめを受けていた女子生徒Aが宿泊研修中に自ら命を絶ったという話から生まれた都市伝説。

 女子生徒Aは以降も亡くなったT山の宿泊施設に悪霊となって現れるのだという。

 自殺があったことは事実らしく、それが原因で元々山荘であったその施設は一旦閉鎖。しかし、後に現在の宿泊施設へ改装されたようだ。

 『ルナちゃん』と言う名前自体は本名ではないらしく、その名が広まった原因は後述に記載。

 都市伝説系の掲示板には・『ルナちゃん』の噂を知っている。・その宿泊施設に泊まった生徒限定。・深夜に廊下を出歩いていると『ルナちゃん』に襲われる。と書かれているが半分ガセ。



 調査の結果、実際にあったとされる話によると―――件の宿泊施設で研修中に、とある生徒Bが突如謎の高熱にうなされた。

 生徒Bは後に病院へ運ばれたが死亡。原因は不明。亡くなる直前まで「…るな」と呟いていた。

 後日、生徒Bのスマホを調べてみると件の宿泊施設で実際に起こったという自殺画像が出てきたとのこと。



 ちなみにその自殺画像というのが例のいじめを受けていたという女子生徒Aのものらしく、その画像は現場を目撃した当時の生徒か他の宿泊者によって拡散されてしまったとのことだが。

 以上の話から、生徒Bは女子生徒Aの自殺画像を見たせいで女子生徒Aの霊に憑り殺されたのではないか? という噂が広まったらしい。

 女子生徒Aの名前が『ルナちゃん』になったのも生徒Bが呟いた言葉が原因だという。




 僕(サイト管理人)の見解としては…

 前述の『ルナちゃん』に襲われる条件が半分ガセと書いたのは、もう半分の条件が・女子生徒Aの自殺画像を見ること。ではないかと思っているから。

 事実、ネットで検索をかければそれらしい画像が出てくるようで、生徒Bが呟いた「…るな」というのは「見るな」という意味だったのではないか? と推測される。

 この宿泊施設自体、具合が悪くなったという生徒は少なくないらしく、何かがことは確かだろう。

 

 まあ、色々と条件があるためそこまで心配する必要性はないと思われるが、もし該当する生徒がいるならばご用心を。

 なお、例の自殺画像を検索する際は自己責任でお願いします。

 







+++








 私はきっと『ルナちゃん』の条件に満たされなかったのだろう。

 そして、斎藤さんと摩実まみは条件が満たされてしまったのだろう。

 そう思わずにはいられなかった。

 だから私は今、無事なのだと…。

 しかし、一番恐ろしいことはその条件ではなく。

 あのときのこと―――。



『―――そういえばね、その怪談話で見て欲しいものがあるんだけど…』



 そう言って斎藤さんがスマホを見せてきたことだった。

 あれは何を見せようとしていたのか。

 もしもそれが例の画像だったらと、そう思うと―――私は背筋が凍った。

 斎藤さんに悪気はなかったという可能性もある。

 ただ。

 何故、斎藤さんはあの時間までトイレを我慢していたのか。

 何故、私と同じように汗をかいていたのか。

 スマホを握っていた手が震えていたのは、もしかすると…。

 そう疑ってしまうと、きりがなくなってしまう。

 ―――今となってはもう、その真相を知ることはできないのだけど。






 とにかく…私はもう二度と、あの宿泊施設を訪ねないと誓った。

 行事があったとしても、何がなんでも休もうと思う。

 ―――そう、私は見てしまったのだ。

 例の画像を。

 その掲示板に上げられていた画像を。

 一緒に書かれていた、誰も気づいていない赤文字のメッセージも。

 うっかりと見つけてしまったのだ。

 だからもう、二度とあの山には近づかないし、宿泊研修にも行かない。

 私は何も見てなんかない。

 私は何も悪くない。




 だから―――だから、どうか、私を襲わないで下さい。

















 『死 ンダ  ワタシヲ  撮 ルナ  見 ルナ   見タラ許サナイ』

 








~ 完 ~ 







  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ルナちゃん 緋島礼桜 @akasimareo

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ