そして…
「―――あ、そういえばね…その怪談話について…見て欲しいものがあるんだけど…」
そう言うと斎藤さんはスマホを取り出して私に何かを見せてくれようとした。
未だ恐怖心は残っているけれど、せっかく斎藤さんが話しかけてくれているし。
一夜明けた廊下にいるこの状況で何かが起こることなんて、もうないはず。
そう思って私は斎藤さんのスマホを受け取った。
「何やってんだお前たちー、まだ起床時間じゃないだろ」
と。その声に私は驚く。
思わずスマホを落としてしまいそうになったほどだ。
けど、慌てて何とか受け止めて、スマホを斎藤さんに返した。
私たちの目の前にいたのは『ルナちゃん』―――ではなく。
全く似ても似つかない、高身長にがっしりした体格の男性教師山谷先生だった。
「す、すみません…!」
「トイレ我慢できなくて…それで喉も渇いたので休憩してました」
「そうか。今日は登山だからちゃんと時間まで二度寝しとけよー」
山谷先生はそう言うと踵を返し、あっさりと立ち去っていく。
胸元を押すとバクンバクンと、今にも心臓が飛び出てきそうなほど高鳴っている。
ショック死しても可笑しくないくらいだった。
「びっくりしたね…」
「うん…部屋戻ろうか」
斎藤さんも驚いていたらしく、スマホを持つ手元が震えていた。
あの先生の驚かし具合の方が充分恐怖だったな、なんて思いつつ。
私は部屋へと向かい、斎藤さんも後に続く。
つもりだった。
ゴトン
鈍い音が、私の後ろから聞こえてきた。
異様な物音に私は無意識に振り返っていた。
するとそこで斎藤さんが何故か大の字に倒れていた。
「だ、大丈夫…!?」
動揺しながらも近付いてみると、斎藤さんは苦しそうな顔をしていた。
「な、んで…やだ…まって……」
呼吸は荒く、まるで何かに怯えているようで。
もがき苦しんでいた。
私は怖くて、それ以上動けなくなった。
「っ!? だれっ……!!?」
気付けば腰を抜かし、私は座り込んでいた。
それからすぐ異変に気付いた山谷先生が戻ってきて、駆け寄って来ていた。
「どうしたっ!? 大丈夫か!?」
呼びかけながら山谷先生は手早く心臓マッサージの準備を始めていた。
そのうちに他の教師も駆けつけて、何処かへと走り、何かを取りに行っていた。
私は、何がなんだかわからなくてただただ震えていた。
「先生ー!」
「どうした!?」
「同室の相沢さんが苦しそうにしてて…!」
まるでこれも夢だと、思った。
悪い夢だと。
目が覚めれば全部ただの怖い妄想だったのだと。
そう思いたかった。
その後の記憶は、よく覚えていない。
斎藤さんが救急車で運ばれていく様とか、あの
他の生徒たちは慌てふためいてパニック状態だったとか。
その後の日程は全て中止になってすぐに帰宅させられたとか。
あまりよく覚えていなかった。
私の意識がはっきりとし始めたのは、家に帰ってからのことだった。
後日、全校集会で斎藤さんと
決して自殺ではなく、あくまでいじめは関係なかったと、わざわざ説明していた。
しかし。
私は違うものを疑い始めていた。
偶然過ぎる2人の死の共通点が、なんとなくアレのような気がしてならなかったのだ。
『ルナちゃん』
何日か過ぎ去ってようやく気持ちが落ち着いてきた頃に、私はスマホでその都市伝説を調べてみた。
怖かったけど、興味半分と―――それと『ルナちゃん』について何でもいいから知っておいた方が良い気がしたからだった。
ネットに上がっていた情報の大体は
しかし、地方の都市伝説を調べているサイトに最も信憑性の高い情報が載っていた。
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