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 目の前をひらひらと手のひら大の羽の生えた小さな人間のような生き物が舞っている。

 手を伸ばすが指の間を水が通り抜けるかの如くすり抜けた。

 当たり前だ。妖精は捕まえる事はできない。目に見える。存在している。しかし触れることはできない。

 その小さな生き物は、古来より物語で語られてきた。

 曰く、異世界へと案内する。

 曰く、英知や道具を授ける。

 曰く、死者と通じている。

 もちろんそんなものはおとぎ話だ。

 現代では彼らは一種の現象としてとらえられている。ただそういうものだ、と。

 どこか理性的な頭でそんな事を考えるも、しかし身体は勝手に動き続ける。

 懸命に、必死に、縋りつくように。目の前の妖精を追い続けていた。

 距離を取った妖精がこちらを振り向く。

 手の届かない場所にいる妖精は、いつの間にか彼女へと変わっていた。

 顔は長い髪に覆われ、表情が見えない。しかし俺が彼女を間違えるわけが無いから。

 愛しい彼女に手を伸ばすも届かない。

 そして彼女が口を開いた。

「鼓太郎……」

 

「……鼓太郎、鼓太郎。……鼓太郎兄さん!」

「んぁ!?」

 内海鼓太郎が夢から目を覚ますと、目入ってくるのは百合野真白の顔だった。

 彼が目を開けると目の前にくりくりとした目が輝いている。不機嫌そうに眉根を寄せているが、もともと可愛らしいと評される顔で睨まれてもあまり恐怖感は無い。しかし見慣れているとはいえ、垂れてきた髪が顔にかかる程の至近距離に整った顔立ちがあるのは心臓に悪かった。鼓太郎の心臓は朝からいろんな意味で跳ね上がる。

「おはよう、鼓太郎兄さん」

「……おはよう、真白」

 寄せていた眉根を開いて、ご機嫌に彼女は朝の挨拶をしてくる。鼓太郎が返事をしてきたのを確認するとようやく顔を離した。

「お前、また勝手に……」

「ちゃんと叔母さんに許可貰ってるもん」

 文句を言う鼓太郎に真白は不敵に答える。そうしてやっと彼のぼやけた焦点が定まってきた。寝起きの彼と違い彼女は既に制服に着替えており、その容貌はしっかりと整えられている。

「鼓太郎兄さんも早起きする?」

「そうしたらお前、さらに早い時間に起きるだけだろ……」

「さすがご明察」

 真白はからかう様に鼓太郎との掛け合いを行う。その表情はとても楽し気だった。

「はぁ……。というか着替えるからさっさと下に降りててくれ。顔も洗ってくる」

「え? 私今更そんなので恥ずかしがらないけど……」

「俺が気にするんだよ!!」

 鼓太郎が顔を赤くしながら真白の背を扉まで押す。真白は観念したように自分で扉前まで歩き出した。

「分かった、分かったってば」

 そしてドアノブに手を掛けたところで動きを止めた。

 怪訝そうな表情をする鼓太郎の前で真白が振り返る。

「真白? どうか――」

「んっ」

 そうして呆気にとられている鼓太郎を置き去りにして真白が鼓太郎の唇を奪った。

「――っ!? ばっ!?」

「ははっ! 鼓太郎兄さん、顔真っ赤」

 真白は自らの顔を赤くしながら、鼓太郎の事をからかう。そして彼女は羞恥と僅かな怒気で顔を赤くしている鼓太郎から逃げるように扉から走り抜ける。

「あんの、真白め……」

 頬を赤く染めながら鼓太郎は着替え始める。一言言っておこうかとは思ったが、しかしおそらく効果は無いだろう事を彼は理解していた。もう既に二人は長い付き合いだった。

 それが、彼女。幼馴染にして恋人の百合野真白という女性だと鼓太郎は理解していた。

 

「おはよう」

「それでね、おばさん。鼓太郎兄さんったら、顔真っ赤にして」

「あらあら」

「真白お前何言ってんだ!?」

 通学準備を終えた後、階段を降りリビングへ移動していた鼓太郎の耳に聞き捨てならない言葉が入ってきた。

 鼓太郎が急いで駆けつけると、内海家のテーブルに当たり前のように真白が座っている。真白の前では鼓太郎の母が穏やかにほほ笑みながら彼女の話を聞いていた。

「あらおはよう、鼓太郎」

「あ、うん。おはよう母さん、……じゃない!?」

「朝の挨拶は大事だよ、鼓太郎兄さん」

「そうだけどそうじゃない!!」

「鼓太郎、早くご飯食べちゃいなさい。真白ちゃんを待たせれるんだから」

「おばさん、お構いなく。まだ学校が始まるまで時間がありますから」

 鼓太郎の叫びもむなしく、女性陣二人はそれぞれマイペースに話を続ける。

 これが良くある事で、自分の分が悪い事を理解していた鼓太郎は釈然としないながらもテーブルに真白の目の前に座る。

「……はぁ、いただきます」

 そして準備されていた自分の分の食事を食べ始めた。食事内容はご飯、焼鮭、みそ汁といった今日日中々お目にかかれないような立派な朝食である。

 鼓太郎はこの事は母親に純粋に感謝していた。毎食しっかりと、さらに昼の弁当まで作ってくれる事、それには本当に頭が上がらなくなる。

 しかし。

「それで、その後鼓太郎はどうだったの?」

「それでね」

「んん!!」

 こうやって幼馴染とはいえ、息子の恋人から自分の事を聞き出すのはどうかと思っている。というか今すぐにでも止めたい。しかしこの朝食を食べ終わらない事にはどうせ煙に巻かれる事を知っていたため、黙々と速足に食べ勧める。

「学校帰りに皆に見られながら手をつないで帰るのがかなり恥ずかしかったみたいで」

「あらあら」

 なんだこれ、地獄か。

 しかし耳から入ってくる言葉が鼓太郎の精神を刺激していく。

 方や彼氏との惚気話をその母親に話ながら、からかい気に鼓太郎を見つめてくる真白。そしてこの女、話題はわざとさっきの部屋での行動と紛らわしい物を選んでいる。

 そして方や息子の彼女からその惚気話をご満悦に聞いている母親。貴方がそんな風になってくれて良かったわ、と視線を鼓太郎に向けていた。

 そんな彼女と母親に挟まれながら朝食を食べなければいけない鼓太郎。

 並みの男から羞恥心から悶えるか、即座に反抗期に突入しそうな状況であるが顔を赤くして食事を食べ進めるのみで過ごしていた。

「そうだ真白ちゃん。貴方も何か食べる? せめてお茶でも」

「……あー、いえ。家でしっかり食べて来たので。おかまいなく」

「そう? けど毎朝毎朝ありがとうね? 貴方が来てくれていて本当に良かったわ」

「いいえ。好きでやってる事なので」

「あぁ、もう。本当に良く出来た彼女ね」

「――んっ。ご馳走様でした!」

 母親からの言葉をごまかすように鼓太郎は食事を食べ終える。

「はい。お粗末さまでいた。食器はそのままでいいから早く真白ちゃんと学校行きなさい」

「ありがと。真白ちょっと待っててくれ。歯磨いてくる」

「はーい。……おばさん。ちょっとお手洗い借りてもいいですか?」

 食事を終え、席を立った鼓太郎に追従するように真白も立ち上がる。

「ふふっ。今更断りなんて入れなくてもいいわよ。もうずっと知ってる仲じゃない」

「それでもですよ」

 真白は小走りに鼓太郎と追い越すと、彼とは別方向の廊下に足を向ける。

「……覗かないでよ?」

「覗かねぇよ」

「私が入った後にわざと入るとか……」

「お前は俺をどんな変態だと思ってるんだよ……」

「妹みたいに育った幼馴染に手を出す兄」

「はよいけ!」

「はーい」

 まるで日課のように鼓太郎をからかいながら真白は廊下を曲がっていった。

「まったく……」

 真白の言葉が原因ではないが、鼓太郎はトイレとは別の水道で歯磨きをすることにした。

 階段を上り二階の自室の近くの洗面台に向かう。

 鏡の前に立ち、歯ブラシを手に取った。そのまま鏡の自身の口を見て、朝の真白からの口づけの記憶がよみがえってきた。

 彼女の唇の感触が鼓太郎の脳裏によみがえる。

「はぁ……」

 鼓太郎は一つため息を吐くと、記憶を断ち切るように強めに歯を磨き始めた。

 丹念に磨いた後に、うがいをして終了。

 そのまま階段を再び降りようとして、ふと彼は足を止めた。

 自分の部屋の扉を開け、机の写真立を眺める。

 写真の中には真白もいる。彼女は今より髪が短く、ボーイッシュな恰好をしている。

 しかし恰好こそ今とは違うものの、顔を赤くしている鼓太郎の左腕に抱き着き得意げな顔をしているのは変わりない。

 内海家と百合野家全員で撮ったその写真では、皆が笑顔で幸せそうに笑っていた。

「……行ってきます」

 鼓太郎は写真に挨拶をして、真白が待つ階下に足を進めた。


「あ、来た来た」

 鼓太郎が階段から下りると、玄関では既に真白が靴を履いて準備を終えている。

「お待たせ」

「ううん。待ってないよ」

「まぁ、歯磨きしてきただけだしな」

「ノリ悪ーい」

「はいはい」

 不満げに頬を膨らませる真白に続いて、鼓太郎も靴を履く。

「じゃ、行ってきます。母さん」

「おばさん、行ってきまーす」

 台所から聞こえる「はーい」と間延びした返事を背に2人は外に出る。

 扉を開けると、乾燥し始めている秋の空気が家の中に入って来る。

「寒くなってきたなぁ」

「ほんとに。嫌だなぁ。乾燥しちゃう」

 二人が外に出ると道路わきに植えられいる銀杏の木が紅葉で朱に色付き始めていた。

 もうしばらくすると見事な銀杏並木となるのだろう事をうかがわせる光景。冬のやってこようとしている。

 真白は鞄を後ろ手に門柱までの道を歩き出す。

「あ、そう言えばさっき、お前の唇ちょっとパサついてたな」

「え!? 嘘!?」

 しかし歩き出していた真白の足を鼓太郎の言葉が止めた。

 真白は恐怖感すら感じているような表情で彼の方を振り向く。そんなバカな、とその顔が告げていた。

 そんな驚きながら振り返ってきた真白の唇を、朝のお返しとばかりに鼓太郎が奪った。

 浅く、触れるだけ、たわむれるだけのキス。

 しかしそれでも彼女のキャパシティを超えるには十分だったらしく、顔を真っ赤にしたまま表情が固まった。

「――う? え、え、あ、いや、え?」

「さ、早く行こうか真白。学校に遅刻する」

 鼓太郎はどこか得意げな表情でそんな彼女の横をすり抜けていく。真白はというと視線だけは鼓太郎の方を向いてたが体はその場から動かない。

 鼓太郎は自身もわずかに頬を染めていたが、澄ました顔で門柱を抜けていった。

「はぁ!? いや、鼓太郎兄さん!?」

 結局真白が再起動を果たしたのは鼓太郎が彼女の視界から過ぎ去った後の事だった。

 門柱の陰であからさまに待っている鼓太郎に真白が詰め寄る。

「いきなり何すんの!?」

「いやお前だって朝してきただろ」

「自分からするのとされるのじゃ訳が違うの!!」

「俺だってそうだよ」

「しかも唇が乾燥してるなんて最低な嘘ついて!!」

「そう言えば振り向くし」

「だからって――!?」

 顔を赤くしながらまくし立ててくる真白に鼓太郎は愛おしむ微笑みながら答える。

 可愛らしく怒る真白を鼓太郎はしばらくそのまま観察し続けていても良かったが、後が怖いので補填を行う事にした。

「ほら、行くぞ」

「――うえ?」

 気色ばんでいる真白の手を鼓太郎が握る。それだけで彼女は借りてきた猫のようにおとなしくなった。

「……この前は悪かった。けど急に腕に抱き着いて来られて本当に恥ずかしかったんだからな」

「……うん。たった今理解してます」

「……行くぞ」

「えっと、このまま?」

 真白はどこか期待するように鼓太郎の顔を見上げる。

「……このまま」

 鼓太郎は顔を赤くしながら真白から視線を逸らすも、手は離さずに学校までの道のりを歩き出す。

 真白は幸せそうに彼の腕に抱き着きながら、鼓太郎と歩調を合わせた。


「あ、妖精」

「ん?」

 通学路を中睦まじく歩く二人の前をひらひらと一匹の妖精が通り抜けていった。

 二人は妖精へ反応したが、向こうは全く意に返すことなく空に飛び上がっていく。そうしてすぐに人間の目には追えなくなった。

 手のひら大の小さな羽の生えた人間。目には見える。しかし触れることはできない。また妖精は自由気ままで捕まえる事も出来ない。おとぎ話のような生き物。

 その姿は鼓太郎の脳裏に朝の夢を思い出させた。

「……そういえば近くのデパートで妖精が集めるイベントやるらしいな」

「あ、知ってる!! どうやったんだろうね」

 しかし鼓太郎はそんな夢の事等おくびにも出さずに真白に別の話を振る。

 話題は昨日のニュースでやっていた事だった。真白もすぐに食いついてくる。

「何か、妖精の好む一定の音や映像があるらしい。それを演奏するんだってさ」

「へぇ、綺麗なんだろうなぁ」

「……行ってみるか?」

「え、いいの!?」

「予定が何もないなら次の休みにでも――」

「――行く!!」

 スマホのスケジューラーを確認しようとした鼓太郎の腕を真白が引っ張りながら食い気味に告げる。

 鼓太郎はそんな必死な彼女に一瞬面食らいも、すぐに笑顔になった。

 そんあ彼の様子に真白の歩みは上機嫌な物になる。

「デート、デート!」

「今までも二人で出かけてただろ?」

「鼓太郎兄さんからデートに誘ってくれた事が嬉しいの!」

 真白は上機嫌に鼓太郎の腕ごと大きく振りながら足を速める。

「じゃあ、次に休みに家に迎えに来ればいいか?」

「――は?」

 しかし一転。真白は本気かこの男という表情で自らの彼氏を見つめる。

 鼓太郎に向けて真白は端的に要求を告げた。

「駅前で待ち合わせ」

「え? けど家近所だし一緒に出掛けたほうが……」

「待ち合わせ!!」

「わ、分かった」

 真白の剣幕に面食らいながら鼓太郎は彼女の言葉を了承する。

 そう言えば前も同じことを言われたな、と彼は思い出したがもちろん口には出さない。それが賢明な判断だからである。

「ふふっ、何着て行こうかなぁ。兄さんはどんなの着てほしい?」

「いや、女性ものの服は分かんないし……」

「えー、何でも着るよ?」

「何でもって……。そういう事男に言うなよお前……」

 真白は不満そうに、そして不敵に恋人を見上げる。鼓太郎はそんな彼女を窘めるように返答したが、全く意に介さずにそのまま言葉を告げた。

「え、もしかしてきわどいの着せる気……っ!?」

「いや、しないけど」

「わ、分かった……。私、兄さんの頼みなら、……っ!!」

「わざとらしく決意を固めるな、頬を赤らめるな!! 一般論としてだよ!?」

 相変わらずの子芝居に真面目に反応している鼓太郎に、真白ははにかみながら返答する。

「相変わらず過保護だなぁ、そもそも私鼓太郎兄さんの彼女だよ?」

「そうは言ってもな、昔からに癖なんだよ」

「ふふっ。まぁ、兄さんらしいけど。けど、よほど際どいのじゃ無ければ私着てもいいんだけど。鼓太郎兄さんが横にいてくれるなら」

 真白はからかう様に、しかし真剣に鼓太郎を見上げながら告げる。

 鼓太郎はそんな彼女から僅かに視線を逸らす。

「はぁ、朝から勘弁してくれ……。真白が好きな服着てくれればそれでいいよ」

「えぇ? その返答は彼氏としてどうなの? なんか彼女に自分好みの服を着せたいとか無いの?」

 鼓太郎のしどろもどろに返事に真白はあまり納得していないようだった。

 鼓太郎の逸らした視線の先に入り込み、彼の目を見つめながら問い詰める。

「だからそういうのは分かんないんだって……。というか真白、お前ひらひらした服嫌いじゃ無かったか?」

 鼓太郎が思い出すのは写真の中の真白だった。

 ボーイッシュ、というかそもそも女性らしい格好そのものを敬遠していたと鼓太郎は記憶していた。

 前から長い髪や動きづらい服装を嫌ってただろ、彼は視線で真白に問いかける。

「いや、さすがに私もこの年になれば色々考えてるからね……?」

 そんな恋人の視線に真白は軽く頭痛がしてきたようだった。

 いつの話をしてるの、と彼女は頭を抱える。

「さすがに恋人相手に化粧も服も無頓着ってありえないから……」

「……そういうものか?」

「……兄さんもしかして今の私がすっぴんて思ってない?」

「え?」

 言葉にこそ出ていないが、答えは鼓太郎の顔が如実に表していた。

 真白が再びのため息を吐く。

「い、いや、えと、……すいません」

「まぁ、いいけどね。あんまり期待してなかったし」

「え、てか本当に? どこ?」

 沈んだ顔をする真白を鼓太郎が覗き込む。朝真白が鼓太郎を覗き込んだのと、まるで鏡合わせのような構図である。

 そしてそうすると顔を赤くするのはどっちかは決まっていた。

 朝とは対照的に鼓太郎の顔が接近するのに合わせて真白の赤面する。

「分かんねぇ……。これ俺が鈍いのか? お前が上手いだけじゃなくて? というかそもそも前からお前は可愛かった印象だし……」

「……どうも」

「けどやっぱり俺は化粧やら服とか分かんないよ。お前は何でも似合いそうだし」

「はいはい」

 鼓太郎はまんざらでもなさそうにしながらも、真白から視線を外す。彼女はその反応に満足そうにしながら話を終えた。

 鼓太郎からの言葉にある程度満たされた、のもある。

 そして何よりも二人はもう目的地の目の前だった。

「はぁ、もう着いちゃった」

 二人は歩き続けて学校の近くまでたどり着いていた。周囲には彼らと同じ制服をきた学生の数が多くなっている。 そのうちの何人かはおそらく会話が聞こえており、二人に嫉妬や羨望の視線を向けていた。

 鼓太郎の方は既にこの事に諦めている。もう既に高校入学から似たような視線に晒されてきていたから。

 真白の方も気にもとめていない。周囲に幸せオーラを振りまきながら、腕を組んで校門に向かっていく。

 二人はもう既に学校中に知れ渡っているほどの有名なカップルであった。


「ただいま」

「あら、おかえりなさい」

 学校が終わった後。鼓太郎は朝とは違い一人で帰って来ていた。

 真白はクラスメイトの友人と遊びに行くとの事だ。

 一人で帰れる?大丈夫?寂しくない?と一年生の目の前でぶりっ子ぶって言い放つ彼女にデコピンをして別れたのがつい先ほど。

 一人ならば物の10数分で帰れる道をまっすぐ帰宅する。

 彼に友人が居ない訳では無い。しかし外で遊ぶ程中の良い人間が居ないのも鼓太郎という人間だった。

 そんな彼を母親が出迎える。

「今日は一人なの?」

「真白は遊びに行くってさ。というか母さん。朝から部屋に真白入れるの止めて欲しいんだけど……」

「えぇ? けど男子高校生には可愛い可愛い幼馴染が朝起こしてくれるのって憧れなんじゃないの?」

「実際やられても心臓に悪いから……」

 特に真白の奴はふざけて至近距離まで顔を近づけてたりしてくるし、とはさすがに鼓太郎は言えなかった。

 あいつここまで考えて行動してたのか、と勘繰るも真白ならばやりかねない。

 長年の経験から鼓太郎の行動の予測なんてお手の物だろう。

 こっちはあいつらの行動なんて全く読めないのに、と内心毒づく。幸いことは真白に悪意が無い事だった。

「そんなにつれなくしてると振られちゃうわよ?」

「そこは母さんが心配しなくても大丈夫だよ。今度の休みにも――」

 と、話して鼓太郎は自分の失態に気付いた。

 恐る恐る視線をあげると母親の目がらんらんと輝いている。まるでおもちゃに興味を示した猫の様だ。

「――今度の休みも?」

「えと、いや……」

 鼓太郎は踏み込んでくる母親に思わず言い淀んでしまう。

 というか隠しても無駄な事は頭では理解している。おそらく明日の朝には真白が嬉々として話すだろう。その光景は彼の脳裏に明確に想像できた。

 しかし。それとこれとは別である。

 健全な男子高校生を自覚している鼓太郎にとって母親に自分の恋愛事情を話すのは小恥ずかしかった。

「デート? デートなの? あ、お弁当いる? お小遣いもお父さんに相談して」

「ただいまぁ~」

「あ、ほら父さん帰ってきたよ!!」

 その時ちょうど良いタイミングで鼓太郎の父親は帰宅する。彼は父をスケープゴートにすることにした。

「お父さんの話は今どうでもいいの!!」

「え、帰宅早々何?」

「おかえり父さん!! お母さん任せた!!」

「え、鼓太郎? 何事?」

 いきなりと言えばいきなりの母親のからの言葉にしょんぼりと面食らう父親。状況を理解していない父に任せて鼓太郎は二階の自室まで向かう。

「えと、本当に何事?」

「貴方!! 鼓太郎がデートなのよ、真白ちゃんと!!」

「それは、めでたいね?」

「何処に行くのか聞き出さないと!!」

「それは余計なお世話なんじゃ……」

 本当に余計なお世話だった。

 鼓太郎は階段をのぼりながら背後から聞こえてきた言葉に寒気を感じながら自室の扉を開ける。

 そして公務員の父に感謝する。帰宅時間早くてありがとう、と。

 過保護な母親の相手を任せられる。

 なまじ母親の過保護が理解できるものだったからこそ、鼓太郎は母親に強く出ることができずにいた。

「とりあえず、ほとぼりが冷めるまで部屋に居よう」

 きっと理解ある父親が母親を諫めてくれるだろうと信じて。もしかしたら丸め込まれてしまうかもしれないが。

 彼は頭を振るい、悪い考えを捨て去る。

 母親に自分のデートの内容は説明するなど、さすがに色々な意味で彼の身が持ちそうになかった。

 内心冷や汗をかく鼓太郎。そんな彼の関心をスマホの通知音が引いた。

「ん?」

 ポケットから取り出し、画面を見てみると通知は通話アプリからの物だった。

 相手は真白からであり、内容が画像が送信されたというものだった。

 そのまま彼は戸惑うことなく彼女からの通知を開く。チャット欄が展開し、画像を確認した。

 送られてきたのは友人と共に取った写メの様だ。

 鼓太郎には良く理解できないファンシーな加工が為されている中で真白はにこやかにピースをしている。

 きちんと友達らしき人物の顔にはボカシで加工してあるのが、なんとも彼女らしかった。

 そう言えば真白はこういうところはきちんとしていたな、と鼓太郎は思い出す。

 なんだかんだ彼女がふざけるのは相手に気を許している証拠である。

 「……髪、伸ばし始めたんだな」

 ふと鼓太郎は一つの事に気付いた。

 彼は机の上の写真に視線を向ける。

 昔の写真の中の真白と、今の写真の中の真白。

 真白はもともとボブカット程の長さだった。しかしここ最近はどうやら変わってきている。

 以前なら朝のような状況でも、鼓太郎の顔に髪が触れることは無かっただろう。

 何故なのか。

 きっと自分のためなのだろう、と鼓太郎は理解して心中複雑だった。

 否定するつもりは無いが、彼女の好きにしてほしい。そこまで自分基準で考えてほしくない。

 それが鼓太郎の本音だった。

 しかしその言葉は恋人としてふさわしくないだろうと彼は考えたから。

『なんだその加工。けど似合ってるな』

 画面の中で、緩い猫耳の加工が入っている真白に向けて、言葉を選び、本心には違いない言葉を選ぶ。

『可愛いよ』

『でしょ!!』

 真白からのレスポンスは早く、すぐに絵文字まみれの返事が帰ってきた。

 彼女からのメッセージに鼓太郎の頬が緩む。

 そして彼は今度の休みはどうしようかと考える。

 真白とどこに行こうか。妖精のイベントは決まり。

 それ以外には。彼女の好きな物は。

 彼女は意外にもコーヒー等苦いや酸味の強い物が好きだ。

 甘い物よりデパート近くの本格的な喫茶店の方が喜ぶかもしれない。

 そう言えば服についても言っていた。どうやら自分にも服に興味を持ってほしそうだった。

 そろそろ寒さが強くなる。冬服を見に行ってもいいかもしれない。

 メッセージアプリの向こうの彼女へ向けて鼓太郎は思いを焦る。

 幼いころから知っている分、好みなどは把握している。

 鼓太郎の真白とどこに行こうかという悩みは尽きる事がなさそうだった。


「待たせたか?」

「ううん。待ってないよ」

 約束したデートの日。待ち合わせに決めていた駅前で真白を見つけた鼓太郎が彼女に近づいていく。

 先に到着していた真白はゆったりとした薄茶色のニット、足元は白のフレアスカートで薄茶色のポシェットを持ち、すっかり秋を感じさせる装いで駅前に立っていた。彼女は周囲の、というかそばを通る幾人かの男性の視線をあつめていたが、彼らはそばに鼓太郎が居る事を知るとそばを通り過ぎていく。

 鼓太郎の方も普段は着慣れていないジャケットをシャツの上にはおり、髪もワックスで整えている。

 お互いに相貌は整っていたが、それぞれ平時の姿を知っているのでなんだかこそばゆい雰囲気を二人で醸し出していた。

 しかし。

「……まぁ、電車一本ずらしただけだしな」

「そこ!! 野暮な事言わない!!」

 慣れないデートに戸惑う付き合いたてのカップルの空気は即座に鼓太郎の言葉で破裂した。

 デートのお約束のようなセリフだったがどうやら真白が仕向けたものだったらしい。鼓太郎は若干呆れ顔で言葉を告げる。

「これ、本当に必要だったか?」

「彼女がおめかしして自分を駅前で待ってる状況だよ? これから楽しい時間が始まるっている状況だよ? 心惹かれないの?」

「いや、お前と出かけるのって今までもやってたし……」

「恋人になってからは初でしょ!?」 

 いまだ納得していない鼓太郎に真白が熱弁するもあまり響いていないようだった。彼は渋い顔で真白を見つめる。

「そりゃそうだけど……」

「これが初デートなんですが? 彼氏さん?」

「……お、おう。分かったわかった。怖いからその顔止めてくれ……」

 しかし顔に青筋が見え始めた恋人にさすがの朴念仁も考えを改める。どうどうと両手の平を真白に向けながら落ち着かせる。

「はぁ、まったく……」

「悪かったって。けどお前と出かけるのなんて今まで何度もしてきたし……」

「そうですねぇ……っ!!」

 煮え切らない鼓太郎の言葉に真白は拗ねたように返答する。鼓太郎はまいったなと眉を寄せた。

「だから新鮮味はあんまりないというか。てか、服だってやっぱお前は綺麗に似合ってるじゃん」

「……似合ってるんじゃなくて、似合うのを選んでるの」

「あ、そうなの? あぁ、けど」

 顔を背ける真白の視線の先に鼓太郎が顔を割り込む。

 拗ねている彼女の顔を見つめて、彼は納得したようにうなずいた。

「あぁ、やっぱり。今日は分かった」

「何が?」

「唇。何か塗ってる。口紅?」

「……ただのカラーリップだよ」

「……ごめん。違いが分からない」

「誰かさんが唇が荒れてるとか言ってたからね」

「だから悪かったって……」

 降参、と鼓太郎は両手をあげて真白に告げる。

 真白は彼を見上げ、一呼吸置いた後に鼓太郎の左腕に手を伸ばす。

「真白?」

「腕、下げて」

 鼓太郎は言われるがままに左腕を下げる。

 真白はそのまま鼓太郎の左腕に抱き着くようにしてデパートの方向へ歩き出した。

「お。おい? 真白?」

「ふん」

 自分より背の低い真白に腕を引かれ、態勢を崩しながら。また腕を抱きしめられて赤面しながら鼓太郎は彼女に腕を引かれてつんのめりながら歩き出した。

「真白!? い、いや、さすがにこの態勢はきついっ、てか、周りから見られてるから!!」

 情けなくも恋人の機嫌を損ね、不機嫌そうな彼女に腕を引かれつんのめりながら歩く男性。

 そんな二人組が周囲からどんな視線に晒されるかなど分かりきっている。

 ゆえに。

「知らない」

「真白!?」

 彼女は全て分かったうえで歩みを緩めない。

 真白は不機嫌そうな口調で、しかし鼓太郎に見えない表情は得意げに。

 愛しい恋人の腕を引きながら、周囲の視線を集めながら、休日の繁華街をしばらく歩き続けた。


「酷い目にあった……」

 鼓太郎は立ち寄った喫茶店の席に腰を下ろすと大きく肩を下ろした。

 その向かいには真白が半眼で彼を見つめる。

「自業自得」

「だから悪かったって……。代わり、じゃないけどここは奢るよ」

「え? い、いや別にそんなつもりじゃ……」

 鼓太郎が困ったように笑いながら告げた言葉に、今度は真白が目を白黒させる。

「恋人らしい事するんだろ?」

「で、でも……」

 真白は眉根を寄せて鼓太郎を見つめる。

 そして恐る恐る口を開いた。

「いや、私兄さんのお小遣い事情も知ってるんだけど……」

「いやなんで!?」

 そして彼女が告げてきた言葉に鼓太郎の目が見開かれる。

 しかし彼もすぐに情報の出所に気付いた。

「……母さんか?」

「う、うん……」

「あの人は本当に……っ!!」

 頭の中に思いうかんできた母親の顔に鼓太郎は頭を抱える。

 普段はアシストしてるつもりなんだろうがここ一番でこれはどうなのだ。

 帰ったら絶対に一言言おう、と彼は心に決める。

 あの母親にどこまで言葉が伝わるかかなり怪しいところであったが。

「はぁ……。けど本当に大丈夫だよ。父さんから貰って来たから」

「あぁ、おじさんか」

 今度鼓太郎の頭の中には昨日の夜に「楽しんできなさい」と小遣いを渡してくれた父親の顔が思い浮かんだ。

 我ながら愛されてるよな、と鼓太郎は両親の事を考える。

 だからこそなるべく彼らに心配はかけたくなかった。

 今日の真白とのデートも成功して、楽しかったと2人で報告をしなければならなかったから。

「まぁ、だから遠慮しないでくれ。俺の金じゃないのが情けないけど……」

「……そっちもかぁ」

「え?」

 ふと。

 鼓太郎が視線を前に向けると真白も彼と同じような表情をしていた。

 そしてその言葉で鼓太郎も彼女の言葉が何に対しての物かのか思い至る。

「そっちも?」

「うん。鼓太郎兄さんとデートに行くって言ったら」

 真白は持ってきていたポシェットの中から茶封筒を取り出す。

 茶封筒なのが真面目な百合野家の父親らしいな、と鼓太郎は笑いそうになる。

「これでランチでも食べてきなさい、って」

「叔父さんらしいな」

「あ、それと」

 そこで真白が思い出したようにいたずら気な笑みを浮かべる。

 その顔に鼓太郎の背筋に冷や水が走った。

「20時までには帰ってこい、そして高校生でなんだからきちんと節度ある交際をって言われたんだけどど――」

「――おーけい。20時な。19時には帰るぞ」

「……言われたんだけどどうする?」

「20時には帰る」

「……ヘタレ」

 やかましい。こちとらおじさんに会うたびに圧が辛いんだぞ。と鼓太郎は真白に視線をむけるも彼女はどこ吹く風である。

 分かってましたよ、と肩をすくめた。

「お待たせしました」

 何とか話題を逸らそうとした鼓太郎とさらにからかおうとした二人の目の前に店員が注文した商品を持ってきた。

「あ、ここです。ありがとうございます」

「ちっ」

 対照的に店員を迎えた二人の目の前にドリンクが置かれた。

 鼓太郎の目の前にはコーヒーが。真白の目の前にはカフェラテが置かれる。

「ごゆっくりどうぞ」

 去っていく店員をよそに、真白は付属していたガムシロップをカフェラテに溶かして飲み始める。

 そんな彼女の様子を鼓太郎はまっすぐ見つめていた。

「……なぁ。ブレンドじゃなくて良かったのか?」

「え? あぁ、うん。てか私べつに甘いのも嫌いじゃないよ?」

「それはそうだけど……」

 首を傾げる真白に鼓太郎は何か言いたげに口ごもる。

 しかし。

「……カフェラテどうだ? 美味しいか?」

「うん。甘いねぇ」

 再びカフェラテを飲み始めた真白を見て、鼓太郎は自らのブラックコーヒーを口に含んだ。

「こっちも美味しいよ」

「そっか」


「やっばい!? イベントもう始まってる!?」

「落ち着け。もう開始時刻には間に合わん」

「少しは走ってよ!?」

「慣れない靴だと靴擦れ起こすぞ?」

「なんでそんなとこだけ気が利くのかなぁ!?」

 速足になりそうな真白に腕を引かれて鼓太郎と二人がデパートの入り口に入っていく。

 もともと駅前の百貨店として栄えているそこは、今日は何時にもまして人が多かった。その人の多さが何に起因しているのか。それは。

「もう歌ってるみたいだな」

「あぁ、やっぱり……」

 二人の耳に音楽と歌声が聞こえてくる。

 おそらくこれが妖精を集めるために行われてるイベントなのだろう。

 目の前の吹き抜けでは人だかりとなっている。

「真白。こっちだ」

「え、けど」

 そんな中、鼓太郎は真白の腕を引き人混みとは別方向に足を向ける。

「もう一階は無理だ。上に行こう」

 真白を連れて鼓太郎が向かったのはエレベーターだった。

 吹き抜けに集中している人混みとは逆にエレベータ―周辺にはまばらにしか人はいない。

 すぐに二人は乗る事ができて4階で降りた。

 吹き抜けの場所に向かうと、そこにも人は集まていたが一階よりはましである。

 運よく隙間を見つけ、その間に入り込んだ。

「ふぅ」

「あ――っ」

 一息つく鼓太郎と階下の光景に息をのむ真白。

 吹き抜けの下では一人の女性がピアノに合わせて歌を唄っていた。曲は「アヴェ・マリア」。2人も知っている曲である。

 そしてその周囲には無数の妖精が見える。僅かに光っている妖精たちに囲まれ、それはまるで。

「天使……」

「……綺麗だな」

 光に包まれ、妖精が宙を舞い、その中心で歌ってる女性。

 その姿は確かにまるで天使が歌っているようだった。


「本当に綺麗だったなぁ」

「行ってみて良かったな」

 デパートからの帰り。あの後ウインドウショッピングを終えた二人はもう暗くなった駅からの帰り道を歩いていた。

「妖精って歌に集まるの?」

「いや、なんかそんな簡単じゃ無いらしいぞ? 録音じゃ駄目で、肉声でも来る時とこない時があるって」

「へぇ」

 話題はやはり妖精の話だった。

 妖精。人間いは触れる事も、捕まえる事も出来ない生物。そういう現象。

 様々な逸話を持つおとぎ話ようなの存在。

「私が歌っても無理かな?」

「今度試してみるか? ほらここの公園とかで」

「え~、近所の人から見られるじゃん」

 もう既に付近は2人の家の近くだった。

 幼い頃に遊んだ公園。何度も通った駅からの道。近くにはみんなで良く行ったコンビニ。

 その全てを通り過ぎて、二人は帰路につく。

 今日は楽しかったね、と。デートは成功だったね、と。幸せそうに。中睦まじく。

 そして。

「ははっ。なら今度はカラオケにでも――」

「ん?」

 今度はどこに行こうか、という話の途中に。

 真白が何かに気付いた。

 帰り道の途中。電灯に照らされた住宅街の道。

 光に照らされて一匹の妖精が居た。

「……妖精?」

「は? なんでこんなとこに?」

 手のひらに乗るくらいの小さな小さな宙に浮かんでいる人間のような生き物。

 色素の薄い白銀の髪。薄布をまとったような簡素な衣服。それは紛れも無い妖精だった。

 それが二人の家の前で、何かを待つようにたたずんでいる。

 そして妖精の視線が2人を捕らえた。

「君たちが百合野真白と内海鼓太郎かな」

「え?」

「なっ!?」

 そして事もあろうに2人の名前を呼ぶ。そのありえない事態に2人は目を見開いた。

 妖精が人間の名前を呼ぶなど聞いたことも無かった。歌などで集める事は出来ても基本的に干渉することはできない。それが世間の妖精の常識である。

 しかし事態はそれだけにとどまらない。

「君たちに百合野美鈴の遺言を伝えに来た」

「――っ!?」

「……は?」

 妖精が告げたその名前に鼓太郎は息を飲み、真白は青ざめる。

 二人が目を背け続けてきた過去が肩を叩く。蓋をして埋めていたはずの記憶が暴かれる。

 しかしそもそも逃げようも無かったはずなのに。

「その前に君たちに一つ聞きたいんだが」

 2人の贖いのために死者が墓から舞い戻ってきた。

 曰く、妖精は死者と通じているのだと。

「君たちは百合野美鈴の事をどう思っていたのかな?」

 その名前は、百合野美鈴とは。

 百合野真白の姉で、内海鼓太郎の元恋人であった人間の名前であった。

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②元カノの妹とそして卑怯者 @asia_narahara

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