第12話 エピローグ

あれから数年後、パラリンピックで車椅子バスケットボールが金メダルをとり、連日大々的に雑誌やTVで取り上げられている。


選手の名前が並ぶその列の1人に栗屋 歩夢くりや あゆむの名前が並んでいた。


歩夢のインタビュー記事には、事故で切断をするまでの葛藤や絶望感など記載されていた。

そして、人生を変えてくれた人として碧海への感謝と同じ待遇の人へのエールが記載されていた。


仕事の休憩中にその雑誌を読み終わった碧海は、顔を真っ赤にして恥ずかしくて雑誌で顔を隠した。

ーーえっっ!!何これ!


耳まで真っ赤になった碧海は白衣と対照的な色合いで余計に肌の赤さが際立った。


雑誌には予想外のことが記載されていた。


ーー全てを諦めていた僕に生きる喜びや夢を与えてくれた彼女に感謝しています。車椅子バスケに出会えた事も彼女のおかげです。


(最後に彼女さんに一言お願いします。)

ーー碧海、愛してる。結婚しよう……。



歩夢の大胆なこのプロポーズに碧海は予想もしておらず普段は気にならない音の心臓が大きな音をたてている。雑誌を持つ手が震えた。


歩夢と出会った頃がよみがえる。あの頃は、自分もまだまだ看護学生でわからない事ばかりで、医療者としては歩夢の役に立ってなかった。ただ歩夢の友達としては、少しでも役にたちたいと必死で動いていた。


看護師となった今考えると、気持ちだけで動いていた頃が懐かしく、温かい気持ちになった。


ーー歩夢にやられたな……。


今では彼氏となっている歩夢に大切にされ、幸せをもらっている。返事はもちろん決まっているが、時折する意地悪な笑みをした歩夢の顔が頭の中にちらついた。


ーー仕返し、たまにはしないと。私が意地悪して驚いた顔を見たい!


碧海は休憩時間中、意地悪な笑みをしながら歩夢にプロポーズの返事のサプライズを考えていた。


周囲の後輩が、幸せそうな顔をしている碧海をチラチラ見ていることも知らずに……。

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看護実習で初恋の君と出会う hazuki @Ramu-cirumab

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