第11話 芝生の上で
「碧海さん。中学生の頃図書室で手を繋いだの覚えてる?」
碧海は顔を横にし歩夢を見て、気になっていた答えを聞きたくてうずうずしていた。
「覚えてる!何であの時手を繋いだの?」
「俺もよくわかんない。好きだったのかな……」
碧海は予想外の返答に唖然とした。
歩夢は空を見ながら記憶を紐解いていた。
「あの日でもう最後だったから、碧海さんともう会えなくなるの寂しいと思ってた。手が当たって、無意識に手を繋ぎたくなった。手繋いだら今度はドキドキしてきて、碧海さん見ると碧海さんも真っ赤で、そしたら自分は冷静になれて、碧海さんを苛めたくなった」
碧海は黙って聞いていたが、歩夢の話し終わると声を出して笑った。
「それ中学生男子の好奇心じゃないの?」
歩夢もつられて笑った。
「それもあるかも……」
ひとしきり笑った後、歩夢は真面目な顔に戻る。
身体を横にし、頬に手をあて肘をたて碧海の方に身体を向けた。
「でも、寂しかったのは本当なんだ。今日もそうだよ。俺……明日退院するんだ。だから、碧海さんにどうしても今日会いたかった。お世話になった感謝もしたかったけど、中学生の時みたいに、このままお別れは嫌だったんだ……」
子供達がいつものように、遠くでサッカーを始めた声が聞こえはじめた。
碧海も身体を横にし、歩夢と同じ体勢になり歩夢を見る。
「退院決まったんだ。おめでとう」
「退院したらもう会ってくれない?」
歩夢は真剣な眼差しで碧海の返事を待つ。
碧海はちょっと考えた後、何ともないような顔をした。
「そんなはずないよ。バスケ観に行くんでしょ?」
一瞬で歩夢は嬉しそうに目を細める。
「じゃあ連絡する。楽しみ!これで終わりって言われたらどうしようかと思ってた」
胸を撫で下ろす歩夢に、碧海は意地悪な笑みをした。
「意地悪するなら考えるけど……」
歩夢は再び意地悪な笑みをして笑った。
「するかも……」
2人の笑い声は、近くで遊んでいた子供達に届き、子供達は2人の様子を伺っていた。
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