第8話 光を探す
碧海は、歩夢と話しができ嬉しかったが歩夢と違って、歩夢の決断に何だかすっきり出来ずもやもやしていた。
ーー諦めたと歩夢は言っていた。何か力になりたい。
碧海は、少しでも歩夢の気持ちに近づきたくて、とりあえず下肢切断について学習した。それから使える社会支援などあらゆる情報を調べた。
そこには、車椅子バスケットについて書かれた資料があった。碧海はこれを読んで興奮した。
ーーこれ、歩夢君知らないんじゃない?
あの時の歩夢は諦めていた。表情は穏やかだったが、抗うことができない状況に受容しただけなのだ。切断後のことなんてきっと調べてもないはずだ。
碧海は歩夢に諦めだけでなく、抗えない状況でも、わずかでも希望を見出してあげたかった。それを今見つけた。
車椅子バスケットについてのDVDを借り雑誌を買って準備した。実習後、歩夢の病室に持っていったが、手術の準備の検査で病室にはいなかった。
残念だが、歩夢のベットへ置いて碧海は帰った。
歩夢が自分の部屋に帰室して、ベットに並べて置かれているDVDと雑誌が目に入った。
ーー誰が持ってきたんだろ?
その表紙の文字と写真を見て目を見開いた。
ーー車椅子バスケット!
聞いた事はもちろんあったが、切断の選択だけで頭の中は全く余裕がない歩夢にとって、想像もしておらず興味をそそるものだった。
すぐに雑誌の一枚目を目を輝かせて読み始めた。
雑誌を読んだ後、すぐにDVDも見た。
歩夢は、興奮していた。車椅子バスケットの激しさや車椅子でもバスケットができることへの興奮で、何度も夜中までDVDや雑誌を繰り返し見ていた。
21時になり、看護師が消灯に来室し歩夢の持っている雑誌を見た。
「歩夢くん、それ金三津さんが持ってきてくれたんでしょ?よかったね」
「これ金三津さんが持ってきたの?検査の間にここに誰か置いてくれてた」
「多分、金三津さんだよ。持ってたから……。明日聞いてみたらいいよ」
歩夢は、碧海が準備してくれた事を知り笑みが溢れた。久しぶりに明日が来るのが待ち遠しかった。
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