第6話 基本ルール

あれから歩夢と病棟ですれ違っても目も合わせてもらえず全く話す事はできなかった。


そんな時に実習中私は実習指導者にナースステーションで怒られていた。


「金三津さん、包帯の巻き方の学習はちゃんとしたの?中枢ちゅうすうから包帯は巻かないのがルールでしょ?学習してからじゃないと実習はさせられません」


包帯の巻き方について学習をしていなかったのに私は、させてほしいと懇願した。看護学生は必ず学習した後にやり方、目的、注意点など理解した上でじゃないと実習はさせてもらえないのが基本ルールだ。


私はルールを忘れていたわけじゃなく、包帯くらい看護師じゃなくてもできる事だと軽んじていたのだ。それを実習指導者に指摘され、怒られていた。


自分の浅はかな考えや実習に対しての姿勢、この生活に心身的に疲れていたこともあり、私は何にもうまくいかない事ばかりだと、落ち込み目に涙が浮かんだ。


悔しくて、スカートを握りしめ、真新しい自分の靴の先を見つめていた。涙で視界が歪み白い靴の先がどんな形かわからくなっていく。


それを歩夢は車椅子で通りすぎながら見ていた。歩夢は、碧海の姿に胸が締め付けられた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る