可愛い女子高生から甘い恋の手ほどきって!? これは違う意味で凄すぎです……。
「……野獣院君、早くお店に入ろっ!!」
「え、恵令奈っ!? ちょっと待ってくれよ!! 俺のむちゃモテコーデになんでこの店なんだ。よりによってここは……」
女の子のブラやパンツの店じゃないか!?
周りにいる大勢の
そんな俺たちの背後から真奈美先生が声を掛けてくる。
「恵令奈、アンダーは任せるね、私は別のお店で似合いそうなアウターを選んでいるから下着のフィッティングが終わったら携帯電話に連絡して……」
どうやら俺たちと別行動するようだ。真奈美先生の配慮に気が付いた。男の俺がランジェリーショップに入るには恵令奈と二人のほうが不自然ではないからだ。店内を見回すとカップルのお客さんもいるから、瞬時に判断してくれての行動だろう。さすがは、どっきん真奈美先生だ。本当にありがたいな!!
「なあ、零も気分が上がるよな、この雰囲気、よ~し恵令奈、いっちょ気合を入れてブラパン選びするか!! 何て言ったって女の子の勝負服の
「う、うん……」
いつの間にか恵令奈の俺に対する呼び方が真面目君から零に昇格していたが、この状況ではおちおち喜んでいられない……。
一歩、店内に足を踏み入れた瞬間、俺はお花畑に迷い込んだ錯覚を起こしてしまった。手前にはパジャマや靴下が多く展示されているが、その先には色とりどりのブラとショーツのセットが所狭しとディスプレイされていた。思わず目のやり場に困るほどだ……。
「いらっしゃいませ!! 今日は何をお探しですか?」
可愛らしい制服を着た店員のお姉さんがさっそく声を掛けてくれる。
「今日はこの
「……え、恵令奈、この
「まあまあ、ここは私に任せて!! 実はこの
恵令奈の横顔が急に大人びて見える、そうだ、この場では俺は完全にアウェイの立場だからな、成り行きを見守るのが得策だろう……。
「はい、喜んで!! まずこちらに記入して頂けますか……」
店員のお姉さんからボードを渡された、簡単なプロフィール記入の用紙で、希望すればメンバーズカード作成書も兼ねているようだ。
俺は記入しながら、ある項目でペンが止まってしまった、
現在のブラのサイズ……。
視線を泳がせながら、隣の恵令奈に助けを求める。
「店員のお姉さんに変なお願いしますが、この娘、こういうお店で、女性用インナーを買うのが初めてなんです……」
店員のお姉さんは皆まで言うなと言う表情をしてにっこりと笑った。
「はい、ご入店時から気付いていましたよ、そういうお客様、当店では大歓迎ですので全然気にしないでください」
「良かったぁ……!!」
恵令奈が安堵の表情を浮かべる、その時の俺はよく知らなかった、後で聞いた話だがどんなに完璧な女装だったりジェンダー等の理由でも性別が男性の試着やフィッティングは出来る店舗は少ないそうだ……。世の中は多様性の時代なのにマイノリティな者には厳しい。まだまだ大変なんだなと感じた。
仮に今の俺がどんな完璧な女装をしていたとしても、店員さんから直接採寸をされたら男だってバレてしまう、そこで恵令奈は店員さんによるフィッティングを最初に断ったんだ。
運良くこの店員さんは理解のあるベテランのようだ。マニュアル一辺倒でない対応で助かった。これも後で恵令奈から教えて貰ったが、最近は男でも女装のコスプレをする人が増えている為、理解のあるこのお店を選んだそうだ。さすがはむちゃモテ生徒会長だ。まったく抜かりがないな……。
「じゃあ零、フィッティングルームに行こう!!」
恵令奈が店員さんからメジャーを借り、買い物かごにブラとショーツのセット、
そして謎の物体を放り込むのを呆然と眺めていた。彼女に連れられるままフィッティングルームに入った。
「じゃあ零、上着を脱いでくれる?」
ええっ!? 恵令奈の前で裸になるの!! それに狭いフィッティングルームのこんな密室でマズくないか……!?
モジモジしている俺に恵令奈が怪訝そうな顔をした、
「早く胸から手を離して。それじゃあ上手くバストサイズが測れないよ!! 忘れたの【ときめぐり愛しトゥルーラブ】の主人公の女装モードでしかクリアできない姉ヶ崎沙織ちゃん攻略法を!! 零が女装してむちゃモテコーデすることが今回は絶対に必要なの。私を信じて……」
「あ、あの【ときめぐり愛しトゥルーラブ】最大のヒロイン、姉ヶ崎沙織ちゃん攻略だって!?」
俺はまるで電流に打たれたような気分になった。そうだ、これはゲームの中だと思えば恥ずかしくないんだ。これも【ときめぐり愛しトゥルーラブ】マジックなのか……!?
俺は恵令奈の真剣な言葉を信じて健康診断のようにスウェットの上半身をはだけた。彼女が俺のみぞおちの辺りにメジャーを当て、サイズを図り始める、メジャーが脇の下に当たるのが妙にくすぐったく感じる。
「えっと、アンダーバストは……。 このくらい」
先程のボードにメモをする。
「零、これを試してみて」
渡された物は女性用ブラで、細かな花びらの刺繍、谷間の部分には小さなリボン、
カップの周りは可憐なフリルに彩られていた。
「こ、これは……!?」
俺は思わず躊躇してしまった、女装してるとはいえ、女子高生の女の子からブラを着けなさいと迫られている、この異常なシチュエーションは凄すぎる!! この可憐なブラを着けたら何だか戻れない深みに行ってしまう気がした。
ここからは後戻り出来ない世界だ……。
「零、大丈夫だよ、一緒にむちゃモテコーデで可愛くなろっ!!」
恵令奈の飛び切りの笑顔に俺の中で何かが吹っ切れた……。
俺は意を決してその可憐なブラを受け取った。
次回に続く。
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