可愛い女子高生から恋の手ほどきで濃いの欲しいの♡

「き、君の言っている意味が分からない!? いったい俺に何をさせたいんだ。さっきもリアルなギャルゲーの主人公をやるのが条件だとか、謎過ぎるんだよ……」


「ああん、真面目くん、またお得意の逆ギレかぁ!? じゃあ教えてやんよ!! コウモリみたいに二人の幼馴染の間を行ったり来たりしているクソ野郎に恵令奈が、恋の手ほどきをリアルで叩き込んでやりたいんだ!! 神ギャルゲー【ときめぐトゥラブ】仕込みのヒロイン攻略法を……」


 何だって!? ギャルゲー仕込みの攻略法を使うって、それに何で俺の幼馴染であるあかね乙歌おとかのことを知っているんだ!!


「何で恵令奈えれながお前の恋愛事情を知っているのか!? って顔をしているな。真奈美まなみねえの名誉のために言っておくが、お前の個人情報をリークしたりはしてねえよ。世間が狭いって言ったのがその理由わけだ……」


 俺は彼女の着るセーラー服を見て、とんでもないことに気が付いてしまった。

 制服のセーラーカラー、その襟元を走る白い三本の線、その白線が途中で途切れているのが特徴的だ。この制服には見覚えだけでなく俺には馴染みがあるんだ。


 ……君更津南女子高校、この辺りでは有名なお嬢様女子校だ。


 近隣にある共学の有名進学校と同等なレベルで偏差値は高く、その上スポーツ振興しんこうにも力を入れている。

 何より可愛い女の子が多く在籍することで、この界隈の男子からは常に憧れの的なんだ。しかし男子禁制の校風も強く、普段から教員、父兄以外の男性は出入りすることは不可能だと聞いている。年間で唯一のチャンスである文化祭も在校する女子生徒からの招待状が無いと入場することは不可能なんだ……。


 そんな乙女の花園の制服を着た女の子を俺は他にもうひとり知っている!!


「……君更津南女子きみさらずみなみじょし、通称、南女なんじょ、その制服はもしかして!?」


「よく聞けよ、野獣院零やじゅういんれい、お前の大切なもうひとりの幼馴染、香坂乙歌こうさかおとかはあたしの親友だ……」


 う、嘘だろ……!? 


 俺の頭は真っ白になってしまった。目の前で腕組みをしながら厳しい視線でこちらを睨みつける女の子は、いかにもギャル風の女子高生ドーキンズ恵令奈えれな

 彼女の正体が、俺たちのクラス担任、どっきん真奈美まなみ先生の実の妹だということにも驚いたが、真奈美先生がギャル化したかとみまがうほどの外見のそっくりさ。キュートなロリフェイスだけではなく、ペリー提督が日本に来訪しなくとも思わず速攻で開国しちゃいそうな黒船級の推定Fカップなおっぱい。


 服の上からでも分かる、恵令奈のツンとした上向きなおっぱい。セーラー服の前身ごろについているボタンが今にもはじけそうな勢いだ。俺はどっきん真奈美先生に負けるとも劣らない暴力的なおっぱいの持つ圧倒的な戦力差を見せつけられてしまった。


 そして何よりも驚かされたことは、ギャルな女の子、ドーキンズ恵令奈と清楚系な幼馴染、香坂乙歌との接点が見つからなかったことだ……。


 確かにこれまで乙歌から、自分の通っている君更津南女子について話を聞いたことは殆どなかった。俺のもうひとりの大切な幼馴染、美馬茜みまあかねと乙歌の接点はまだ理解しやすい。完全開催は叶わなかったが、先日のモニターツアーで予定されていた夜のエロい個人レッスン合宿も、もともとは二人が同じハンドボール部だったえんで乙歌が参加したという経緯がある。


 しかし、恵令奈と乙歌の接点についてはまったく分からない、俺の感覚では類友という言葉があるように、同じようなキャラ付けの人間が仲良しグループを形成するのではないのだろうか?

 自分に置き換えて考えてみると、俺と茜みたいに幼馴染とかなら陽キャと陰キャがいっしょに行動していても合点がいく。もしかして恵令奈と乙歌もそれ系の関係なんだろうか?


「何も言えねえ、って顔してんな。クソ真面目くんよ。いまお前の考えていることを恵令奈はすっかりお見通しだ。乙歌とあたしが友達なのが理解不能なんだろ。どうせお前も外見でしか人を判斷しかしねえ、大多数のクソつまらない人間とおんなじだ!! 南女なんじょで同じクラスになって初めて彼女と会ったときは、どうせ大多数の偏見たっぷりなお嬢様で親の言いなりのつまらない操り人形だと思ったよ。でも乙歌は違ったんだ……」


「……乙歌と君はそんな関係だったのか」


「おっと、青年の主張をしている場合じゃなかったな。別に盗んだバイクで走り出すとか、恵令奈はありきたりなことを言いたいわけじゃねえよ、とにかく話はあとでゆっくりしようぜ。玄関ここで立ち話もなんだし、それにそろそろ真奈美お姉が帰ってくる時間だからややこしくなっても面倒くさいからな。とりま場所を変えたほうがいいな。……お前の愛車にタンデムしてやってもいいぜ。ありがたく思えよ」


「ド、ドーキンズさん、って何!?」


「……バイクや自転車の二人乗りのことだよ。てめえ、やっぱりにわかだな!! 袖ケ浦音々そでがうらねねちゃんの隠しタンデムイベントを発生させたこと無いのか、【ときめぐトゥラブ】屈指の神イベントじゃねえかよ。鈍色にびいろ学園美少女四天王のナンバーツー、音々ちゃんの自転車が下校時にチェーンが外れて、鈍色橋の歩道で困っていたのを偶然、通りかかった主人公が顔をチェーンの油まみれにしながら修理してやるエモいイベントを知らないとは!? おいクソ真面目くん、お前人生の大半を損して生きているのと同じだぞ!!」


「……は、はい」


「それにドーキンズってのはやめろ、あんまりその呼び方は好きじゃねえ……。恵令奈って呼び捨てていいよ」


 神ギャルゲー【ときめぐり愛しトゥルーラブ】について熱っぽく語る彼女をみて、本当にギャルがギャルゲーをやるんだな、と俺は感慨深いものがあった。

 そんな女の子はオタクに優しいギャルと一緒で、リアルでは存在しないと思っていた。もし仮に存在したとしても雪男やネッシー並みに遭遇することは難しいだろう。

 俺は可笑しくなって今まで抱えていた暗い気分もどこかに吹っ飛んでしまった。


「くっ、あははは!!」


「おい!? クソ真面目、何を爆笑してんだてめえ。……まさか恵令奈のことを笑ったのか!? あんまり舐めてるとぶっ◯すぞ!!」


「ごめん、のことを馬鹿にしたんじゃない。ひとつだけ言わせてくれ。俺に興味を持ってくれてありがとう。出会えたことで君の笑顔に救われたよ」


「なっ!? ……急に名前呼びするんじゃねえよ。そこはギャルゲーのお約束で一回は、付けが鉄板だろ。だからクソ真面目は駄目なんだよ。そこんとこじっくりと恵令奈がレクチャーしてやんよ、覚悟しておけ!!」


 彼女は顔を伏せながら俺の自転車に向かって歩みだした。

 慌てて恵令奈の後を追う俺は偶然、目撃してしまったんだ。


 彼女の頬が耳まで真っ赤に染まっていることを……。



 次回に続く。

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