ミス・バタフライエフェクト。
『零ちん、私たちは義理の兄妹になるのよ。親同士が再婚するの……』
……気がついたら俺は自転車を漕いでいた。
まるで夢遊病患者のように、うわの空で茜の部屋で話を聞いていたのは何時間ぐらい前のことだったのだろうか?
彼女の言葉は断片的に覚えている。
『……零ちんのお父さんをどうか責めないで欲しい。茜のお母さんとはもともと同じ会社の同僚の関係だったし、でも二人は私たちへの影響を配慮して今まで正式なお付き合いはしていなかったそうよ。何よりも零ちんのお父さんは亡くなられた奥様の件があって結婚には踏み切れなかったみたい……。 零ちん、聞いてる?』
『……ああ、聞いている』
『……じゃあ続けるね。そしてモニターツアーの旅行前に私は偶然、二人の電話のやり取りを聞いてしまったの。二人の仲を早合点して旅行先の母親が泊まったホテルの部屋に押しかけて茜はその場所でとんでもないおせっかいをしてしまった。母親を問い詰めて零ちんのお父さんとの関係を厳しく問いただしたの』
そして俺が従兄弟の
自転車のハンドルグリップのゴムをちぎれんばかりに握りしめる。
今日の日ほど自転車にエンジンが装着されていないことが悔しかった。
もしコレがオートバイのアクセルグリップだったらどんなに良かったか。
アクセルひとつでこの場所から逃げ出してしまいたい……。
俺の脚力だけではそこかしこに茜との想い出が残るこの街からすぐに遠ざかることが出来ないからだ!!
すっかり雰囲気は変わってしまったが、あの角を曲がれば小学校のころの通学路にぶつかる、白い橋が見えるはずだ、そのまましばらく道沿いにまっすぐ走れば茜と一緒に良く買い食いをした駄菓子屋があった場所に到着する。
なぜ俺はこの街から一刻も早く逃げ出したいのに、こんなところに来るんだ!?
それもよりによって茜との想い出が一番色濃く残っているこの場所に……。
『茜は零ちんのこと大好きだよ、大人になったらお嫁さんにしてね!!』
俺たちの
「……な、ない、あの商店も……。その後ろに見えるはずの白い鉄塔も!? 何なんだよ!! 全部、住宅地になりやがって!! 俺と茜の大切な想い出はもうどこにもありはしないのか!! ちきしょう……」
あの古びた商店の建っていた場所は跡形もなかった。かろうじて道路の形状から、その場所だと分かった。すべて真新しい住宅が立ち並ぶ区画に変貌していた。
そのときの俺は正常な判断能力をなくしていたに違いなかった。
俺が小学生だったのは遥か昔のことだ。いまだに商店が建っていると思うほうがどうかしている。
「……そうだ、あの玉手箱を開ければ、きっとまたあの日に戻れるはずだ」
自転車の前かごに入れっぱなしになっていた紫色の包み。あの我楽多屋具無理で、今は亡き母の部屋から持ち帰った玉手箱。その箱の中には俺を助けてくれる何かが入っているはずに違いない!!
「母さん、苦しいんだ。俺を助けてよ……」
俺は
次の瞬間……。
「ふうん、開けちゃうんだ……。その包み。でも君は後悔しないのかな?」
……誰だ、俺に声を掛ける人物は!? 若い女性の声、どこかで聞き覚えのある声に感じられる。慌てて後ろを振り返った。
……誰もいないぞ!?
「誰だ、どこに隠れているんだ!! いますぐに姿を見せろ」
「……まったく、お
だ、誰だ!? 姿は見えないがどこの馬の骨とも知らない奴からそこまでボロクソに言われなきゃならないんだっ!!
「ふ、ふざけんな!! お、お前はいったい誰なんだ!? 俺を知ったような口を聞きやがって!! こう見えても目一杯悩んでいるんだよ……。そうだ泣き叫び出したいくらい!! 俺の片想いの幼馴染が永遠に手の届かない存在になっちまったんだよ。ああ、分かった、気が済むまで笑えよ。大好きな幼馴染が義妹になった哀れな男の末路をさ!! いますぐ俺の無様な姿をとくと見ろおおおっ!!」
「うわあ、変態の逆ギレかよ、
口は悪いけど、この鈴の
「あの家の二階の窓か!!」
俺はやっと声のする方向が分かった。
上だ!! 目の前にある広い敷地に建つ一軒家、住宅街の中でもひときわ目を惹く洋館の建物だ。
その洋館の二階の窓から顔を出した人物とは……。
キュートなロリフェイスに明るい栗色の髪色。たわわな爆乳おっぱいが白いシャツから
「……ど、どっきん
俺や茜の担任であるドーキンズ真奈美先生がなぜここにいるんだ!?
そしてあの
次回に続く。
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