大切な人と思い出の部屋の真ん中で……。そのさん

「今までつらかったね、全部話してくれてありがとう、麻衣の抱えている想いも知らないで俺は勝手だったよな。自分のことばかり相談して怒鳴られても仕方がない……」


「ご、ごめんっ!! こんなに取り乱して泣いちゃうなんて、冴子さんの部屋を案内するって言ったのにこっちが相談してどうするの。本当に馬鹿みたいだね私って。これじゃあ零ちんを責める資格なんてないよ」


 恥ずかしそうに慌てて顔を伏せる麻衣、俺に泣き顔を見られたくないのだろう。


「俺にも謝らせてくれ、本当にすまなかった。麻衣に怒られたよな、正しい行いをして欲しいって。を大人なっても続けていることに気付いていなかったんだ。自分でない何か、そう借り物の人格に自分を投影するごっこ遊び、本当の俺はこんなもんじゃない、もっと凄い人間なんだって現実逃避してシェルターに逃げ込んていたのは俺も同じだ……」


 俺は母親が居ないことに理由をつけて最悪のかまってちゃんになっていた。

 一番可哀そうな被害者面をして、人に慰めて欲しがり屋で……。だから大人になって再会してもまったく変わっていない俺を見て彼女は真剣に怒ってくれたんだ。


 お前だけが悲劇の主人公じゃないって、母が亡くなった事実も、

 悲しいのは自分だけじゃない、俺の親父、具無理のマスター、

 それぞれ形は違えど亡くなった母のことを今でも忘れていない人がもっと居るんだ。


「零ちん、よくぞ言ってくれたね、麻衣はとっても嬉しいよ!! 私が大好きだった男の子には正しい行いをして欲しかったんだ。やっと自分の本心を話してくれたね、借り物の言葉セリフじゃない零ちんだけのオリジナルの言葉で……」


 麻衣は泣き笑いのような表情を浮かべながら俺にぎゅっと抱きついてきた。

 先ほどの続きとばかりにしなやかな足が絡みついてくる。こ、この感触は!?


「ま、麻衣、かなり感動的な場面なのに大変、申し訳ないんだけど……」


「なあに、零ちん♡」


「……お前、まったく気が付いてないだろ、自分のおぱんつが丸見えだってこと」


「なっ……!?」


 麻衣の下半身は先ほどの部屋のままの恰好だった。

 可愛いリボンの付いたピンクのショーツがコンニチハしており、

 ダンスで鍛えた下腹部の腰骨辺りに小さな布としてかろうじて引っかかっていた。

 ベットで俺とくんずほぐれつ大人のプロレスをしたせいか、おばんつがずり下がったままだ。


「れ、零!? ここまで見た私の裸、記憶から全部消去しないと絶対にぶっ殺すから……」


「麻衣、狂犬モードはもうおしまいでいいだろ?」


「零ちんの馬鹿!! 今の麻衣は素で怒ってんの、だからイヤラシい記憶全消去!! 脳のハードディスクを今すぐに初期化フォーマットしなさい!!」


「く苦しい、ま、麻衣っ、くびが、首を絞めないでくれぇ……!!」


 どうやら狂犬モードの麻衣ではないようだ、本気で俺を締め落としに掛かっている。

 エロい意味ではなくこれまでの彼女とのエッチな記憶を完全に忘れさせようと本気の首絞めだ。


「ま、麻衣、俺はお前のぷっくり乳首パフィーニップルなどまったく覚えていないから全然大丈夫だ、だから安心して手を離して欲しいっ!!」


「ぷっくり乳首だと!? この阿呆がっ、ばっちり脳の記憶に焼き付けてるじゃないの、そんなの絶対に信用できるか!!」


 素の状態の麻衣に激しく罵倒されながら俺は不思議といい気分だった……。

 責めの言葉が何だか癖になったみたいだ。性癖の変な扉が開かないことを願う。

 ま、麻衣様、もっと言葉攻めのご褒美を俺に浴びせてください!! って。


(零、お前はホンマもんのど変態じゃな、儂の言葉責めがなければおどれの零ちんはおギンギンにならないとはこのこじらせ糞童貞が!!)


 脳内で麻衣から激しい言葉攻めを受ける自分を想像してみた。

 従兄弟の麻衣にこんなお願いをする訳にもいかないな……。


 ……俺の


 女の子からの卒業証書はまだ貰えないみたいだけど勘弁してくれよな。



「はっ!? じゃれあって遊んでいる場合じゃないよ、零ちん、この部屋でぜひ見てもらいたい物があるの……」

 

 母の部屋で俺に見せたい物っていったい何だ!?


 

 茜や乙歌、二人の幼馴染の新展開な次回に続く!!



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る