大切なあの人と身体が密着しながらの課外授業。
茜からともだ〇んこの洗礼を受けた後、自宅に帰った俺はまだ親父が起きていることに驚いた。きっと俺を心配して待っていてくれたんだろう。
照れくさいのと罰の悪さで面とむかってただいまが言えない……。
「……親父、こんな時間まで何してるの?」
「実家の改装でお袋から何が必要な物か分からないので、お父さんに判断して欲しいって沢山の荷物を送って来たんだよ……」
お袋とは近所に住む俺のおばあちゃんのことだ。
リビングの一角にある親父の作業机には古い写真が一面に広げられていた。
何やら夢中で作業をしていた様子だ。
「……親父、この写真の束は?」
「それは良い機会だから野獣院家の古い写真をまとめてパソコンに取り込んでデジタル管理をしようかと思ってな……」
確かに紙の写真は
机に置かれた大量の写真の中で、ふと一枚の写真に視線が止まった。
「親父、これは……!?」
その古びた写真には病院の保育室に入れられた赤ん坊の姿があった。
ガラス越しに撮影したと思われる一枚、赤ちゃんの身体からは無数のチューブが伸びている。この赤ん坊はまさか!?
「ああ、零の赤ちゃんの頃の写真だよ。生後まもなくのお前は早産で普通の赤ちゃんよりかなり身体が小さかった。抵抗力も弱いお前をお父さんはしばらくこの手で抱くことが出来なかった。それはもう心配で出来ることなら替わってやりたいと心の底から思ったんだ……」
そんなことがあったなんて初耳だ、母親は俺を出産してすぐに他界したとお祖母ちゃんから聞いている。写真の中の赤ん坊を見る視線には亡くなった母はいないはずだ……。
机に向かう親父の表情はこちらからは伺い知れないが、
我が子を想う強い想いがその広い背中から伝わってきた。
「生存率は五分五分で、助かっても脳に障害が残る可能性があるとお医者さんから出産前に言われていたんだ。だから零がこんなに立派に成長したことをお父さんは嬉しく思うよ。まさしくこれはお前のお母さんがもたらしてくれた奇跡なんだと……」
これまでの出来事を思い出した、乙歌の涙を見た帰り道で俺は自暴自棄になり、みずから死ぬことまで考えてしまった……。
俺の中で
目の前の視界が反転しながら歪み始めるのが感じられた。
「お、親父、俺は……」
「零、風呂はまだだろ、たまにはお父さんと一緒に入るか?」
親父は俺の頭に手を置いて、くしゃっ、と
まるで子供をあやすように髪の毛を撫でてくれた。
涙の件にはあえて触れずに……。
*******
「……親父っ、この湯船に二人はせまいって!!」
もうもうと湯気が立ち込める浴室に俺の親父を非難する声が反響する。
我が家の浴槽は大人二人では
「零、いちいち細かいこというな、子供の頃は一緒に入りたいってお父さんに泣いて駄々をこねたのはいったい誰だ?」
俺の言葉をまったく意に介さず涼しい顔の親父、
何で親父とお風呂で密着しなきゃいけないんだよ、
ラブコメみたく可愛い女の子と浴槽に入りたいよ……。
「零、お前は今、好きな
「何だよ、親父、藪から棒に、す、好きな人って!?」
親父は何でこんなことをいきなり聞いてくるんだ!? その真意が掴めないが、
俺の脳裏には意中の女の子の顔が浮かんでは消える……。
「零、お前には
親父はそんな想いで子供の俺に性教育として洋物ポルノやどぎついエロ本を見せていたのか!? まあ、親父の趣味も半分以上入っている気はするけど……。
「……親父に聞きたいことがあるんだ」
「ん、何だ? 言ってみろ!!」
「同時に二人の女の子を好きになるって駄目なのかな……」
親父は黙ったまましばらく俺の顔をまじまじと凝視していた。
むぎゅう!!
「ぐわあっ!?」
「何、童貞みたいなことを抜かしてんだ、零!! お父さんが高校生の頃には一人や二人どころじゃない、常に十人以上好きな女の子がいたぞ!! 人を恋することは理屈じゃない、
親父は俺のアレを握ったまま豪快に笑った。
おちんちんを掴まれた驚きもあるが、それ以上に救われた気分になれた。
二人の幼馴染、茜と乙歌、どちらも大切に想う俺の気持ちにはまったく嘘はない。
自分に正直になろう!! 目の前にいるこの
「ありがとう、親父!! だけど俺まだバリバリの童貞なんだけど……」
「なにっ!? とっくにセックスなど済ませていると思っていたが不甲斐ないやつだ。う〜む、このままでは野獣院家の名を
言うやいなや風呂を上がる準備をし始める親父。
俺は湯船に一人取り残され、背中をあきれ顔で見つめるしかなかった……。
「お、親父ぃ、それでも素人童貞なのは変わりないじゃん、勘弁してよ!!」
前言撤回する、感動した俺が馬鹿だった。
だけどありがとな、親父、俺はあなたの息子で本当に良かった……。
古い写真はさまざまな記憶を呼び起こす。まるで
※お待たせしました!! いよいよ禁断の旅行編の次回に続きます。
どうぞご期待ください。
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