幼馴染の部屋で秘密の作戦会議。

「……君更津南女子ハンドボール部の香坂乙歌こうさかおとかさんね。よく知ってるよ!! ううん、あかねと知り合いって意味じゃなくて選手としての彼女のことだよ。レフトバックのポジションで華奢きゃしゃな見た目からとても想像が出来ないほど、ゴールへの執着心は素晴らしい物がある最高の選手プレイヤーね……」


 俺、野獣院零やじゅういんれいは、幼馴染みの美馬茜みまあかねの部屋でベッド脇のスツールに腰かけて話を聞いていた。

 何となくそわそわと落ち着かないのは、この間の個人レッスンで茜とくんずほぐれつしたベッドがすぐ脇にあることだ……。 

 まあ二人羽織での練習なんだけどキングオブ童貞の俺には充分にエロすぎる個人レッスンだった。


「茜のポジションはたしかセンターバックで司令塔の役目だよな。乙歌ちゃんは茜に一目いちもく置いている感じだったぜ。お前が憧れの選手だって……」


「それはとても嬉しいな……。あれっ!? その乙歌ちゃんって呼び方、随分と仲良くなったみたいね、零ちんと香坂さんは」 


 ヤバっ!? つい親しげに彼女のことを下の名前で呼んでしまった。

 茜には例の痴漢騒動の話は隠している。仕組まれたこととは言え、純情可憐な乙歌ちゃんのの中に手を突っ込んで、もう少しで秘密の花園に俺の指が触れる寸前なんて口が裂けても言えないっ!!


「べ、別に仲良くなんかじゃないよ!! 昨日、偶然駅前で俺の不注意で彼女にぶつかって転倒させてしまったから、病院にお見舞いに行っただけだよ。それに香坂さんって呼ぶのは何だか兄貴の顔が目に浮かぶから嫌なんだ……」


 茜を心配させまいと半分アドリブで嘘をついてしまった。

 学園一のチャラ男、香坂のくだりは本当だけど。


「零ちんも注意しなきゃ駄目だよ。歩きスマホでもしたんでしょ。

 あっ、もしかしてスマホで茜との個人レッスン動画を見てニヤニヤしてたんじゃない? あれは絶対に人前で見ちゃ駄目だよ。茜と零ちん、二人だけの秘密なんだから……」


 茜が厳しい視線で俺をにらんでくる。結構カンが鋭いな、これじゃあ動画を乙歌ちゃんに見られたことも茜にはとても言えない。よりによって乙歌ちゃんからあんなお願いされちゃってるし。


『二人羽織のレッスン、私にもやらせてください!!』


 夜の大運動会に参加校がふえてしまう。茜と同じハンドボール部の女の子で、

 学年一のチャラ男、香坂俊の妹、乙歌ちゃんの身体を個人レッスンでむにゅむにゅしちゃうなんてイヤらしい予感、違う!! 嫌な展開になる予感しかしない……。


「そうだ、メールで言っていた朗報の詳細を教えてくれよ、茜」


 話をごまかすために俺は別の話題に切り替えた。次回の個人レッスン、その開催場所探しが難航していた件だ。第一回は茜の母親が偶然不在だったのでこの部屋を使用することが出来たが普段は絶対に無理だ。

 今日も階下のリビングには茜の母親がいるので、二人羽織でベッドをギシギシアンアン♡していたら即、部屋に踏み込まれてしまうだろう。

 普通のえっちよりヤバい光景を茜の母親に見られてしまう。


「へへっ、ジャ~ン!! 零ちん、これを見てくれる」


 茜が嬉しそうに一枚の封筒を俺の前に差しだした。

 西南せいなんツーリストと封筒の表に社名があるぞ。これは親父の旅行会社だ!? そして茜の母親も勤める会社でもある。


「零ちん、早く中を開けて読んでみて!!」


 茜も凄く嬉しそうでテンションが爆上がりしている。

 ベッドに腰掛けた彼女の膝小僧が楽しげに動くの見て、子供の頃とまったく変わってないなと思ったら何故だか俺まで嬉しくなってしまった……。


「モニターツアー!? これって一泊二日の旅行じゃん。一体どういうこと?」


 封筒の中身はツアーの行程表と旅行の諸注意、そして旅行終了後にWEBアンケートのお願いが現地までの切符と共に二人分入っていた。


「零ちんのお父さんとウチのお母さんの会社が企画したモニターツアーなんだ。本当は社員さんの家族が旅行に行くはずだったけど急に都合が悪くなって、有名な観光地からの委託案件だからツアーには絶対に穴を開けられないって急遽、私たちに替わりに旅行に行かないか? っておはちがまわってきたの!!」


 茜の話だと有名な観光地のある市町村が事前調査の名目で、これからの旅行のハイシーズン前にモニターツアーと称して、顧客の意見を吸い上げる目的で企画されたそうだ。どちらにしてもこんなおいしい話は滅多にあるものではない。これは確かに朗報、超ラッキーだ!!


「おおっ!? この可愛い銀髪の美少女キャラクターは……」


 封筒に同封されていたカラー印刷のパンフレットに俺はすっかり目を奪われた。


 サウンドウォーカー+聖地巡礼と書かれたタイトルの下に、花束を抱えた美少女のイラストがあった。こ、このキャラが表紙を飾る聖地巡礼場所といえば!?


 俺のラノベ好きは以前話したと思うが当然アニメも大好きだ。

 そのパンフには幅広い世代に愛される有名アニメ作品のヒロインが描かれていた。

 この作品の舞台をモニターツアーするのか!?


 ……聖地巡礼、アニメファンだけでなく実写映画や小説などを見て感銘を受け、物語の舞台に足を運んでみたいと考える人は多い。

 そんなニーズは年々高まっており海外からの観光客も増加している。俺も高校生なので他県にはあまり出かけられないが有名なラノベやアニメ作品で、俺の住む千葉県を舞台にした作品も数多い。その中の作品の舞台、千葉駅周辺や鴨川市にも足を運んだことがある。ラノベやアニメの同じ風景を見た瞬間、俺は本当に感動したことを覚えている。


「そう、可愛いよね。このも鉄板な幼馴染みキャラだし、零ちんの好みにどストライクだよね……」


 茜の目が全然笑っていないのが気になった。この銀髪の美少女キャラのことで茜にずっと旅行のあいだイジられるとは、その日幼馴染から言われた話の意味を……。


「零ちん、これで第二回目の個人レッスン開催場所決定だね!! ツアーには親が社員として同行するから高校生でも宿泊大丈夫だから」


 ちょうど今週の土日、二日間の旅行日程だ。幼馴染みの茜とお泊まりの旅行!!

 夜の大運動会も秘密の日程に組むことが出来るぞ、これがワクワクしないでいられるか!!

 自慢じゃないが俺はエロい約束は絶対に忘れない。二人羽織の勝負がまだなのと、

 それに勝ったら約束である裏オプションの制服プレイを絶対に勝ち取るんだ!!


「零ちん、何だか目が血走ってるよ。あっ、茜と二人っきりで初めての旅行だから、とてつもなくエロいことを妄想してない?」


 茜が身の危険を感じたのかとっさに両腕で自分の胸を隠した。

 そ、その仕草は逆に男を狂わせるぞ!? Eカップおっぱいが腕で押し上げられて、余計に谷間が胸元に出来てしまうから。

 特に今日の茜は部屋着で薄手のセーターだからなおさら目立ってしまう!!


「あ、茜、おっぱいが凄いことになってんぞ。目の保養、いや目の毒だから気をつけろっ!!」


「きゃっ、どこを見てんのよ。零ちんのどスケベ!! へんたい!!」


 バキャッ!!


「ぐほおっ!!」


 茜に思いっきり顔面をグーパンチで殴られた。ハンドボール部で鍛えた腕力は伊達じゃない。


 すっげー痛い……。 

 けと嬉しいぜ。俺は茜との旅行に期待と、もうひとつ別のモノをパンパンに膨らませた……。



 俺は自分の暴走機関車を止められる自信がない。



 次回予告 


 もう一人の無自覚美少女、乙歌ちゃんの強烈な攻撃ターンに続く!!


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