清楚系美少女と二人っきりのいけない部活動

「……零お兄ちゃんの好きな人って美馬茜みまあかねさんですか?」


 お嬢様女子校に通う香坂乙歌こうさかおとかちゃんが何で茜のことを知っているんだ!? それにエロい二人羽織の動画について深く追求してこないのが不思議だ……。


「乙歌ちゃん、何で茜のことを知っているの?」


「知っているも何も高校女子ハンドボールの世界では美馬茜さんは、

 有名人なんですよ!! 私の憧れの選手でもありますし……」


「じゃあ乙歌ちゃんもハンドボールをやっているの?」


「……はい、美馬さんに比べたらまだまだの実力ですが」


 彼女が照れくさそうに謙遜けんそんしながら頷いた。


「小学生までは両親のすすめで女子サッカーをやっていました。だけど私にはしゅんさんみたいにサッカーの才能はなかったので、中学に入ってからはハンドボールに切り替えました……。もともとハンドボールはサッカーから派生はせいしたスポーツなので取っつき安かったのと、私にとっては足で蹴るより手でボールを投げたほうがしょうにあっていたみたいです」


 俺は幼馴染みで付き合いは長いが、茜がそこまでハンドボールの世界で有名な選手だとは知らなかった。

 それに茜のことを話すときの乙歌ちゃんが見せるきらきらとした表情がとても印象に残った。本当に彼女の憧れなんだな、茜は……。


「そ、それで、あの、零お兄ちゃんは茜さんと……」


 乙歌ちゃんが消え入りそうな声でつぶやいた。語尾がよく聞き取れなかったが、彼女の言わんとしている意味はすぐに理解出来た。

あんな濃厚な動画を見せつけられたら誰だって俺と茜が深い関係と勘違いしてしまうだろう。それは無理もない。


「俺と茜は幼馴染みで幼いころから何をやるのも一緒なんだ。だけど俺達はけっして付き合っている訳じゃない……」


 ここまで来たら茜との個人レッスンの経緯も説明しておいたほうが良さそうだな。

 乙歌ちゃんは絶対にそんなではないと思うが、あの学園一のチャラ男、香坂俊こうさかしゅんが義理の兄貴なんだ。万が一でも噂になってしまったら茜にも迷惑が掛かってしまうから。


「乙歌ちゃん、じつは……」



 *******



 ……俺は今までの経緯を彼女に説明した。


 体育祭での二人三脚、その優勝を目指す為の個人レッスン。競技に必要な一心同体の動作を高める目的で二人羽織を取り入れた茜発案の特別プログラムだというていで。

 俺は必死にアスリートにとっては欠かせない点を強調した。エロい内容はかなり伏せたのは言うまでもない……。


「そうだったんですか!! さすがは美馬茜さんです。フィジカル面だけでなく、

 メンタル面も鍛えられるわけですね……」


 彼女が素直な女の子で本当に良かった……。かなり盛った話も信じてくれた。

 俺はタフな交渉人ネゴシエイターになれる素質があるのかもしれない。


「イヤラシいことをしている動画だと勘違いしてしまった自分が本当に恥ずかしいです。零お兄ちゃん、えっちな想像をした私をどうか嫌いにならないでください……」


 真っ赤に染まった頬を両手で覆い隠したまま、うつむいてしまう彼女。その可憐な姿に俺は心から深く感動した。

くはあっ、いい子過ぎるだろっ!! 乙歌ちゅあん!!


「大丈夫、俺が乙歌ちゃんを嫌いになるわけないだろ!! 逆に謝らなければならないんだ。試されたとはいえ今朝の痴漢騒ぎで君に大変なことをしでかしてしまった……」


 俺はいきなり病室のベッドの上でフル土下座の格好になった。


「零お兄ちゃん、謝らなければならないのは私のほうです。ベッドにこすりつけている頭をどうか上げてくださいっ!!」


「だって俺は君の……に指を入れてしまった。可憐な女子高生の乙歌ちゃんに破廉恥はれんち極まりない行為をしてフル土下座でも足りないくらいだ!! 俺に何かつぐなわせて欲しい、お金を貸す以外なら何でもやるから!!」


 彼女に謝りたかったのは本心だったが、ついアドリブで調子にのって余計なことまで口走ってしまった……。


「……乙歌のお願いを何でも叶えてくれるんですか!?」


 えっ、乙歌ちゃん、あっさり聞き入れるの!? ここは暗黙の了解で、そう大人のやり取りの茶番劇で俺の申し入れを一度断るお約束だよ。

 意外な急展開に焦りの色が隠せない。何とかアドリブで切り抜けるんだ、零ちん!!


「あ、ああ、何でもお願い聞く回数券、野獣院やじゅういん銀行から発行するよ」


「本当ですか!! 何回分有効なのかな?」

 

 飛び切りの美少女が無邪気に喜ぶ姿を見て俺はつい相好を崩してしまった。


「そんなの何回だってイイよ!! 乙歌ちゃんの頼みなら火の中水の中だ!!」


 ……ヤバい、俺の悪い癖が出た。何でも安請け合いしてあとで大変な思いをすることを茜にも昔から注意されるんだ……。


『零ちんは安請けあいの王様キングだから……。 自分で自分の首を絞めてるんだよ。いつか取り返しの付かない大失敗しても茜知らないから』って。

 今回も何だが危険な胸騒ぎがするぞ。


「う~ん、回数が無制限じゃ零お兄ちゃんに悪いし、五回分でいいですよ」


「わかった、約束するよ。乙歌ちゃんのお願い五回分、何でも言うこと聞いちゃう券、発行完了、零チーン、ガチャガチャ!!」


 銀行のATMの真似をしておどけてみせる俺の姿をみて、彼女が屈託のない笑顔で応えてくれた。


「ぷっ、あははっ!! 零お兄ちゃん、さっそく一枚目を使用します♡」


 乙歌ちゃんの最初のお願いはいったい何なんだろう?


「零お兄ちゃん、お願いをする前に恥ずかしいけど告白しておきますね。さっき私に触ったことを謝ってくれましたけど、かなり勘違いしているみたいだからちゃんと事実を伝えますね。確かに零お兄ちゃんは私の下着に手を入れたけど、乙歌は今日、女の子の日だからガードは出来ていたんです……」


「えっ、じゃあ俺が触ったあの感触は……!?」


「そう多い日も安心です♡ きゃっ私、何を言っているんだろう、恥ずかしすぎる……」


 とんでもない自分ツッコミをしてみせる彼女、かなり無自覚系美少女でぽんこつ可愛いぜ!! 茜といい勝負が出来るかなりの逸材いつざいかもしれない……。


「じゃあ、気を取り直して一つ目のお願いを言いますね……」


 急にかしこまった表情になった彼女が口にしたのお願いとは!?


「二人羽織のレッスン、私にもやらせてください!!」


 うわあっ、夜のエロい大運動会に参加者がもう一人増えたっ!!

 胸騒ぎの予感が的中した。俺は安請けあいの王様じゃなくて安受けあいの大魔王に昇格した気分になってしまった。


 ……これから俺の運命はどうなってしまうのか!?



 ポーン!!


 ベットの上に転がっていた俺の携帯画面にメッセージが表示された、

 茜からショートメールだ。内容は!?



【零ちん! ビッグニュースだよ、個人レッスンの場所が確保出来そうなんだ。

 茜まで至急連絡請う】



 次回、幼馴染の逆襲に続く!!

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