清楚系美少女と病院のベッドで課外授業。そのよん

「な、な、何ですかこれは、零お兄ちゃん、変な動画が!!」


 おわああっ、茜との秘密の個人レッスン動画が再生されちゃってる!?


 清楚系美少女、香坂乙歌こうさかおとかちゃんの携帯を持つ華奢な指先がわなわなと震えている。俺の渡した携帯の画面で繰り広げられる禁断の大運動会に彼女も驚きを隠せないに違いない!!


 何故だ!! 無自覚系巨乳幼馴染の美馬茜と繰り広げた個人レッスン動画は確かに俺のスマホに保存していたがファイルフォルダ内にあるので第三者がすぐには見れないはずだ……。


 俺の携帯を握りしめたまま微動だにしない乙歌ちゃんの様子に、こちらまで全身が固まってしまった。やっとの思いで彼女の肩越しに携帯の画面をのぞき込んだ。


「……!?」


 俺は即座に理解した。これは写真アプリの自動再生機能だ……。 


 最近のスマホは自分で撮り貯めた写真や動画を勝手に思い出メモリーとかいって

 スライドショー化して自動再生してしまうんだ。よりによってこんな最悪のタイミングでエロい二人羽織の個人レッスン動画が再生されてしまったんだ!!


 そんな動画を何で大事に保存してるのかと突っ込まれそうだが、どうか許してほしい。茜が二人だけの記念として俺にこっそり送信してくれたんだ。


『零ちん、これを見て変なことしちゃ絶対に駄目だからね♡ 茜との約束だよ……』


 不幸中の幸いなのがスマホのカメラが俺の背後からエロい二人羽織を撮影していたことだ。三脚で固定撮影していたので茜の体操服の上からでも分かるたわわなおっぱいを真正面から捉えていない。まあ後方からでも俺のラブコメ脳なら目で見た状況を脳内保管しているので茜の甘い声や乱れるなまめかしい姿態なども鮮明に思い出せるんだ。でも約束だから変なことには利用していない。本来ならご飯が何杯でも逝けるほどのおかずなんだが……。


「お、おおお、と、か、ちゅわん……。そ、それは、えーと。あの、あのね!!」


 俺は動揺のあまり、しどろもどろになってわけのわからない言葉を羅列られつしてしまう。


「……」


 乙歌ちゃんは相変わらず黙ったままだ。頭のてっぺんから湯気が出るかと思うほど、普段は白い頬を耳まで真っ赤に染めている。

 その間もスマホの画面では克明にむにゅむにゅしちゃっている場面が再生され続けている。あああああ!! 俺が菜箸さいばしで茜のおまめさんをまんでいるシーンに差し掛かるぞ!? ここから先を乙歌ちゃんに見られてはマズい!! 俺の澄んだ心で彼女に告白したことがすべて水の泡と消えさってしまう……。


 ******* 


 『あっ、あーん♡ 箸を引っ張っちゃ駄目!!』


 『……!?』


 『それは茜のさきっぽ……。別のお豆さんだよぉ!!』


 ******* 


 こんな具合にお豆さん一番勝負が再生されたら取り返しが付かない!!


 音声は病院内なので事前に設定したマナーモードにより、かろうじて再生されなかった。そのおかげで茜の艶っぽい声が病室内に大音量で流れることは何とか未然に防げた。もしもフルボリュームで再生されたらナースコールを押すよりも早く看護師さんが病室に駆けつけて来るだろう……。


 それでも女子高生の純粋無垢な乙歌ちゃんにとってはとてつもなくハレンチな動画内容だ。先ほどまで青白い顔になったかと思ったら今度は耳まで真っ赤だ。

 普段は陶器のような白い肌が紅く染まったままだ。俺は人生終了の瞬間は今朝の痴漢逮捕の時だと思ったがそれは間違いだと気がついた。


 この病室が俺の本当の墓場だったんだ……。年貢の納め時とはまさにこのことだ。


『へ、変態っ!! ド変態っ!! 乙歌にこれ以上近寄らないで……。あなたをお兄ちゃんなんて呼んだことが自分の舌を噛み切りたいほど汚らわしいわ。今すぐこの病室から出て行って!! そして二度と私の前に姿を見せないで……』


 彼女からのそんな責め苦の言葉を予想して、俺は甘んじて受け入れようとこうべを垂れた。

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・

 あれっ、いつまで待っても乙歌ちゃんから罵声を浴びせられないぞ。

 次の瞬間、俺は彼女の口から発せられた言葉に驚愕きょうがくしてしまった。


「この動画に映っている零お兄ちゃんの前にいる女性は、中総高校なかそうこうこうハンドボール部主将の美馬茜みまあかねさんですよね!!」


 携帯画面からの光に照らされた乙歌ちゃんの顔に浮かんでいたのは、

 俺へのさげすみの表情ではなかった。食い入るようにえっちな二人羽織の動画を見つめている。先ほどよりずいぶんと落ち着きを取り戻しているように見えた。


 ――ええっ、何で茜のことを違うお嬢様女子校に通う乙歌ちゃんが知ってるのぉ!?


 彼女が大きな瞳で俺を真っすぐに見据えながらこちらに携帯を差し出してきた。

 ぴんと伸ばしたセーラー服の左袖、華奢な指先に握られた携帯電話。

 乙歌ちゃんの瞳に映る光彩が不安げに揺れる、その揺らぎに彼女の決意のような固い意志が感じ取れた気がした……。


「……零お兄ちゃんの好きな人って、この美馬茜さんですか?」



 次回「清楚系美少女と二人っきりのいけない部活動」に続く!!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る