幼馴染の個人レッスン おねんねのじかん

「茜と恋人の予行練習をして欲しいの……」


 恋人の予行練習って!? いったい何をするんだ。

 俺は茜の真意を測りかねてしまった。


「あっ、気を悪くしないでね。茜には好きな人がいるって言ったけど、その相手に一方通行な片想いなのかもしれないから茜、とっても胸が苦しいんだ。

 だから零ちん、幼馴染の私を助けると思って何とか協力をしてもらえないかな? 将来の為に恋の予行練習をしてみたいの……」


「……恋人の予行練習って、茜、お前には今まで!?」


「そうだよ。悪い? 幼馴染の零ちんなら知っているから隠さないで話すけど、私はこれまで男の人と付き合った経験がないの……」


「茜……」


 俺はその理由わけを知っている。


 学園一の美少女である茜に言い寄ってくる男はそれこそ掃いて捨てるほどいるのに、これまで正式に付き合った相手はいない。

 そして茜が冗談で言っていないことは、その真剣な表情から痛いほど伝わってきた。俺は茜の側にずっと一緒にいたから、お前のことだったら世界中の誰よりも知っているつもりだ。

 もし全国共通幼馴染試験があったら俺は美馬茜みまあかね部門で一位を取る絶大な自信があるんだ。


「こんなお願いする茜のこと、零ちんは嫌いだよね……」


 自分が言いだした言葉で深く傷付いている様子が言葉の端はしに感じられた。


「そんな訳ねえだろ茜、何で俺が昔からって呼ばれているか忘れたのか?」


 茜は質問に一瞬とまどいの表情を浮かべたが、すぐに俺だけに見せてくれるこぼれるような笑顔に戻ってくれた。


「……そうだったね。あの時も茜の為に零ちんは全力で戦ってくれたんだよね!!」


「当たり前だろ、昔から……。そしてこれからもお前と俺が幼馴染みなことだけは天と地がひっくり返っても絶体に変わらないんだから!!」


 この言葉を彼女に告げた時には心の底からそう思っていた。だけど俺達二人を待ち構える運命をまだ知らずにいたんだ……。


「零ちんのこと、本当に頼りにしていいの? こんなわがままな幼馴染みでも、

 愛想を尽かして嫌いになったりしないでね……」


「……」


 俺は返事をするかわりに茜のたわわな膨らみにもう一度顔を埋めた。

 そして今までで一番愛情のこもったハグをした。


「……嬉しいよ、零ちん♡」


 茜のおっぱい枕で見る夢はどんな物語だろう……。


 おれたちはおさななじみとしていっぱいなかよしした。



 新展開の次回に続く。



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