幼馴染の個人レッスン三限目

 れいちんさんの質問に新しいコメントが一件あります。


 元の質問


 >ID 零ちんさん


 >高校二年生の男です。出来れば女子高生に質問です、


 >今度体育祭で女の子と二人三脚のペアになったんですけど、

 >女の子って男子のムダ毛とか気にしますか?


 >相手の女の子に嫌われたくないのでアドバイスお願いします。

 >腕や足が密着するので気になります……


 >ケアしていない男子


 >ツルツル男子


 >どちらが良いでしょうか?

 >ご回答よろしくお願いします。


 ID 非公開さん


 現役女子高生です。


 質問に答えると、

 断然、ムダ毛をケアしていない男子がいいです。


 ウチの学校でもケアしている

 チャラ男くんがいますが、

 ツルツル男子は逆に引いてしまいます……。


 一見清潔感そうに見えますが、

 女の子にモテようとする下心が見え透いて

 キモいだけです。


 もし私が付き合うならナチュラルな

 男の子を彼氏にしたいです。


 *******


「あっ、あーん♡ 箸を引っ張っちゃ駄目!」


「……!?」


 それは茜のさきっぽ……。別のお豆さんだよぉ!!」


 俺は文字通り鳩が豆鉄砲を喰らった顔をしていたに違いない。


 どわっ!! べ、別の豆ってことは茜のさきっぽを摘まんじゃったのか? キングオブ童貞の俺はいきなりおっぱいを揉んだり摘まんだりしたので脳内のメモリーがパンク寸前、知恵熱ならぬエロ熱でぶっ倒れてしまいそうな勢いだ!!


「ご、ごめん!! わざとじゃないんだ茜、信じてくれ……」


 二人羽織ににんばおりの体勢でなけれは俺は土下座して許しを請うただろう。


「ふうっ!! ビックリしたけど大丈夫だよ。だって目隠しもしているし、事故みたいなモノだからあんまり気にしないで、それに零は……」


 こんな俺を許してくれるのか、茜のEカップのおっぱいを揉んだり摘まんだりしちゃっているのに……。


「子供の頃から茜をずっと大切に扱ってくれているのは知っているから」


 俺のことをそんな風に思ってくれていたのか……。俺は茜が好きだ。自分でもびっくりするほど大好きだ。一番近くにいる幼馴染、手を伸ばせば触れられる距離にいつもいた茜。だけど指一本触れられなかった。もし抱きしめて拒絶でもされたら……。


 だったら何も踏み出さない方が楽だ。そう永遠に幼馴染の関係のままで。


 でも絶体に無理だと思っていた女の子が俺の腕の中にいるんだ。もう我慢が出来ないっ!! これまで封じ込めていた想いが一気に溢れ出してしまう。


「茜っ!!」


「れ、零っ!? あっ、ふうっ」


 俺は茜をむさぼった。鎖骨から首筋にかけてのライン、やわらかい頬。熱を帯びた耳たぶ。まるで鎖から解き放たれた犬みたいに全てを舐め尽くそうとした。アイマスクで視覚を奪われていることが余計に俺を高ぶらせたのかもしれない……。


 禁断の甘い肌の感触を知ってしまった舌先が止まらないっ!!

 ……可愛いい、我慢出来ない、このまま茜の唇に。


「零っ、キスは駄目っ!!」


 茜がふうふうと息を切らしながら叫んだ。唇はあと僅かの距離だったはずだ。


「茜、おっぱいは良くて何でキスは駄目なんだよ!!」


 自分でも訳の分からない屁理屈を口走ってしまう。俺の中の哀れなワンコはブルブルと打ち震えて身をすくめてしまった。


「おっぱいに触れたのは練習中の事故だからイイの。でもキスは恋人同士じゃなきゃしちゃ駄目なんだよ。零ちん、そこを分かってね……」


 努めて明るく振る舞う茜の声を聞いて愕然としてしまう。俺の中の汚い欲望がみるみる萎んでいくのが自分でも感じられた。 


「でもお前は他に好きな人がいるって俺に言ってたじゃないかよ!! そいつのために唇は取っておくんだろ!! どうせ俺なんかただの幼馴染みだし……」


 茜に俺の汚い欲求をぶつけてしまった罪悪感への裏返しで何故かお門違いな逆ギレをしてしまう。さらに余計なことまで俺は何を言ってんだ。


 ……しばらく二人の間に気まずい沈黙が流れる。


 最初に沈黙を破ったのは茜だった。


「そうだよ、茜は大好きな人の為に取ってあるんだ……。この唇も、そして茜の全部、大好きな人に捧げるんだから」


 俺はその言葉にまた嫉妬の炎で焼き尽くされそうになった。一体誰なんだ? 茜がこれほどまでに想いを寄せる男は!? 同じ地球上にそいつが存在する事実に俺は大声で叫び出しそうになった。


「一体誰なんだよ!! そいつは!? あっ、分かったぞ、相手は学園一のチャラ男の香坂だな」


 駄目だ、嫉妬に狂った見苦しい俺はどんどん追求してしまう……。先日の出来事が俺の脳裏に蘇ってきた。



 *******



野獣院やじゅういんふざけんな!! 隠キャのお前にクラスカースト最上位の俺様が何で頭を下げたか理由わけは分かってんのかよ!!」


 サッカー部のキャプテン、香坂俊こうさかしゅんにラブレターの結果を報告しに行った。俺を待っていたのはヤツからの口汚い罵声だった……。


美馬茜みまあかねの幼馴染みだからって、お前なんかに頼んだのが最初から間違いだった。茜のEカップおっぱいは俺が絶体にモノにするからよ!! 自慢じゃないが、サッカーも女もゴールは外したことないんだぜ。クククッ、夜のハットトリックもな!!」


 この腐れ外道がっ!!


 俺は香坂の卑猥な言葉を耳にした瞬間、思わず激昂げきこうしてヤツに飛びかかってしまった。


「香坂、お前なんかに絶対茜は渡さないからな!!」


 俺は野獣院やじゅういんと言う名前のおかげで、中学時代から不良グループに喧嘩を吹っ掛けられ、いつしか喧嘩慣れしてしまったんだ。香坂ご自慢のムダ毛がないツルツルの足に向かって全力でタックルをお見舞いしてやった……。



 *******



「零ちん、そんなに落ち込まないで、私の話を聞いてくれるかな?」


 いつもの茜の口調に戻り俺のアイマスクを外してくれた。急激に視界が明るくなり俺は眩しさに思わず目を細める。


 「茜に大好きな人がいるのはホントだよ。だけど私の片想いかもしれないから、だってその人ったらめちゃくちゃ鈍感で茜の気持ちなんか分かってくれないの。こんなに茜は泣きたいほど好きなのにもしかしたら凄い難聴なのかもね、その人って。ふふっ、零ちんはどこかいい耳鼻科を知らないかな? 恋愛の耳鼻科」


 茜にこれほど想いを寄せられる相手は、香坂じゃなければ一体どこのどいつなんだ!?


「さっ!! お豆さんの勝負はまだだよ。零ちん、もう一度お箸を持ってね」


 こんな茜の笑顔をずっと見ていたい。たとえその笑顔が俺の為じゃなくても、一緒の大学に行って守り続けてやるんだ。茜の影となって……。


「茜、俺は体育祭で絶対に優勝するぞ!! だからふにっこのお豆さん勝負も負けるわけには行かないぜ」


「茜も望む所よ、だけど個人レッスンを甘く見ないで。お豆さんはさわりにしか過ぎないの。二番勝負のお題はこれだよ!!」


 ええっ、なんじゃこりゃ!?


 俺は差し出されたお題の食材を見て、言葉を失う程、驚いてしまった……。



 次回に続く!!

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