幼馴染の個人レッスン一限目。

「んっ、零、触るのはそこじゃないよぉ……」


 茜の甘い吐息が耳のすぐ近くで聞こえる。


 俺は駄目だと思いつつ茜のおっぱいから手を離すことが出来なかった。服の上からで肌に直接ではないが驚くことに茜は下着ブラジャーを外していた。柔らかな弾力のある乳房、その敏感な先端に思わず指先が触れてしまった……。


 これが幼馴染の……。 あかねのおっぱいなのか。くそっ、頭がジンジンしておかしくなりそうだっ!!


「あ、あかっ、茜!! 俺に何をやらせるんだ。こんなこと幼馴染み同士で絶体におかしいよ。それにお前と約束したのは二人三脚の練習じゃないのか。な、何なんだ二人羽織ににんばおりって!!」


 俺は茜のおっぱいからやっとの思いで手を離した……。


 俺の名前は野獣院零やじゅういんれい、ヒロインを寝取る胸糞キャラみたいな名前とか言わないでほしい。実際の俺は女の子とキスはおろか、手すら握ったことがないんだ。


 もちろん幼馴染みの美馬茜みまあかねとも、物心が付いてから身体に触れた覚えがない。この個人レッスンを受けるまでは……。

 確かにガキの頃は、一緒にお風呂に入ったり目の前で着替えておちんちんを出すなんて幼馴染みの間柄ではへっちゃらだった。


 だけど幼いあの日の出来事が俺達の関係性を変えてしまった。



 *******



 俺と茜の住む辺りは新興住宅街で今よりも多く自然が残っていた。あの日も暗くなるまで田んぼのあぜ道や近くに流れる小川で虫取りをして二人で遊んでいたんだ。夕日が陰り始めてそろそろ家に帰る時間だと茜を探したが、その姿はどこにも見当たらなかった。小学生の俺はとても焦ってしまった。何故なら川には深い場所もありもしそこに誤って茜が落ちたりしたら……。


 俺の心臓は夕刻を知らせるサイレンのように激しく高鳴った。


「あ、あかねっ!? 返事をしてくれ!!」


 思わず声が裏返るほど取り乱して叫んてしまった。無情にも逢魔が時の静寂が俺を包みこむ。


「……っ!!」


 俺は背丈よりも高い草むらをかき分けて勢いよく走りだした……。

 嫌だ!茜が俺の前からいなくなるなんて絶体に嫌だ!! 川べりに続くあぜ道に、茜の鞄が落ちていた。最悪の想像が俺の脳裏をよぎる……。


 がさっ!!


 躊躇しながら手前の草をかき分ける、そんな俺の目に飛び込んできたのは……。


 川面に浮かぶ変わり果てた茜の姿……。ではなかった。


「零ちん……!?」


 ……思わずその場で固まってしまった。茜が急に俺の前からいなくなった理由わけを瞬時に理解した。


「あ、茜……」


「いやっ!! こっちに来ないで」


 我慢出来なかったのか茜はその場にしゃがんで小用を足していた。薄暗闇に浮かぶ白い裸身、俺は顔を背ける間もなく全部見てしまった……。

 茜の履いた靴の赤さと同じくらい、彼女の顔は真っ赤に染まっていたのが今でも鮮明に思い出される。そんな出来事があり茜と一緒にお風呂には入れなくなった……。



 *******



  俺は確かにラブコメが大好きだ。ラッキースケベも三度の飯より大好物だ。だけどそれは物語の中で現実に起こったら、おっぱいにタッチとか言っている余裕はないだろう……。まさに今の俺の状態だ。こんな俺をヘタレと呼んで貰っても構わない。確かに健全な男子高校生だ。穴があったら木のうろでも入りたい。おっぱいも据え膳されたら揉み揉みしたい!! だけどそれ以上に茜のことを大切にしたいんだ。この手で汚したくはない……。


「……大丈夫、茜、また零ちんのこと困らせちゃった?」


 すっかり固まってしまった俺に茜が心配そうに声を掛けてきた。


「茜を信じて、これは大事な練習だから、二人で同じ大学に行くためには必要なことなんだよ……」


 茜、今なんて言ったんだ。一緒の大学って? そんなことは今まで考えたこともない。第一俺と推薦枠組の茜では志望大学のランクが全然違うからだ。


「茜、俺にはとても無理だよ、同じ大学に行くなんて……」


 そりゃ、高校までずっと幼馴染みで隣に茜がいることが当たり前だった。それも大学進学で終わることは心のどこかで気付いていた。でもその問題から俺は目を背けていたんだ……。


「弱音を吐いたらそれで終わりでしょ、茜は零ちんと離ればなれは絶対に嫌なんだよ……」


 声の調子だけで茜がどんな表情をしているか痛いほど分かった、

 ずっと幼馴染みの俺だから。


「よし!!」


 俺の腹は決まった。これでやらなきゃ男じゃない!!


「茜、俺を男にしてくれっ!!」


「零ちん、一緒に体育祭の二人三脚で優勝を目指そう!! これは内緒の話だけど今回の体育祭の成果点は倍カウントなんだって……」


 なっ、なんだって、そんな情報を茜はどこから仕入れたんだ!?


真奈美先生だよ。今回の事情を話したらこっそり教えてくれたんだ」


 どっきんとは真奈美先生の愛称で、新任教師だが俺達のアイドル的存在でもある。ロリフェイスに溢れんばかりの爆乳おっぱいの上に教科書が置けちゃいそうなレベルだ。


「じゃあレッスン再開だよ、準備はイイ?」


「はっ、はい!! 美馬みま教官っ」


「ふふっ、返事がよろしい♡ じゃあ、最初は零が先攻で茜が後攻だよ……」


「教官質問であります、先攻と後攻とは?」


 次第に俺も普段の調子が戻って来た。


「二人羽織の練習で先攻は後ろから抱きついて腕をやるの。もう一人は顔、腕が零で、顔が私だよ。そして順番で攻守を変えるの」


 なるほど、二人羽織と言えば二人の息が合わないと駄目で、最近はコンプライアンスが厳しくてあまり見かけなくなったが、以前はテレビのお笑いコントや宴会芸の定番だった。演目は熱いおそばを食べるとか、熱いおでんを食べるのが定番だが、まさか俺達も同じことをやるとか!?


「茜、熱々の食べ物でやるのか?」


「まさか、そんなことしないよ。やるのはこれ!!」


「あの~これ、って言われても俺アイマスクで全然見えないんですけど……」


「あっ、ごめんごめん茜まったく気がつかなかったよ!!」


 相変わらず俺の前だけポンコツ可愛いぜ!! ポンかわ幼馴染で萌え死にそうだ。


「はいっ!! これで見えるでしょ……」


 ふうっ結構アイマスクって蒸れるんだよな。やっと目が見えるようになったぜ。しかし頭では理解してもかなり異常な光景が目の前に広がっていた。俺は大きな寝袋のような物に身体を包まれていた。布の色は茜の体操着に合わせ白色で下半身部分はブルマの紺色に合わせている。今時、絶滅危惧種のブルマは更にレアなちょうちんブルマだ。何故にちょうちんブルマなの?


「教官、なんで下半身はちょうちんブルマなんですか?」


「あ、気付いちゃった。だって普通のタイトなブルマだとおしりの線が出て恥ずかしいから、お母さんに頼んで特別に揃えて貰ったんだよ。ちょうちんブルマ♡」


 ちょうちんブルマを知らない諸君もいるかもしれないので解説しておくが、普通のぱんつみたいなブルマではなく、アラレちゃんやワカメちゃんが履いているような旧式タイプのブルマだ。しかしマニアの間ではちょうちんブルマ信仰が根強くある程だと噂には聞く。世の中の変態紳士にリミッターはないよね……。


 おっ!? 確かに俺の股間に当たるこのナイロン100%の感触は!! ふう、ふうう、ぶ、ブルマっ、ちょうちんばろむわん!! じゃなくって、これは紛れもなくちょうちんブルマだ!!


 茜ちゃん、これは逆効果かもしれませんぜ。ちょうちんブルマはおしりにぴったりはしていないが中に空気の層があるので相棒にえも言われぬ快感がっ!! ふにふにした感触で思わず、ンッ、ギモチイイイッ!! 俺の相棒も思わず反応しそうだ……。


「あ、あかあか、茜っ、おしりっ、おしりをぐりぐりするのはやめてくれっ!!」


 俺の身体が意志に反してビクンビクンと跳ねてしまう。さっきの誓いを忘れるな!! 僧侶モードだ。一休さんっ!!


「あっ、ごめんごめん、思わずお尻で金魚運動しちゃった。てへっ!!」


 おいおい、てへっ!じゃないよ。童貞を確実に殺しに来てるだろ茜!! ふうっふうっ、ノーマルパンツを履いていなかったら即死だった……。

 今日はたまたまブリーフではなく厚手の生地のトランクスだったんだ。はあっ、命拾いをしたぜ。


「じゃあ、お題はコレね♡」


 茜が俺の目の前に差しだしたお皿にはとある食材が載っていた。長い菜箸さいばしも一緒だ。


「茜、これって煮豆か?」


「そうだよ!! ふにっこのお豆さん……」


「ふにっこのお豆さんって、たしかに朝食のお供には欠かせない一品だけど何でこれを使ってお題なんだ。まったく見当もつかないな」


 一体コレで美馬茜みまあかね教官は、俺にどんなお題をさせようとしてるんだ!?


 嗚呼、俺と幼馴染みの個人レッスンはまだまだ始まったばかりだ……。



 次回に続く!!



 ☆☆☆お知らせ☆☆☆


 ※拙作に素晴らしいイメージイラストを描いて頂きました。


 (注意)近況ノートのリンクに飛びます。

 https://kakuyomu.jp/users/kazuchi/news/16817330652103170541


 ヒロインの茜ちゃん、ちゃんとセーラーブレザーを着てくれています。

 それに無自覚な部分もたわわ(笑)に再現されていますね。

 本当に嬉しいです、くろっぷ様、ありがとうございました。


 

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