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「追い詰めろ!」
ルーデの合図とともに、十人ほどの兵士たちが駆けだした。追い込まれた犬型のモンスターたちが、次々と斬られていった。
事前にカブレフィドによって、周囲に氷の結解がはられている。逃げ出そうとしたモンスターたちも、壁に阻まれて外に出ることができなかった。
モンスターたちは駆逐された。
「終わったようです」
「ふむ。負傷者が少しいるな」
ルーデは怪我をした兵士に近づき、声をかけていく。残念ながらカブレフィドは、治癒魔法は使えなかった。彼女は遠くからただ眺めるだけである。
モンスター対応隊。彼らはそう呼ばれていた。居住区や畑の近くに現れるモンスターたちを退治していく。兵士は地元で募集するため、正式な隊員はルーデとカブレフィドの二人である。
スキィアと異なり、彼らが魔獣を相手にすることはない。魔獣は強く、知恵もある。魔獣が現れた時に人々がすることは、逃げることである。たとえ財産を放置してでも、魔獣から身を遠ざけねばならない。
仕事を終えたルーデは、改めて考えていた。モンスター討伐にも組織的な行動が必要なのに、一人で魔獣を13体も倒すなどということがあり得るだろうか? 協力者がいたとしても信じられないが。
たとえ弟が、あれを持っているとしても……。
ルーデは、こぶしを握りしめた。
「ありゃあ、本当だ」
滝つぼを見ながら、スキィアはつぶやいた。
「これは飲めんな」
「どうなっちまってるんだ」
「呪いか何かだろう」
「滝は普通なんだよな」
スキィアは首を上に向けた。落ちてくる滝は普通の水である。しかし滝壺は緑色に濁っていた。そして時折、不気味な泡を吹きだしている。
「ううむ、これはひどい嫌がらせだ」
ヒレンソはそう言うと翼の中で体を丸めた。
その時、滝壺の水が矢となってスキィアとヒレンソに向かってきた。
「そんなものは届かん」
ヒレンソが翼をはためかせると、風が巻き起こって矢を消し去った。
「ヒャヒャヒャ。なんかすごいのがいるぞ。こりゃ予想外だ」
「下品な奴が出てきたな」
滝壺の中から、緑色の魔獣が姿を現した。
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