総統閣下ぶらり死刑宣告の旅

  総統閣下は暇なので、よく散歩に出かけます。


 きょうも、午前中から近所の商店街をウロウロ…


 と、その最中です。


「あ、総統閣下、どうもっ。コロッケ揚げたていかがですかい」


 初老の男性。肉屋の店主さんが、彼に声をかけてきました。


「うむ、いい匂いだ。では、昼食用に10個ほどもらおうか」


「へい、毎度ありっ」


 さっそく店主さんが、コロッケを袋に詰め始めました。


 実は、総統閣下はコロッケが好きです。こうしてよく椚家の人たちの分も買っていくことがあります。


 気前よく買い過ぎて、3日3晩、一家みんなで食べ続けたこともあるほどに。んげっ。

 

 さておき、まもなくお勘定となったところで、


「…はい、お釣り。二百万両です〜っ」


 などと、店主さんが言ったが大変です。


「ご店主…」


「え…なんですかい、総統閣下?」


「キミは、終身刑だ」


 あちゃ、また始まったようです。


 が、この度は終身刑。やはり総統閣下にとっては、つまらぬダジャレの方が重罪なのか。店主さんの『古典的ジョーク』には、ワンランク軽い罪が科せられました。


 けれども、


「またまた総統閣下ってば、ご冗談を〜っ…」


 この店主さんの一言で、いつものように総統閣下が我に返りました。


「つい、かつてのクセで…ね」


「よっ、総統閣下ばんざ〜いっ」

 

 やっはっはっは〜っ…まだ人影もまばらな商店街に、2人の和やかな笑いが響きます。

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