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「…しかし、私が現役の総統だった頃は、いつどこへ立ち寄ろうが、必ず迅速かつ丁寧な応対があったものだよ」


「え〜、凄いですね」


 結局、サリーが総統閣下の分も購入。一緒に食事と相成りました。


「そうそう、これはお勘定だ。釣りはいらぬ。とっておきたまえ」


「えっ、こんなに…総統閣下ってば、どういう金銭感覚してるんですか」

 

 総統閣下がテーブルの上に滑らせてきたお金を、そのままそっくり滑らせ返すサリーです。

 

 まあ、特にファーストフード店で、んな札束を差し出されれば、そうするのが普通でしょう。


 ちなみに、総統の地位は失えど、なぜか財力だけは十分。そもそも彼は、それを使って椚夫妻を買収し、あの宅に居候を決め込ん自分で家買えやでいるのです。


 さておきまして、やがて食事も終了。2人が揃って店の外に出てきました。


「では、私はこれで帰るゆえ…」


「あ、わたしもコスモに用があるので、一緒に行きましょう」


「そうかね。ならば参ろう」


 商店街の一角。総統閣下とサリーが、2人して歩き出しました。


 そして、総統閣下の退屈な…あいや、ありがた〜い宇宙国家論など聞かされながら、進む事しばし。やがて椚宅のあるマンションまで、あと少しとなったところで、


「総統閣下。ちょっと、あそこのコンビニに寄ってもいいですか」


 この通り沿いの前方。一軒の店をサリーが指差しました。


「ん、あの店かね。もちろん構わんが…」


 ところが、ほどなくして入店したまではよかったものの、


「ちょっと、総統閣下。どうしたんです? そんなところにジッと立ってたら迷惑ですよ」


 総統閣下ったら、自動ドアから少し入った位置で立ち止まっています。


「んいや、あの店員ときたら、一向にマントを預かりにこないのでね」


 いやはや、また始まりました。

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