第24話 実験開始!!
「……お前、いつの間に起きてきたんだ?」
「うーん、君が盗賊を殴った時くらい?」
僕が馬車を降りてすぐじゃねえか!
「それなら、もうちょっと早く来いよ!! そしたら、あんな恥ずかしいことする必要もなかったのに……」
「クックックッ、だって、君のかっこいい勇姿を見たかったんだもの」
「ざけんな」
「おい、てめえら、何をごちゃごちゃ言ってやがる!!」
「何をそんなにカッカしてるんだい? こっちは、ただ雑談をしていただけじゃないか」
「このアマ、舐めた口利きやがって……!! 野郎ども、ぶっ殺すぞ!!」
やかましい雄叫びを上げ、盗賊どもがこちらへ走ってきた。
「クックックッ、威勢がいいのは良い事だけど、力量の差を考えないのはどうかと思うよ?」
楽しそうなのに、どこか恐怖を覚えさせるような口調で、ヴァイオレットはそう言い放った。
「うーん、でも、どの子で実験してあげようかな……」
そう言って、ヴァイオレットは、服の中をごそごそと漁り始めた。
おい、もう目と鼻の先まで来てるんだぞ!?
「……うん、この子にしよう。ほら、プレゼントだよ」
――ピシッ!!
ギリギリで取り出した丸薬を先頭にいた大男に素早く投げつけた。
すると、途端に大男は胸を掻きむしり、そのまま地面に倒れ込んだ。
「うむ、概ね想定通りの反応かな。じゃあ、こっちはどうか、な!!」
そう叫んだヴァイオレットは、また別の丸薬を三つ取り出し、盗賊三人の額に丸薬を正確にぶち当てた。
「ほらほら、もっとテンポよくかかってきなよ!! 試したい薬は、まだまだたくさんあるんだから!!」
ヴァイオレットは次々と丸薬を取り出し、攻撃を仕掛けようとする奴、逃げようとする奴、目についた奴全員に薬をぶつけていった。
地面ですやすやと眠りだす者、喉を押さえて苦しみだす者、突然泣き出して動かなくなる者。
ヴァイオレットの実験の犠牲者は、どんどんと増えていった。
そして――
「君でもう最後かな?」
リーダーと思しき奴――薬で四肢を動かせなくなっている――に、ヴァイオレットはニヤニヤしながら話しかけた。
「……てめえ、何者なんだよ」
「そんなこと、君は知る必要ないよ。……でもまあ、強いて言うなら、天才薬草師ってところかな」
そんなくだらないことを言いながら、ヴァイオレットは、今までの丸薬と比べて一際真っ黒なものを取り出した。
「これ、どんな効果だと思う?」
「知るか」
「クックックッ、随分と怯えているみたいだけど、心配はいらないよ。効果って言っても、ただ眠るだけだから」
そう言って、ヴァイオレットは何かを思い出した様子で、『でも』と付け加えた。
「副作用として、悪夢を見るんだったかな。内容は確か、何度も何度も殺され続ける、って感じだったはずだよ。まあ、夢の中の話だから、大丈夫だよね?」
「なっ!? やめ――」
愉悦の表情を浮かべ、ヴァイオレットは有無を言わさずに、丸薬をそいつの口に突っ込んだ。
すると、そいつは一瞬で意識を失い、代わりに、低いうめき声のようなものを上げ始めた。
「うん、これで終わり」
「……お前、悪魔みたいな奴だな」
「そうかい?」
何でそんな純粋な瞳ができるんだよ。
そう思った直後――
「「「わああああああ!!」」」
そこら中から、大きな歓声と拍手が上がった。
「助かったー!!」
「ありがとうございます!!」
「ああ、まさしく冒険者様様だ!!」
御者たちが、口々に安堵の声を漏らしていく。
ヴァイオレットの方を見ると、『好き勝手、実験をしただけなんだけどな……』などと呟きながら、恥ずかしそうに頬をポリポリと掻いているが、満更でもなさそうだ。
…………。
僕、結局何もしてないんだよなぁ。
そんなことを考えながら、恥ずかしさと気まずさを隠すように、僕はその場にしゃがみこんだ。
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