第23話 ハッタリ
……どうしよう、どうしよう、どうしよう!!
なんとかできるのは、僕だけ。
…………。
「……スゥー、ハァー……」
大きく深呼吸をし、精神を落ち着かせる。
……よし。
「……御者さん、ちょっとの間、待っていてください」
「い、いきなりどうしたんだい? って、お客さん!?」
馬車の扉をあけ放ち、僕はすぐさま飛び降りた。
「んあ? おい、あっちで物音がしたぞ? まさか、護衛なんてつけてねえだろうな!?」
「ひ、ひえっ!? つ、つけておりません!! ですから、お、お助けを、お助けを……」
「あ? ガタガタ言ってんじゃねえ!! ……チッ、おい、お前!! 確認してこい!!」
「あいよ、兄貴」
指示された方の盗賊が、先程まで乗っていた馬車の方へ面倒くさそうに近づいてくる。
…………。
「ったく、兄貴の奴、気になるなら、自分で確認しに行きゃ――」
――ドカッ!!
盗賊の頭に何かが当たり、鈍い音が鳴った。
そして、重力に従うようにして、そいつは地面へ倒れ込んだ。
……ふぅ、奇襲大成功。
思いっきり金属の杖を振り下ろしたから、当分は起き上がれないだろう。
……さて、あっちの方はどうしようか。
ここから確認できる限り、盗賊の数は、気絶している奴含め十名。
……残り九人、どうやって対処しようか。
仲間が倒されていることにも、もうすぐに気が付くだろう。
……だが……。
僕の戦闘手段は、殴打以外にない。
魔法はほぼ使えないうえ、魔道具も戦闘向きではない。
奥の手もあるにはあるが、使いたくない。
……まあ、やむを得ない場合には、流石に考えないとだが……。
「……ん? あいつ、なんか寝転がってねえか? おーい、なんかあったか!?」
まずい、気付かれた!!
あわわわわ、どうしよう……!?
……覚悟を決めろ、パトリニア!!
「お、おい、盗賊ども!! てめえらの仲間は、ぼ、俺が眠らせた!! 俺は魔法使いだ!! 大人しく降伏しろ!! 抵抗すれば、火炙りにしてくれる!!」
言った、言った!!
「あ? んだ、あのガキ!! おい、おめえら!! ぶっ殺しちまえ!!」
「おう!!」
「魔法使いの生皮は、まだ剥いだことねぇなぁ……。ケッヒェッヒェ」
あ、終わった。
……ごめんなさい。
奥の手、使い――
「ナイスガッツだよ、パトリニア君」
ポン、と頭の上に手を置かれた。
そして――
「クックックッ、盗賊ごときが、随分と舐めた真似をしてくれたじゃないか。覚悟、出来てるんだろうね?」
両手に怪しげな丸薬を抱え、ヴァイオレットが馬車の影から現れた。
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