第20話 一緒に寝ようか
…………。
僕は先程、なんとなく感じていた圧迫感によって目を覚ました。
すると、どうだろうか。
ヴァイオレットが、僕の上に乗って寝ているではないか。
くそっ、寝る前に嫌な予感はしたが、まさか当たってしまうとは……。
こいつ、こんなに寝相悪かったのかよ!!
しかも、体格負けしてるせいで、全然動かせねえし!!
「うーん、むにゃむにゃ……」
人の上で気持ちよさそうに寝てるんじゃねえ!!
……ハァ、マジでどうしよう。
……先に約束を破ったのは、あっちなんだ。
なにされても、文句言えねえよな?
「よい……っしょっと!!」
ふぅ、これで解決。
起こさないようにと、多少力加減はしていたが、もうそんなこと知ったこっちゃねえ。
無事にこいつをどかせたことだし、さっきみたいなことにならないように、僕は床で……。
――ガシッ。
「どこ、いくの……?」
「……起きたのか」
「ねぇ、こっち、おいで。まだ、眠いから……」
「いや、僕は床で……!?」
掴まれた腕をぐいっと引っ張られ、僕の体はまたベッドに逆戻りとなった。
こいつ、寝ぼけて力加減がバカになってないか……!?
「ほら、こっち。ぎゅー」
「いや、マジで、離れろ。というか、腕を引っ張るな、痛いんだよ普通に!!」
「むー。わがまま言わないで。ほら、一緒に寝るの!!」
わがままを言ってるのはどっちだよ!!
……って、わぶっ!?
「クックックッ、これで逃げられないだろう?」
首に両腕を巻かれたうえに、押さえつけるように足を乗せられた。
こいつ、僕は抱き枕じゃないんだぞ!?
……というか。
「お前、もう目が覚めてるだろ?」
「クックックッ、さーて、どうだろうねぇ……。私はまだ、寝ぼけてるだけかもしれないよ」
「やっぱ起きてるだろ、お前!! おい、さっさと僕を離せ……!!」
「いやだね。話してほしいんだったら、それなりの条件を持ってきなさい。バーターだよ」
でたな、都合の良い時にだけ持ってくる、都合のいい理論!!
「ほら、交換条件がないんだったら、このまま一緒に寝るよ。もう夜も遅いんだ。あんまり騒いでちゃ、他の客の迷惑になってしまう」
「てめ、誰のせいだと……!!」
「いいから、寝なさい」
そう言ってヴァイオレットは、素早く首から片腕を外し、どこから取り出したのか、丸薬をぶつけてきた。
「あ、お、おま、え……」
「クックックッ、ウタタネソウちゃんの薬はよく効くだろう? ……って、私も薬を吸っちゃったから、眠気が……。ふわぁ……」
ヴァイオレットの大きなあくびを背景に、僕は再び深い眠りへと落ちていった。
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