第18話 ファイアーバード

 ハァ……、ようやくか。


「それで、材料ってのはどこにあるんだ?」

「その前に、この街についての説明をさせてくれないかい? 材料について知るうえで、重要なんだ」


 ……面倒だが、こいつの性格上、聞くしかないのだろう。


「さて、パトリニア君は、この街がどうしてこんなに発展していると思う?」

「そりゃあ、人が多いからだろ」

「クックックッ、残念ながら、不正解だ。というか、そんな回答では不完全すぎるよ」

「……じゃあ、なんで発展してるんだ?」


 若干の苛立ちを含めながらそう尋ねる。


「それはね、この近くにある火山に秘密があるんだ」

「火山?」

「そう。ここの火山には、面白い伝承があるんだ。火山の火口に、一匹の鳥が棲んでいる、というね」

「……それのどこが面白いんだ?」

「いつも言ってるけど、話は最後まで聞きなって。というか、火口、鳥ってワードを聞いて、ぴんと来ないのかい?」

「……分からない」

「……ふむ、そうか。じゃあ、正解発表だ」


 にやり、と怪しげな表情を浮かべ、ヴァイオレットは口を開いた。


「不死鳥『ファイアーバード』。こいつが火山に棲んでいるのさ」


 ……不死鳥?


「ありゃ? ぴんときてない感じ? 子供の頃の読み聞かせとかでも出てくると思うんだけどな……」

「……少なくとも、僕は聞いたことありません」

「そっか。じゃ、軽く説明してあげようか。ファイアーバードはね、その名の通り、炎のように鮮やかな羽根を持っているんだ。……まあ、名前の由来は、また別にあるんだけど。それはまた今度説明してあげる。そして、最大の特徴は、さっきも言ったように、不死であることなんだ」

「不死? そんな生き物、いるのか?」

「いるんだな、これが。というか、ダフネだってそうじゃないか」


 言われてみれば……。


「そして、薬の材料になるのは、ファイアーバードの羽根なんだ。てわけで、今から出発しようか」

「いや、急すぎるだろ!?」

「だって、今の内から予約しないと、馬車が取れないじゃないか」

「うえっ、馬車で行くのか?」

「当然。山登るのに、登るまでの移動で体力と時間を使ってちゃ、意味ないじゃないか」

「それはそうだが……。……金は?」

「ないよ?」

「……は?」

「え?」


 なんて言った、こいつ!?


「お前、無計画にもほどがあるだろ!? 何で金もないのに、馬車に乗るだなんて言い出したんだ!?」

「ちょっ、落ち着きなって! 金はないけど、金策ならあるんだよ!!」

「……金策?」

「うん。この街に来る前に、色々薬草で作ってたでしょ? あれはね、回復薬なんだ。で、その回復薬を薬屋にでも持っていけば、そこそこの値段で買い取ってもらえるってわけ」


 なるほど。

 ……でも……。


「なあ、その回復薬って、お前が作ったんだよな?」

「うん、そうだよ?」

「なんか、副作用でもあるんじゃないのか?」

「失礼な!! 副作用なんてないよ!! ただ、ちょっとだけハイになって、仕事も手につかなくなるだけさ」


 それを副作用っていうんだよ!!


「お前、そんなもんを売ろうとすんな!!」

「ちょ、無理やり取り上げようとしないでよ!! これは私が作った薬なんだぞ!?」

「だから取り上げるんだよ!!」

「くそっ、取り上げられるくらいなら……!!」

「むぐっ!?」


 口の中にとくとくとガラス瓶の中身を流し込まれる。

 ……ゴクンッ。

 ……あ。


「……って、あれ? なんも起こらないじゃねえか」

「おっ、運がいいねぇ、君は。この瓶はどうやら、当たりだったようだねぇ……」


 薬に当たりハズレを付けるな。


「ったく、とりあえず、その薬を売るのは禁止だからな? 危険すぎる」

「えー!! 別に良いじゃないか!!」

「よくねえよ!! 大体、おまへは……!?」


 は、はれ?

 ひ、ひたがまわらな……!?


「あへぇ……」

「クックックッ、当たりだからと言って、副作用がないとは言ってないよ。それじゃ、薬を売ってくるから、君は大人しくしててね」

「ひょ、ひょっとまへ!!」

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