第4話 襲われる!

 おま、いや、えっ、いや、なんでこの体勢!?


「フフフッ、やはり、自分が優位に立つというのは、気持ちのいいものだね」

「ちょっ、は、離れろ……!!」

「んー? そんな態度でいいのかい? さっきも言ったけど、私は君をどうとでもできるんだよ? 例えば……」


 そう言って、ヴァイオレットは僕の腰に手を伸ばし、これ見よがしにズボンの辺りを触り始めた。


「君の事を、襲うことだってできるんだ。……どういう意味かは、君の想像にお任せするよ」


 ぞっとするような声で、ヴァイオレットはそう囁いてくる。


「さて、そろそろ、まともに考えることも難しくなってくるはずだ。なんてったって、私特製の薬草たちが入ってたんだからね。シビレヅタちゃんにウタタネソウちゃん、ハッキリグサちゃんの黄金トリオさ!!」


 何か言っているが、くらくらとしている頭には何も届いてこない。


「ウタタネソウちゃんは、そのまま摂取しても優秀な睡眠薬になるんだけどね。ハッキリグサちゃんを混ぜてあげることで、生物の思考を鈍くする効果が出てくるんだ。そこにシビレヅタちゃんまで混ざっちゃえば……最高の拘束薬の完成さ!!」


 早口で何かをまくし立てている……。

 でも、もう、なんか、どうでもよくなってきた……。


「クックックッ、ここまでくれば……。パトリニア君、私と一緒に冒険をしてくれるね?」


 ドロドロとした思考の中に、そんな言葉が反響して聞こえてきた。

 ……こいつと、一緒に、冒険?

 …………。


「さあ、パトリニア君、頷くんだ……!」


 ――僕は、はっきりと首をに振った。


「……へ?」


 ヴァイオレットの素っ頓狂な声が、静かな森の中に響いた。


 他人と協力するだなんて、絶対に嫌だ。

 そのことだけは、いくら頭がはたらかなくても分かる。


「……ふーん、この状態でも断るのか、君は。……面白いな……。よし、分かった」


 何とも言えない笑みを浮かべながら、ヴァイオレットは小さく頷き、どこからか小瓶を取り出した。


「ほら、解毒薬。飲ませてあげるから、口を……いや、面倒だし、私がやるか」


 口に指を入れられ、軽くこじ開けられる。

 すると、ドロッとした甘い液体が口内に流れ込んできた。


「さ、これで、あと数分もすれば動けるようになるはずだよ」

「……どういう、つもりだ?」

「どういうもなにも、君を解放してあげるって言ってるんだよ。私から逃げたいんじゃなかったの?」

「それはそうだけど……」


 ここまでの言動からして、何か裏があるように感じてしまう。


「何を疑ってるんだい? 別に、今更何もしないよ」

「……本当だな?」

「ああ。神にでも誓ってあげようか?」

「……分かった。信じるからな?」

「勝手にどーぞ。……あ、でも、一つだけ聞いてもいいかな?」

「……なんだ?」


「君、こんな森のど真ん中から、どうやって帰るんだい?」


 ……あ。

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