第六章

第24話 アラフォー、大図書館を陥落す

——一ヶ月後

「これは写本……必要ない……」

「そんなぁ」

「本物と出たんですが……余程高度な……」

 アイナの鑑定眼を騙す写本。リヴェラ曰く本物と大差ないらしい。だがリヴェラの持つ本物とは異なるようだ。

「かなり上等……鑑定に引っかからない……いいもの見つけてる……もう一つの本物ともいえる……」

 これを見つけたのは王都迷宮の第四層。宝箱から出たことを考え本物と思ったが違うらしい。

「大体本物は持ってる……あんまり気にしなくていい……」

 全くリヴェラには敵わない。ここ最近魔導書、錬金術書などを迷宮やオークションから持ち帰るが何もかも本物をリヴェラは持っている。

「それより百万年草はできた……?」

「ああ、ドリアードのおかげでな」

「ドリアード……いい子……私、好き……」

 ドリアードとリヴェラは個人的に交流している。口下手同士気が合うのだろう。

「百万年草とエルラ鉱石の砕片を調合……120度で加熱して……抽出……リヴァンの聖水と調合……上澄みを採取……出来た……エクスマナポーション」

「おお……!」

「こんなの基礎も基礎……今の人間界はハイマナも貴重……どうかしてる……」

「とにかくありがとうな。リヴェラ。量産はできるか?」

「生産レシピを作った……生産エリアのポーション作成部門に渡せば作れる……疲れた、寝る」

「ああ、お休み」


——バタン

「相変わらずリヴェラは凄いですね……」

「ああ。持ってない本はないんじゃないか?」

 リヴェラは博識も博識、蔵書は全て頭に入っているときた。全く本の虫である。

「あ、リヴェラに伝えることがあるんでした。それからドリアードさんがDさんを呼んでましたよ」

「ん、了解。私は生産エリアにいくよ」

 パタパタとかけていくアイナ。魔法使いとしてリヴェラと話すことは多いんだろう。このレシピを生産エリアに届けて量産体制を整えなければ。

 百万年草はドリアードの畑から、エルラ鉱石はみにでびる探検隊が山から採取してくれる。10人1組で作った探検隊だが今や10部隊が各地に出動してくれるおかげで鉱石や草木の資材には困らない。もちろん危険なエリアもあるわけだが……その問題は工房エリアが解決してくれた。

 なんとロディアが工房の長になってくれたのである。少し前にメタラシアを訪れ、私が城主になったと話し、冗談半分で工房エリアで開発しないかと誘ったら見事に食いついたのだ。今はメタラシアと城を行き来してやっている。

 そんなロディアはみにでびる用に銃器を開発。小さな彼女らに合わせた設計は順応度の高い彼女らに適合。今や私に追いつくレベルで射撃精度が上がっている。


 生産エリアにレシピを渡してアイナに言われた通り農業エリアへ。ドリアードが私に食べて欲しい物があるのだという。

「ドリアード? 来たぞー?」

「あ、Dさん。これ、新作です」

 渡されたのはホイル紙に包まれた物体。熱々だが……

「それは『落陽ニンニク』です。元気になれます」

 私の身体を気遣ってだろうか。ありがたい話である。早速一欠片。ガッツリ味はするのにニンニクの匂いが残らない。ホクホクとして食欲のない私でも丸ごと一つ食べてしまった。

「ありがとうドリアード。元気になれそうだ」

「ふふ、なら良かった」

 何やら含みのある笑みだが気にしない気にしない。

 と、夕食の時間が近い。まだ腹に余裕はある。みんなで楽しく晩餐と行こう。


——


「いただきます!」

 アイナ、ヴィルベル、小悪魔、リヴェラ、ドリアードが集まり晩餐へ。リヴェラが来たのは予想外だったが……賑やかなのはいい事だ。

 まず、突き出しに漆黒鶏の卵焼き。

 そして何品かのオードブル。

 次いで落陽タマネギのオニオンスープ。これは欠かせない。今日はニンニクが効いているようだ。これも美味い。

 更に魔岸牡蠣のソテー。ジューシーだ。

 ソルベは宵闇リンゴを贅沢に使った一品。

 肉料理はレアメタルワイバーンのステーキ、ガーリックソース。

 後に控えるは落陽山芋のフレッシュサラダ。さっぱりしている。

 そして幻魔チーズの登場。くどくなく、それでいて濃厚な味わい。

 デザートに宵闇イチジクのジュレ。

 最後に翡翠高山コーヒーとマカロン。

 いやぁ、満足だ。赤黒ワインを終始すすめられ、そぞろに飲んだせいか久々にふんわりしている。

「ん~、ふわふわ」

「あら、Dさん。酔ったんですか?」

「んにゃあ~まだ飲めるぞ~」

「ふふ」

「なっさけないのう。ほれ、もっと飲まんか!」

 すすめられるまま更に飲む。私としてはビールが欲しいが……いや、超年代物のワインを飲んで何を考えるか。

 と、晩餐室は宴会状態。乱れてるな。

「ん~、城主が許す! 宴会だぁ!」

 もう私も自制が効かない。注がれるがまま、ワインをあおる。ん? リヴェラが近くに寄ってきた。

「私も城主様と飲む……」

 その肌は赤い。クールな印象のリヴェラに似つかわしくないが……

「おお、そうかそうか! 飲もうか!」

 グラスをあわせてグイッと一杯。リヴェラも一気にいった。

「リヴェラ~、お酒強いのか~?」

「あんまり……でも城主様の前だから……」

 なんか可愛いな。リヴェラ。小柄さも相まって食べてしまいたい。

「ん~、リヴェラ~」

「ひゃっ……」

 リヴェラの肩に手を伸ばす。嫌がってはいない?

「そんな可愛い声出るんだね~」

「じ、城主様だから……」

「そうかそうか~! 嬉しいなぁ!」

 いい加減私も回っている。とまらない。

「よし!」

「わ、わわっ……!」

 リヴェラをお姫様抱っこし、立ち上がる。

「アイナ~、小悪魔~、手伝って~」

「はいはい。そんな千鳥足でお姫様抱っこなんて危険です。下ろしてあげて下さい」

「あい~」

「ほら、掴まって……よいしょっと」

 アイナと小悪魔に肩を支えられて、寝室へ向かう。うーん、ぐるぐる~

「うふ、作戦成功!」

「ですね!」

 そんな声が聞こえたが気にしない。ん、リヴェラもついてくる。なんだ?


―寝室

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※気になる方は作者まで

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