第23話 アラフォー、眠りの魔導錬金術師

「よし、アイナ、ヴィルベル、小悪魔。準備できたな」

「大丈夫です」

「問題ないのじゃ」

「いつでも!」

 さて、今日は城の西側にある大きな塔へ行く。みにでびるや妖精メイドでは開けられなかったらしい。何がいるのか分からない。万全を期していざ塔へ。


——

「ふーむ……『起こさないで』かぁ」

「ご丁寧に古代文字と魔族文字、龍族文字、神聖文字でも書いてあるのう……」

 張り紙には様々な文字で起こすなと書いてある。余程なのだろう。

「魔物の類なら我が説得できる。開けてしまうがよいぞ」

「じゃあいくよ……」

 扉に手をかける。意外にも簡単に開いた。

 中を見れば大図書館。塔のてっぺんまで本で埋め尽くされている。しかし人や魔物の気配はない。なんだここは?

「あ、Dさん。この本棚、カラクリですよ」

「ほう……」

 見た目にはただの本棚。しかし鑑定眼の前に看破されたようだ。

「うーん、あれをこっちにして、これを隅に置いて……」

 アイナが手際良く本を入れ替えていく。すると……

——ゴゴゴゴゴ

 本棚が動いた。奥へ続く通路に四人で入る。行き着いた先は……ベッドルーム? 天蓋付きのベッドに薄いピンクの服を着た女の子が眠っている。と、起き出した?

「……誰?」

 寝ぼけ眼で問いかけてくる。可愛らしい女の子だが放つ魔力が尋常ではない。答えを間違えれば殺される!?

「おお! リヴェラではないか! 久しいのう!」

 第一声はヴィルベル。知り合いなのか?

「ヴィルベル……? なんでここに……?」

 放つ魔力が小さくなる。チャンスだ。

「今我はこのDの僕じゃ。そしてDはこの城の新しい主じゃよ」

「新しい城主様……? ふーん……私はリヴェラ……この図書館の司書……」

 話を聞くとリヴェラはかなり昔から図書館を支配しているらしい。だが創建主は知らないようだ。曰く、必要ない記憶は消去している、とのこと。小悪魔も彼女の存在は知らなかったらしい。

「ヴィルベルは特別……私の極大魔法に打ち勝った……」

「あの魔法は凄かったのじゃ! 快感じゃったのう! もう一回撃ってくれんか?」

「無理……疲れる……」

 なにかとんでもないことが起きていたようだ。首を突っ込まないでおこう。

「ヴィルベルを従えるなら貴方も特別……私は魔導錬金術師……面白い魔術、錬金には興味ある……貴方の魔力、変わってる……研究の余地あり……開けておくからたまに来て……おやすみ……あ、これ見て……図書の案内……」

 一方的に言われてまたリヴェラは寝てしまった。起こしても得はないだろう。撤退だ。


——

「まさかリヴェラがいるとはのう。面白いこともあるものじゃ」

「うーん、城の留守を多少なりとも扱っていた私も知らない方だったとは」

「でも可愛かったですよ!」

「見た目は、の。齢は幾千を超えておる。当代の大賢者すらリヴェラには敵わんよ」

 リヴェラから預かった図書の案内。複数言語で記されている。私の魔法はこの世界の既存の魔法とは違うし使えない。役立つとすればアイナや小悪魔だろう。

 そういえば錬金もやっていると言っていた。百万年草が出来たら聞いてみるのも手だな。とにかく今は色々と拡張しなければ。資金繰りはオークションで、農作物はドリアードがマナポーションは生産エリアが作ってくれる。冒険もしつつ色々と情報を仕入れなければ。


——

 リヴェラの身長は112cm。

 人型のヴィルベルと同じくらい。

——

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