第五章

第16話 アラフォー、城を手に入れる

「おお……これはまた立派な」

 シャドウステップで山に登り城門の前に立つ。大昔からあるにしては上等だ。それに王都の城と比べても遥かに大きい。一種の迷宮とも言えるだろう。

「入ってみましょうか」

「我も気になるのう」

 金属の城門を開け、中空に張られた橋を渡り、とんでもなく広い敷地を抜けて城本体の門へ。大きな門だが小さな力で開く。不思議だ。

 中を見ると一転蜘蛛の巣城。雑然としていてホコリ高き城になっている。

「これは……住むにしても掃除が大変だな」

「ええ、こんなに広いと」

「闇の力が満ちておるのにもったいないのう……」

 探索しつつ辺りを観察する。破れている、という場所は少ないがやはりホコリ高い。

 と?

「アイナ、肩に何かいるぞ」

「ひゃっ! これは……妖精さん?」

「おおっ、闇妖精ではないか」

「妖精さん、どうしたの?」

 アイナが問いかけるが妖精は震えるだけで声が聞こえない。あ、そうだ。

「アイナは精霊契約ができるんだろう? そうすれば……」

「確かに……できるか不安ですがやってみます」

 術式を唱え、魔法陣を描く。事は淀みなく進み……

「ふあっ……ようやくこのお城に人が来てくれましたぁ」

 よし、妖精の声が聞こえてきた。色々聞きたい事はあるが……

「お城の事については小悪魔さんがよく知っていますぅ。ただ魔力不足で眠っているんですよね」

「ふむ……闇の力は満ちているが魔力はちと薄いのう。Dよ、小悪魔とやらに魔力を分けてやってはどうかの?」

「無論、そうするさ。アイナもいいか?」

「もちろん!」

 全会一致。妖精の案内を頼りに進む。だいぶと進み、質素なドアの前にたどり着いた。

——ガチャ

「ほう……」

 目の前にはメイド服を着た小悪魔が眠っている。美少女だ。とにかく魔力を分け与えないと。

「ダークインジェクション」

——

「ダークインジェクション」

 魔力などを分け与える闇の注射器。

——

 これでどうだ?

「んんっ……あれ? 貴方がたは?」

「小悪魔さん目覚めましたぁ! お久しぶりですぅ」

「妖精メイド長!」

「この方たちがお城に来て下さったんですぅ。小悪魔さん、案内をよろしくですぅ」

「それはそれは。大したおもてなしもできませんが……妖精メイド長が信頼するなら大丈夫でしょう」

 聞くにこの城、なんと何千、何万年以上前からあるのだという。創建はもはや誰なのか分からないくらいだそうだ。最初から城主などいなかったとすらされている。

「それにしてもだいぶと汚れてしまっていますね……」

「ギルドのクエストとしてこの城の探索と城の所有が報酬になっていた。先住がいるなら所有は難しいか?」

「いえいえ! むしろ貴方がたのような存在が城主になって下さるのなら嬉しい限りです! なかなかないんですよ、闇の力を行使できる存在って。それにヴィルベル様が住んで下さるとなれば……!」

「お? 我の力に気づくとはな。隠しておったんじゃが。凄いのう、小悪魔」

 長いこと生きてきただけのことはあるのだろうか。しかしこの広さを一人で掃除するとなるといつまでかかるんだ?

「ううむ……部下を呼べばササッと終わるんですが……」

「私もですぅ……」

 聞くに部下を呼ぶにはそれなりの魔力が必要となるらしい。私の魔力ではダメなのかと持ちかけたが足りないそうだ。ヴィルベルの魔力は強大過ぎて使えないときている。何か魔力を帯びた物……あっ。

「魔石は使えるか?」

「魔石なら最高の魔力供給源ですね」

「でもこっちではレアですぅ」

「いや、それがな。あるんだ」

——ドサッ

「うわぁ……凄い。高純度の物もありますね」

「魔石があれば妖精メイドは100でも1000でも呼び出せますぅ!」

「私の部下も100単位で呼べますね……量は使いますが」

「ならこれを好きなだけ使ってくれ。それで整備はできるか?」

「はい! 一日頂ければ!」

 よし、今日のところは引き上げよう。明日の夜にまた来ればいい。ギルドへの報告もあるしな。シャドウテレポートをマークして……完了っと。

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