第17話 アラフォー、新たに致す

 翌昼、街はお祭り騒ぎになっていた。デビルドラゴンを撃退したパーティが帰還したのだ。当然パレード状態。街のどこへ行ってもアイリたちの話題で持ちきりだ。ギルドもそれに追われて通常業務ができていない。アイリたちに一声かけたいところだが暫くは無理だろう。昼食を買いに出たというのに人混みのせいで上手く進めなかった。


 そして今は、というと……またしてもホテルで致している。私はパレードに興味はない。日光にさらされてずっと立っているなど御免こうむる。


——夜

「ふぅ……しこたま致したな」

「ん……いつもと違って新鮮でした~」

 さてさて用意をしようか。ヴィルベルを起こして……身支度身支度。今日の行き先はもちろん……

「城へ行くぞ」


——城、エントランス

「おおっ! これは」

 またしても城門を開け、中に入ると昨日の様子が嘘の様に綺麗になっている。どこをみてもピカピカだ。闇の灯りでうっすらと照らされているのもいい。

「あー! ご主人様だー!」

「どこどこー?」

 何やら聞こえる可愛らしい声。次第にその声は増えていって……


「「「「「お帰りなさいませ! ご主人様!」」」」」


 盛大に迎えられてしまった。そして囲まれた。そしてこの小さな子たちにしがみつかれている。私もアイナもヴィルベルも。

「わわっ、この子たちまさか」

「そのまさかじゃのう」


「こらー! ご主人様から離れなさーい!」

 小悪魔の声。なるほどなるほど。

「申し訳ありません。私の部下が失礼を」

「構わないよ。それより凄いな。本当に一日で終わっている」

「ええ。取り急ぎエントランスと寝室、その他よく使うであろう場所を整えました」

 手際がいい。よく見ると妖精メイドもあちこち巡回している。しかし、ここまでやってもらった以上なにか報酬が必要になるか? 思い立って聞いてみると小悪魔やその部下、妖精メイドたちはこの城の主に仕えることこそ至福であり対価は必要ないのだという。ありがたい話だが……

「とはいっても何かお返しがしたいな。欲しいものとかはないのか?」

「うーん……ずっとお城の主様が欲しいと願っていたので叶っているんですが……強いていうならその……魔力が欲しいです」

「それなら問題ない。ダークインジェクションで……」

——ベシベシッ!

「ぬぁ!? 何するんだ二人とも」

「Dさんは鈍感ですね……」

「全くお主というのは」

「は?」

「魔力補給と言ったら私たちが毎日致してるアレじゃないですか。小悪魔さんの顔見たら分かりますよ」

「お主は人間じゃから知らんじゃろうが小悪魔に魔力補給はアレが基本じゃ」

 小悪魔を見ると顔が真っ赤である。これはやらかしたな……

「しかし私は処女の血か眷族の血を吸わないことには機能が……」

——ベシッ!

「なんっ! アイナやけに強気だな」

「当たり前です! Dさんのは凄いんです! 小悪魔さんだって見抜いてますよ?」

「ご、ご主人様に私の処女……何回目かの処女ですけど捧げます……も、もちろん血だって」

女子おなごにここまで言わせとるんじゃ。腹を括れい」

 ぬぅ。やるしかない。アイナがノリノリなのが気にかかるが……ええい、ままよ! こうなったら徹底的にやってやる。小悪魔を抱えて寝室に一直線だ。


——朝

「ぐっ、ぐあああ……」

「わわわ、ご主人様大丈夫ですか?」

 結論からいうと小悪魔のそれは小悪魔ではなく悪魔だった。腰が痛いというのに止まらなくなるくらいには。血もアイナとは違う美味さがあった。だから漲った。しかし代償として腰が……

「とりあえずアイナ様をお呼びしますね!」

 駆けつけたアイナのマッサージを受けて多少回復。アイナもちょっと調子付け過ぎたと謝ってくれた。

 何故あんなにもノリノリだったのかと聞けば、私の良さを他の子にも知って欲しかったという。ましてその子がその気になっているのなら尚更だったらしい。

「ふふ……Dさんには眷族をいっぱい作って欲しいんです。それの方が元気になるでしょう?」

「確かにそれはそうだが……アイナは思うところとかないのか?」

「それは多少なりともありますけど、Dさんの一番は私だって信じてるので!」

 くぅ……いい子だ。そんな事を言われてしまっては一番以外にあり得なくなるではないか。

……とにかくも眷族が増えたおかげで日中の調子が少しよくなる。とは言ってもこの城にいる限りはずっと闇。調子は常によい。

 だが腰だけはなんとかならんか……!

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