第15話 アラフォー、ワイバーン討伐
「さあて、夜の森か」
森の入り口。確かにワイバーンの鳴き声らしきものが聞こえてくる。ブルーはC+、グリーンはB、レッドはB+の魔物だ。単体ならなんとかなるだろうが群れているとなれば脅威度はAかそれ以上だろう。グスタフ曰く、Sランク冒険者を派遣したかったが相次ぐドラゴンの出現によりそっちにSランクは行ってしまっているんだそうで。
「なぁヴィルベル、ドラゴン連中ってのはそんなに突然出てくるものなのか?」
「うーむ、偶然じゃろうな。運が悪いとしか言えんのう。それに出てくるのは魔界のドラゴンじゃ。天界や人間界のドラゴンは基本動かんでな」
「ふむ……」
森を探索しつつドラゴンの情報を聞く。ヴィルベルがいる限り魔界のドラゴンは基本話を聞いてくれる、というより闇のドラゴンは魔界でも頂点、その頂点の更に頂点にあるヴィルベルに牙を向けるなどできないらしい。
と、ワイバーンを発見。ブルーが3、グリーンが4、レッドが3か。迂闊に攻撃すれば混戦する。静かに死角からの一撃で一体ずつ倒していこう。
「シャドウステップ」
まずブルーの足元に接近。そして……
「ダークカーテン」
——
「ダークカーテン」
カーテンの範囲内で行われるあらゆる行為を隠蔽する。音も消す。
——
「いくぞ……散開!」
私はブラックマグナムを、アイナはキャノンロッドを、ヴィルベルは腕を龍化させての一撃。当然ブルー程度なら仕留め切れる。
「おおー、キャノンロッド凄い……」
魔力を込めなくてもここまでの大火力。それでいて反動は少ない。ロディアもなかなかに名工ではないのか?
その後も順調に仕留めていく。ただやはり群れの数が多い。全ては仕留められないか……? そろそろ切り上げて……ん?
「これは何だ?」
地面に落ちていたのは黒い紋章が描かれた布。妙な魔力を放っている。
「おおーそれじゃ。魔龍教団の紋章じゃ。コイツが悪さをしておったのか。どれ……」
ヴィルベルがフッと一息。すると魔力は霧散して消えた。
「奴ら闇の魔力でワイバーン共を集めておったか。しっかし下手な闇の魔力じゃ。粗悪過ぎる。これでは悪酔い必至じゃの」
「とにかくこれを証拠としてギルドに持っていこう」
「そろそろ朝ですからね」
早く戻ろう。報告は一休みしてからでいい。
——
「おはよう……アイナ」
「おはようございます……ってどうしたんですか? 顔色が」
「ああ……やってしまったらしい」
腰痛だ。気分が高まりすぎてガンガンやってしまったせいだな。歳を考えるべきだった。
「Dよ……災難じゃな」
「ま、マッサージしてあげますね!」
「た、頼む……」
痛い。とんでもなく。これはそろそろマイナスステータス「節々の痛み」が出そうだ。いや、マイナスステータスのあるなしに関わらず歳なんだから仕方ないか。
それにしてもアイナのマッサージは気持ちいい。一通り受けてダークチェーンをコルセット代わりにしつつ宿を出た。
「着いたな、ギルド」
「相変わらず盛況じゃなぁ」
「今日は一段と……あ、デビルドラゴン撃退の知らせがあったからですね」
「なにか変な気分がするのう……」
わいわいと賑やかなギルド内を抜けて受付にギルド長への取り次ぎを頼む。10分としない内に昨日の部屋へ案内された。
「ワイバーンはかなり討伐してきた。それから魔龍教団の痕跡についても入手している」
「おお……一晩でそこまで……感謝する。魔龍教団についてはやはりこちらが調査しよう。貴方がたの手を煩わせるのも申し訳ないし」
「そうか。では私たちは普通にクエストをこなすなりなんなりするよ」
手短に話を終わらせ部屋を後にする。さてこれからどうするか? AやA+の魔物討伐でもいいだろう。アイナのガンロッド運用を見る限り迷宮探索もいけるか? 弾は買い込んだしな。選択の幅は広いが……と、エントランスか。とにかくクエストボードを見て回るとしよう。
——30分後
「ふーむ、めぼしいクエストはこんな感じか」
「私もあまり良いのは見つけられませんでした」
「我もじゃ」
アークドラゴンの討伐、オークジェネラルの討伐、サミットハーブの採取……諸々あるが微妙だ。なんとも言えない。
……と?
「アイナ、そのボロボロの紙は?」
「あっ、これですか? 変なクエストだったので持ってきたんです」
見るに王都から北の山、そこに常に闇に包まれた奇妙な城が大昔からあるのだという。紙を見る限り誰も受けないのだろう。なにせ報酬がその常闇の城だからだ。誰も住んでいない城を放置するより誰がが住んでいる方がいいのだろう。ただ普通の冒険者としては無用の長物になる。
「面白いじゃないか」
「まさに一城の主になれるわけじゃな」
「やってみます?」
応えはイエスだ。早速受付に持っていくと変な目で見られたがまぁいいだろう。
夜に出発だ。
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