第14話 アラフォー、ジャンプアップ

 セレファニスタに帰り、ギルドでクエストを吟味する。だが良いものがない。高ランク帯のクエストはヴィルベルのランク不足で受けられないし私とアイナもCランク、受けられるとしてB+までだ。普段迷宮で狩っている魔物を考えると美味しくはない。

「ふーむ……ん? なんだあの看板?」

 ふと目についたのは「冒険者ランクジャンプアップチャンス!」と書かれた看板。書いてある文言がその通りなら……

「受付さん、あの看板なんだが……」

「あれですか? あれはたまに実施されるものなんです。実力はあるのにランクアップできていない方のためのものですよ。参加は自由、いつでも受付けています」

「ほう……」

「よいではないか! 我は参加したいぞ!」

「私も気になります」

 アイナ、ヴィルベルは乗り気だ。これならクエストの受注制限を突破できる。受けるとしよう。

「受けられるんですね。暫くお待ち下さい」

 どんな形式なのだろう。


——20分後

「ではこちらに」

 案内された先には大勢の冒険者が巨大な円形闘技台を囲んでいた。まさかとは思うが……

「ランクアップを求める冒険者よ! このバトルロイヤルで力を示せ!」

 私たちが挑むのはAランクへのジャンプアップ。当然周りは猛者揃いのバトルロイヤルになる。ダメージは軽減されるらしいが。

「全員闘技台に乗ったな? スタートだ!」

 一斉にかかってくる冒険者たち。ヴィルベルが弱いと見たか集団で殴り込んでくる。

「やれやれ我もなめられたものじゃな」

——ピンッ

——ドゴォッ!

 デコピン1発。かかってきた冒険者たちが宙に舞う。流石はデビルロードドラゴンだ。

 宙に浮いた冒険者を撃って場外へ弾き飛ばす。アイナも銃の使い方が様になってきた。

 そうこうしていると数も減ってくる。なんという事もなかった。迷宮で狩りしている時と変わらない。違うとすれば明るさゆえに私の魔法威力が低下しているくらいか。

……と、全部片付いたな。審判もなかなかに驚きを隠せていない。

「史上最速、しかも全滅……だと……」

「んん!? よく見たらDとアイナだ! あの鉱山の悪魔をたった二人、しかも一晩で狩ったという……」

 ちょっとは名を知られているようだ。ざわつく会場を後にして受付に戻る。その内呼び出しがくるだろう。


——

「D様、アイナ様、ヴィルベル様。ギルド長がお呼びですので来て頂けませんか?」

 受付から告げられたのはギルド長からの呼び出し。またメタラシアと同じ様な事だろうが……とにかくついていこう。


「急に呼び出してすまない。私はギルド王都本部長グスタフという。まずはこれを」

 ソファに座ってまず渡されたのは三人分のAランク冒険者タグ。ヴィルベルからすればすさまじいジャンプアップだ。

「さて……呼び出したのは他でもなく依頼の話でね」

 グスタフが言うに最近、ブルーワイバーン、グリーンワイバーン、レッドワイバーンが森で大暴れしているらしい。しかも複数個体が、である。

「ワイバーンは本来群れないはずだが?」

「それに私も困っていてね。おそらくデビルロードドラゴン出現の影響かとは思っているんだが……撃退されたとはいえ影響力は計り知れないということか……」

 どうやら王都の主要人物には撃退の知らせが届いているらしい。明日にも公表されるそうだ。

「ん……我の魔力はワイバーンなんぞに影響せんが……? あっ……」

「今、なんと……?」

「あっ、いやー、それは……」

 誤魔化しても仕方ない気がしてきた。ギルド長だし話してもいいだろう。

「ふう……デビルロードドラゴン、ヴィルベルは私の僕になっている。表向きは撃退という事になっているがな」

「デビルロードドラゴンを従えるとはにわかに信じがたいが……嘘は言っていないようだな。水晶に反応もない」

 この水晶、嘘発見器だったのか。下手に誤魔化さなくてよかった。

「その異常発生には心当たりがあるぞ? 確か400年前じゃったかな。我を信奉する集団が我に供物を捧げようと魔物を異常発生させた事がある」

「まさか……『魔龍教団』か!?」

「そんな名前じゃったかな? よく覚えておらんが馬鹿者の集団じゃよ。まだ生きておったか……懲りぬ奴らじゃのう」

「とにかくワイバーンは私たちが始末しよう。魔龍教団とやらも尻尾を掴めればなんとかする。アイナもそれでいいか?」

「はい。ヴィルベルも迷惑がっていますし」

 そうと決まれば話は早い。今からすぐに狩りにいこう。

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