第13話   葵と香奈

 羽鳥に付き合っていた女性がいるのは知っている。むしろ、羽鳥の年齢と性格と見た目で、年齢イコール彼女いない歴なわけがない。

 羽鳥とよく会って話すようになった頃にも、彼女がいた。その時の彼女が、昨日の失礼な女性だろうか。




「それって、本当に元カノなの?」

「多分?」

「なんで疑問形?」


 屋上に場所を移し、昨日の出来事を馨に話した。

 5月の朝の屋上は、陽射しが暖かく降り注ぎ、心地がいい。そんな中で、馨に話していると、苛立ちや混乱でグシャグシャになっていた頭の中が、だんだん整理されていった。


「今になって思い出してみれば、あの人が元カノだっていう確証はないのよね。付き合っていたとか、元カノだとかも、一言も言ってないもの。羽鳥に、その女性のことを聞いたけど、羽鳥も元カノ的なことは言わなかったわ」

「じゃあ、なんで元カノって思ったの?」

「態度と発言」


 元カノでなければ、何なんだろう。

 いきなり現れて、邪魔だと言って去って行くとは。


「元カノでなかったとして、あんな失礼な行動と発言をしてくる女って、どんな存在なんだろう」

「羽鳥さんは、なんて?」

「私が気にすることはないって。その女性は誰か分かるから、羽鳥の方でなんとかするって言われたわ」


 おそらく、あの女性は二度と私の前には現れない。なんとかすると言った以上、羽鳥はどうにかするだろう。


「気にすることはないって言われてもなぁ。気になるよな。そういうの」

「そうね。でも、私は羽鳥を信じることしか出来ないから」

「無理はしないようにね。葵は、変なところで我慢強いから。それに、僕には無理して隠そうとしなくていいから」


 屋上のフェンスにもたれながら馨が心配そうに、私の方を見る。小さい時から変わらない首を傾げながら、私を気にかける仕草と表情に、思わず顔が綻ぶ。


「ありがとう、馨。そう言ってもらえるだけで嬉しい」


 私は、大丈夫。

 羽鳥に、私に会いにきたこと話されるかもしれないのに。なんなら、私たちのことを知っていて、自分のことを話される可能性が高いことなんて想像がつくだろうに、あの女は、わざわざ名前を自分から名乗った。

 あえて名乗ったのかもしれない。羽鳥のことを信じているとはいえ、タチが悪い。

 だから、こちらも手を打った。こういうことには妙に冷静に頭が働く自分が嫌になる。


羽鳥は私の男なのだ。

私が、羽鳥のものであるように。

あの女には、渡さない。

そのためだったら、どんな手だって使う。



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更新遅くなりました!!曜日を勘違いしてました!!

仕事が忙しいいため、次の話から毎週土曜更新から、しばらく不定期更新になります。


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愛する人の、腕の中で眠りたい まほろ @lilysyusyu

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