ヤバい、恥ずい、居た堪れない!

うわうわっ。ウィリアムが甘~い!もう叫んじゃうよ、ほんと。僕が誘惑したあの外出日以降、ウィリアムは僕に凄い優しくなった。勿論前から優しかったとは思うけど…。


その、優しさの種類が違うっていうか。ウィリアムのお友達のケインさん曰くは、こんなウィリアムは見たことがないって言うんだ。僕は嬉しいけど、ちょっと困ってる。



「ハル、もっと食べないともたないぞ?」


そう言って僕の口元に小さく切った肉を差し出すのは、もうなんて言うか、公開処刑?公開プレイ?ていうか、ウィルはそんなキャラだったの?


僕は顔が熱くなるのを感じながら、ウィルが差し出す肉片を口に頬張った。ここで断っても、ウィルの悲しげな顔には僕が耐えられない。



でも、周囲のヒソヒソと噂される注目の的にも耐えられない。ずっと隠れゲイだった僕にしてみれば、絵に描いたようなイチャイチャで嬉しいはずなのにね…。


僕はひとつ席を空けて座っているケインさんに、視線で助けを求めるけれどケインさんは肩をすくめて諦め顔だ。


「…ハル?ハルはどうしてどうでも良いヤツを見てるのかな?」



僕は思わずウィルに懇願した。


「ウィリアムさん、僕もうお腹いっぱいです。それに、ちょっとみんなが見ていて恥ずかしいです。」


すると、ウィルは満面の笑みで言った。


「そっか、ハルは二人きりになりたいのかな?気づかなくって悪かったね。…それに私をウィリアムさんなんて呼んだお仕置きもしないといけないみたいだ。」


そう言って席を立ったウィルの顔が何だか怖い。



「おい、ウィリアム。午後の鍛錬には遅れるなよ。俺が誤魔化すにも限度があるからな?」


そんなケインさんの声に見送られて、僕はご機嫌なウィルに腕を掴まれて食堂を引きずられて行った。裏庭のガぜボは逢引にはピッタリの場所で、何処にでもこんな場所があるのだなと感心してしまう。


まるで恋人たちのために作った様な蔦の絡まるガゼボは、人の気配はしても、何をしているのかはわからないんだ。奥まった一つに連れ込まれた僕は、雄の顔を見せるウィルに抱き寄せられた。



「ハル?私の事はウィルと呼ぶ様に言った筈だろう?さっき食堂でウィルと呼ばなかったね。」


僕は直ぐに学習能力の高いところを見せつけた。ウィルの首に手を回すと自分からウィルにキスした。こうでもしないと、ウィルのお仕置きが暴走したら大変だ。


僕が無事に時間通りに仕事場へ辿り着けるかどうかは自分に掛かってるんだ。僕は唇を離すとにっこり微笑んで言った。


「ウィル。この呼び方は二人だけの時間にだけ使いたいんだけど…。だって恋人の時間の呼び方でしょ?今から恋人の時間だよね?ウィル。」


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