森を脱出

僕はお尻丸出しで馬に乗っている。しょうがない、こればっかりは。周囲からは見えないだろう。なぜかウィリアムが僕の後ろに乗ってるからね。


しかも僕が乗ってるのは、同期の新馬、栗毛だ。僕は乗る前に栗毛を撫でながら、周囲に聞こえない様に小さな声で囁いた。


『やあ、僕のこと分かる?…フォルだよ。重いけど一緒に乗せてね。後で人参貰ってあげるからね?』



栗毛は馬でもこんなに表情豊かなんだなと思わせるくらい、ギョッとした顔で、後ずさった。


『え?は?どういうこと?フォル?黒毛の?は?』


混乱している栗毛を押さえて、ウィリアムが僕を鞍に押し上げた。あ、僕のぷりけつが丸見えだ。そう言えば、僕は馬にはなった事があるけど、馬に乗った事が無い。



うーん、悪い予感だ。もしかして僕のぷりけつが真っ赤なお猿さん状態になってしまうのではないだろうか。僕がそんな心配をしていると、ウィリアムが僕に革でできたぺたんこの水袋を差し出して、鞍の上に敷く様に言ってきた。


少し水が入ってるみたいだから、さしずめウォーター座布団的なものになりそう。僕はウィリアムに言った。


「すみません。ありがとうございます。あの、僕両手を離せないので、僕のお尻の下に差し込んでもらえますか?」


そう言って僕がお尻を持ち上げて隙間を作ると、栗毛の横に立っていたウィリアムは一瞬固まっていたけれど、ぎこちなくその水袋を差し込んでくれた。



副指揮官の号令で僕たちは、例のモンスターが薙ぎ倒して出来た森の道を出口に向かって進んで行った。モンスターが突き刺さっている場所には、更に10人ほどの騎士たちが何か作業をしていた。


副指揮官はリーダーに残念そうに首を振って何か話をすると、僕の方を指差した。作業していた騎士たちが顔を上げて僕の方を見てきた。


僕がぺこりと頭を下げて愛想笑いをすると、ウィリアムが手綱を振るってゆっくりと歩き始めた。



すれ違う騎士たちはチラチラと僕の生足を見ていた。ああ、確かにどうなってるのかと思うよね。僕でもジロジロ見ちゃうと思うよ。僕はとりあえず笑顔を貼り付けると、時々会釈をしながら、騎士達の視線をかわした。


道を進みながら、僕は思いのほか馬上が揺れると思った。僕はさっきの泳ぎの疲れがどっと出て、まるでプールの授業の後の様に、急激な睡魔に襲われて目を閉じていた。

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