泉で見つけたもの

ほとんど変態的な僕をチラチラ見ながら、騎士達は何やら集まって話し合っている。僕は手持ち無沙汰になってしまって、話し合いが終わるまで、側の大きな石の上に座って泉を眺めていた。


しかしこの泉は不思議だ。こんな森の奥なのに、ここだけ開けていて別の場所の様に見える。岸からそう離れていない泉の中心には盛り上がった島の様なものがあって、そこには大きな木が生えていた。



僕にはそれが御神木の様に思えた。そうか、もしかしてここって神聖な場所だったのかな。僕、思いっきり魔物の汚い血を洗い流しちゃったけど…。


そんな事を思いながら御神木の根元を見るとも無しに見つめていると、何かキラリと光るものが引っ掛かっているのが見えた。あれ?あれって…。


僕は立ち上がって岸に寄って更に目を凝らした。やっぱりそうだ。



僕は居ても立っても居られなくなって、チラッと騎士達の方を見て呼びかけた。


「ちょっと待っててくださいね!」


そう言ってじゃぶじゃぶと島に向かって歩き出した。後ろで騎士たちが僕に何か呼びかけていたけれど、僕には目の前のアレが気になってそれどころじゃなかった。島まで3mほどになった時には僕は平泳ぎで近づいていた。



ようやくたどり着くと、僕はゆっくりと島に上陸して、木の根元で日差しを反射していたそれを拾い上げた。手の中には懐かしい僕のネックレスがあった。


大学入学の際、祖母に祖父の形見だと言われて貰った物だ。シルバーの長いチェーンに、洒落た蹄鉄デザインのチャームがついたこのネックレスを、僕は凄く気に入って毎日身につけていたんだ。



あの日、穴に落ちた時もつけていた筈だ。それがなぜここにあるのか、全然意味が分からない。でも僕は蹄鉄のデザインと僕の馬生活に何か関係があるかもしれないと首に掛けると、島から泉に飛び込んで岸に向かって泳ぎ戻った。


岸には、騎士たちが僕を待っていた。何だか皆、挙動不審だったけれど、ウィリアムが僕に近づいて来て、自分の上着を差し出して言った。


「…これを羽織りなさい。裸では森を抜けられない。」



僕はお礼を言いながら上着を羽織った時に気がついた。あ、僕のチン隠しが無い。僕、真っ裸に戻っちゃったよ。せっかく作ったのにね。


上着の留金が難しくて手こずっていたら、ウィリアムが手を伸ばしてパチパチとはめてくれた。僕はウィリアムを見上げながら、案外背が高いんだなと思った。馬目線と人間目線だとこんなに見え方が違うんだ。


留金をはめおわったウィリアムに、僕はにっこり笑って言った。



「ありがとうございます。人間さん?」

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