第15 話 ウィリアムと遭遇
パキリと枝を鳴らしながら現れたのは、僕のご主人様、ウィリアムだった!僕はびっくりしたのと嬉しさで、彼の元に飛び出していきそうになったけれど、ハタと思い直した。
今の僕は、フォルじゃない。僕は、清水春馬だ。ウィリアムにとっては、見知らぬ人間だ。しかもほとんど素っ裸の。ほぼ変態的な。…僕どうしたらいいんだろう。
ウィリアムは少し疲れた風で、泉に吸い寄せられる様に歩き寄ると、ひざまづいて水を掬って飲んだ。そして周囲を見渡すと、ハッとしたようにこちらに向かって歩いて来る。
僕はドキドキと心臓を震わせながら、どうしたものかと様子を伺っていた。ウィリアムは僕のすぐ側で立ち止まると地面から銀色のリボンを手に取った。
あれって…。馬だった時の僕のたてがみを団子にした時に飾られていたリボンだ。さっき髪を洗った時に外したんだった。多分水から上がった時に、身体にくっついていたのが地面に落ちたんだろう。
ウィリアムは周囲を何か探す様にキョロキョロし始めた。すると当然僕と目が合う訳で…。
「誰だ!出てこいっ。」
僕は何も良い考えが浮かばなかったので、観念してスゴスゴと木の影から出て行った。実際僕もこの泉にずっと居るわけにいかない。ここは森の奥には間違いなくて、人間の僕一人でここから森を抜け出すのは、絶対に無理だ。
ウィリアムは僕を唖然とした顔で上から下まで見下ろした。僕のチン隠しに目を留めた時間が長かったのは、奇妙過ぎたからだろうか?
「…君は、誰だ?何者だ?」
少し顔を赤らめたウィリアムは、それでも僕を警戒しながら尋ねた。
「…僕?僕は、ハルマ。シミズハルマです。」
ウィリアムがもっと尋ねようと口を開こうとした時、森から数人の騎士達がどやどやと騒がしく現れた。
「ウィリアム、フォルの形跡は見つかっ…たか。」
副指揮官と名前は知らないけれど、よく見る顔の騎士が二人、僕を見て呆然と立ち止まった。やっぱり、何だか皆の顔が赤らんでいる気がする。
美しい泉のほとりで、妙なチン隠しをつけた全裸の男と数人の騎士たちが見つめ合っている。非常にシュールな光景だ。僕は誰も言葉を発しないので、小さくため息をつくと、分かりやすく困っている表情を浮かべて言った。
「僕、シミズハルマと言います。あの、森を出たいのですが一緒に着いて行っても良いですか?」
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