第150話 ロゼッタ

 むちっ! むちっ! むちっ! むちっ!


 惚れ惚れするような肉体美の女戦士が道を歩いている。戦場では皆の精神的主柱になる程の屈強な女だが、戦争が終わった今はラフな格好をしていた。


 ノースリーブで薄手の生地を使ったトップスに、下は超短いショートパンツ姿だ。

 その内側から爆発しそうなムッチムチの肉体を無理やり押し込んでいるような姿に、道行く人が皆振り返ってしまう。


 それもそのはず。


 盛り上がった肩の三角筋や、パツパツに張った上腕二頭筋や、薄っすら浮かんだ腹筋も凄いのだが、人々が凝視しているのはそちらではない。


 シャツを弾け飛ばしそうに突き出た爆乳と、尻肉をはみ出させた巨尻のコンボに誰もが目を奪われる。

 帝国の全マニア男性が、いや、女性でさえも、一度は抱かれたいと夢にまで見る魅惑の恵体。


 それが帝国最強女戦士ロゼッタである。




「ふうっ、今日は暑いね。やっぱりカリンダノールは帝都より南にあるからかな」


 ロゼッタが隣を歩くナツキに声をかける。


「暑いですね。ロゼッタ姉さん」


 手の甲で汗をぬぐおうとして上げた腕により、ロゼッタの腋ががら空きだ。

 丁度ナツキの頭の位置に近くて、振り向いたナツキがモワッと熱気が漏れる腋を至近距離から見てしまった。


「くうぅ……ロゼッタさんがエッチ過ぎる」


 実はこのナツキ、初めてロゼッタと会ったその時から、この大きくてムッチムチな体に魅了されているのだ。

 汗で蒸れた恵体に圧し潰されそうになったあの時から。



「あっ、ごめん。臭うかな? 汗かいたから」

「い、いえ、ロゼッタさんは良い匂いです」

「ええっ、ダメダメ。腋を嗅いじゃダメだよ」

「そう言われると、もっと嗅ぎたくなっちゃいます。くんくん」

「ひゃああぁ! ナツキ君のエッチ♡」


 真昼間からヘンタイっぽくイチャイチャする二人だ。困ったカップルである。



 恥ずかしがるロゼッタだが、自分に懐いてるナツキが可愛くて仕方がないようで、ご期待に応えようとサービスを始めてしまう。


「きょ、今日は蒸れるね。汗でビチョビチョだよ」

 ぎゅっ、ぐむむむむっ――


 ロゼッタが両手を上げて腋を見せたまま胸を突き出す。

 本人はセクシーポーズのつもりなのだが、ロゼッタがやるとマッスルポージングのようにも見える。今日もデカくてキレキレだ。


「うあっ、上腕三頭筋と広背筋と大胸筋の完璧なバランスのよる腋の造形美。そしてド迫力のおっぱ……い。どうしたんだ最近のボクは。ロゼッタさんと付き合ってからというもの、どんどんエッチになっている気がするぞ。見ちゃダメだ。見ちゃダメだ。見ちゃダメだ。ああ、でもロゼッタさんの逞しい肉体を見てしまう」


「ほら、ナツキ君。好きに見て良いんだよ。私たちは愛し合っているんだからね」


「うわぁ……ロゼッタさん、そんなに胸や尻を強調しないでください。そ、そもそもロゼッタさんは露出し過ぎです。それじゃマミカお姉様より肌が出まくってます」


 ガァアアアアァァーン!


「ええぇえっ! マミカやクレアみたいな露出狂と一緒にされたぁ……。酷いよナツキ君」


 ショックを受けたロゼッタが、大きな体をクネクネして言う。


 マミカとクレアを露出狂扱いとは何気にディスっているように感じるが、実際にマミカは下着と間違われそうな個性的なファッションだったり、クレアは裸で街を歩くので反論できないだろう。


「違うんだよ。普通の服でも私が着るとこうなっちゃうんだ。ほら、サイズが小さいというか」


 ロゼッタが言うように、確かにシャツが伸び伸びでピチピチになっている。爆乳で持ち上げられ丈も短すぎだ。

 少し動けば乳がポロンと出そうな危険がある。


「こ、これは由々しき事態です。ボクの大切なお嫁さんが、服のサイズが合ってないなんて……」


「えっ、ナツキ君?」


「こ、このままだとロゼッタさんが裸で街を歩くヘンタイさんになっちゃう!」


「ならないよっ!」


 ヘンタイさんにされてロゼッタがツッコミを入れる。


「クレアちゃんも裸が大好きなヘンタイさんだけど、ボクは伝統文化を尊重してきました。で、でも、ボクのお嫁さんを他の男からジロジロ見られるのはイケナイ気がする」


「見せちゃダメだよ! く、クレアは真面目で品行方正なリーダーだと思ってたけど、どうしてヘンタイさんになちゃったんだろ。前はあんなじゃなかったのに」


「よし、ボクは決めました。今日はロゼッタさんに服をプレゼントします」


「えええっ! 私に?」


 そんなこんなで、ロゼッタの服をナツキが選ぶことになった。


 ◆ ◇ ◆




「ふんふんふぅーん♡ ふんふんっ♡」


 ひょんなことからプレゼントを貰えるようになり、ロゼッタが大喜びだ。今にもスキップのまま神速超跳躍走法ホリズンドライブしそうなほどに。


 商店街の女性用洋服店に入った二人は、所狭しと並んでいる服を選んでいる。


「この服可愛い。ロゼッタさんに似合いそう」

「うへへっ♡ それだと可愛すぎて私には似合わないよ」

「あっ、こっちも似合うかも。ロゼッタさんは何着ても似合いそう」

「もうっ、ナツキ君ったら♡ そんなに褒められると恥ずかしいよ♡」



 服を選んでいるナツキだが、ある衣装が目に留まり立ち止まる。


「こ、これは……」


 その衣装は服というよりも水着のようだ。極限まで生地を小さくしたビキニタイプの上下で、トップスは胸が零れそうな三角形状になっており、ボトムスはTバックで紐のようなパンツである。


「な、ナツキ君? 何でここで止まるの……」

「うーん、これはヤマトミコの同人誌で見たような?」


 悩んでいるナツキのところに女性店員がやってきた。


「お客様、お目が高いですね。これはヤマトミコ特産生地を使用したビキニアーマーでございます」


「び、ビキニアーマー!?」


「はい、長身女戦士に着せてイケナイコトを楽しむ仕様になっております。特に屈強な女性が着用し、年下の男子を踏んだり挟んだり……」


 女性店員の視線がロゼッタをチラチラと見る。有名人である領主ナツキと帝国大将軍ロゼッタなのは知っているのだろう。


「お客様、このビキニアーマーを着せたお連れ様のヒッププレス……受けてみてはどうですか?」


「ひ、ひひ、ヒッププレス!?」


 店員の生々しい説明を聞いたナツキが真っ赤になる。


「ドM向けにはヒッププレスですが、ドSのお客様にはくっころ・・・・プレイもよろしいかと」


「くっ、くっころ……どっちも凄くて選べないよ……。でも、今日はロゼッタさんに可愛い服をプレゼントしたいんです。ビキニアーマーは今度にします」


「そうですか。失礼いたしました」


 残念そうな顔をした店員が戻って行く。ついでにロゼッタまで残念そうな顔になった。きっとビキニアーマープレイをしたかったのだろう。




「この服とこっちの服が似合いそうです」


 色々見た結果、ナツキが可愛いタイプの服と大人っぽいタイプの服を選んだ。


「うわぁ、凄く素敵な服だね。うへへぇ♡ 私に似合うかな」

「大きいサイズもありました。試着してみましょうよ」

「う、うん。そうだね」



 試着室に入ろうとしたロゼッタだが、途中で何か思い出したような顔をする。


「そ、そうだ、ナツキ君、着替えるのを手伝ってよ」

「えっ、き、着替えるのをですか……」

「そうそう、帝国では男子が女子の着替えを手伝うんだよ」

「もしかして伝統文化ですか?」

「そ、そうとも言うかな?」

「ボク頑張ります!」


 やっぱりナツキが伝統文化を信じてしまう。ロゼッタとしてはイチャイチャしたいだけだったのだが、ナツキが勝手に勘違いしたようだ。



 ガサガサゴソゴソ――


 二人で試着室に入ったものの、ロゼッタが大き過ぎて二人が密着状態になる。


「ふ、ふんす♡ 何だか恥ずかしいね。ナツキ君♡」

「狭いです。姉さん……」

「フーッ♡ フーッ♡ 体が熱くなってきちゃったよ♡」

「わぁーっ! ロゼッタさん落ち着いて」


 密室で興奮したロゼッタをナツキが落ち着かせようとするが、何故かラッキードスケベしてしまうのがこの二人だ。

 バランスを崩したナツキを抱きしめようとしたロゼッタが、どうしてそうなるのかイケナイ体勢になってしまった。


 なお帝国に於いてラッキースケベとは、女子が男子にエッチなことをするものである。


 バタンッ! ドスン!


「お客様、大丈夫ですか?」


 大きな音にビックリした店員が試着室のカーテンを開けると、そこには逆さになって密着し絡まった二人の姿が――


「し、失礼しました。試着室でイケナイコトするなんて、さすが奇跡のエッチ勇者ナツキ様と、帝国乙女の鑑であるロゼッタ様ですね。これが上級者のヒッププレスプレイですか。素敵です」


 店員は誤解しているようだ。帝国の日常である。


「た、助けてぇ。潰れるぅ……ぐえっ」

「なな、ナツキ君、しっかりして」


 ナツキがロゼッタの巨尻で潰されそうになっている。これも通常運行だ。


 ◆ ◇ ◆




 城に戻ったロゼッタが早速ナツキが選んだ服を着てご満悦だ。


 今までは服装に無頓着だったのか、軍から支給された服装かサイズの合っていない普段着ばかりだった。

 しかし今は女の子らしいガーリー系のコーデである。


「うへへぇ♡ ナツキ君に服をプレゼントしてもらえるなんて嬉しいな。どうどう?」


「「「むっすぅぅーっ」」」


 ニッコニコではしゃぐロゼッタに対し、他の嫁たちがムスっとした顔になってしまう。


「もう一着は大人っぽいスーツなんだよ。二着で選んだのに、両方プレゼントしてくれるなんてナツキ君優しい。むふふぅ♡」


「ナツキぃ!」

「なっくんっ」

「はあ? どういうコトだし!」

「極刑……」


 一部の嫁から抗議の声が上がる。


「皆には今度プレゼントしますから」


 一見嫉妬深くて怖そうに見えるが、実際はチョロい嫁ばかりなので、ナツキの一声でデレデレするのは通常運行だ。


 ◆ ◇ ◆




 その夜――――


 コンコンコン!

「ナツキ君」


 ナツキの部屋にロゼッタがやって来た。


 ガチャ!

「ロゼッタさん、いらっしゃい……って、その恰好は!?」


 ナツキは目を疑った。目の前のロゼッタは店で見たビキニアーマーを着ているのだから。


「うへへっ♡ これ、こっそり買ってたんだよね。ナツキ君にご奉仕しようと思って」


「えっ、ええっ、ええええっ! ロゼッタさん、見えてます。色々見えちゃってます」


「見せてるんだよぉ♡ ビキニアーマープレイをしようと思ってね♡」


「あああぁ、ロゼッタさんのビキニアーマーが想像以上に凄い。凄過ぎて正視できないぃいいっ!」


 ヤマトミコの同人誌以上の破壊力だった。


「ほらほら、先ずはナツキ君をお仕置きしちゃうぞっ♡ ヒッププレスアタックだったっけ?」


「ちょ、ちょっと待ってください。それは危険な予感が……わっ、わぁああああぁああっ!」


 ナツキの頭の何倍もあるTバック巨尻が下りてくる。この恐怖はパンツァーティーゲルの超魔導砲より数段上だ。


「よぉーっし、行くよぉおおっ! どぉおおおーん!」

「たぁーすぅーけぇーてぇー! もがぁ……」


 ズキュゥゥゥゥーン! ズキュゥゥゥゥーン!


「昂ってきたぁああああ!」

「やっぱり逆効果だったぁああ!」


 このお嫁さんの恐ろしいところは、無敵の防御力と底なしの生命力を持つ最強女戦士なところである。

 更に無限の回復力と性欲まで併せ持つ帝国乙女なのだ。ナツキの姉喰いが効くには効くのだが、より彼女を昂らせて逆効果になりかねない。


「ナツキくぅううううーん♡ 大好きだよぉおおーぉ♡」

「ひぃいいいいっ! ボクしんじゃうかもぉ!」


 この後、滅茶苦茶イケナイコトした。

 無敵の女戦士と無敵の姉喰い勇者の戦いは朝まで続く。


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