第134話 ファーストキスはアストラルレボリューション

 シラユキの薄紅色のくちびるが迫る。まるで雪の中に咲いた花のように美しい。


「ナツキ、ちゅー♡」


 ちょっぴり変な掛け声でキスを迫るシラユキだが、その顔はこの世のものとは思えないほど幻想的な美しさだ。

 ポンコツだったり挙動不審だったりする彼女だが、黙っていれば超絶美形でクールな女なのである。


 こんな女の求愛を拒める男はいないとさえ思えるのだが、やっぱりナツキはちょっと他とは違うのだ。


「待ってください、シラユキお姉ちゃん」

「ダメ、待てないよ」

「ちょっと待って」


 ふにっ!

「ふぁ、ふぁてないふぉ……」


 ナツキに顔を押さえられシラユキが変顔になる。


「あの、後ろでお姉ちゃんたちが……」

「ふえっ?」


 ナツキに言われシラユキが後ろを向くと、怒りで殺気を帯びた姉妹シスターズが睨んでるのが見えた。


「んっ……みんな、怖い顔……ぐえっ」


 真っ先にマミカが動いてシラユキを羽交い絞めにする。


「ちょっとシラユキ! あんたアタシのナツキになにしてくれてんの! ナツキのファーストキスの相手はアタシだし!」


 そのマミカの言葉にフレイアが噛みつく。


「待て、ナツキ少年のファーストキスは私が貰おう。何しろ初めてナツキの彼女候補になったのは私だからな」


「アタシはナツキと一緒に旅してベッドを共にしたの! ふふぅん、女を知らないナツキに手取り足取り教えたのはアタシだしぃ! はい、残念でしたぁー」


「あんたねえ! 前から思ってたけど、マミカってナツキを独占し過ぎでしょ!」


「それはこっちのセリフだし!」


 シラユキと掴み合っていたはずのマミカが、今度はフレイアと取っ組み合いになる。ナツキを溺愛している女としては、どちらも譲れないのだろう。


「な、ナツキ君、彼女になったらOKなんだよね?」

「そ、そうですわ。恋人同士でしたら愛し合えるのですわよね?」


 他の姉が争っている間にロゼッタとクレアがナツキに抱きついた。こちらも危険な状態だ。



「皆さん落ち着いてください。喧嘩する人はキスしてあげません」


 ガァアアアアアアアアアアアアーン!

 ナツキの一言で皆が静かになった。これほど威力のある言葉は他にないだろう。


「確かにボクは言いました。最初は結婚するまでエッチはダメだったけど、お姉ちゃんたちに説得され恋人同士ならOKだと」


 ナツキの話を忠犬のように目を輝かせて聞く姉妹シスターズ。実に可愛らしい。


「い、いきなりエッチは無理だけど、き、きき……キスならします。ボクも、だ、大好きなお姉ちゃんたちとキスしたいです。ううっ、恥ずかしい……」


 きゅんっ♡ きゅんっ♡ きゅんっ♡ きゅんっ♡ きゅんっ♡ きゅんっ♡ きゅんっ♡


 真っ赤な顔で恥じらいながら話すナツキに、七人の彼女のハートがキュンキュンしまくっている。


「順番にキスします。任せてください、なるべく公平にしますから。でも、順番はじゃんけんでお願いします」


「「「ええええええええっ!」」」


 じゃんけんと聞いて皆が声を上げるが、戦って決める訳にも行かず渋々じゃんけんで決めることになる。負けられない女たちの戦いだ。


 ――――――――――――という訳で。じゃんけんの結果、一番マミカ、二番シラユキ、三番ネルネル、四番ロゼッタ、五番クレア、六番フレイア、七番レジーナと決まった。


「ちょっと、待ちなさいよマミカ! あんたスキルを使ったでしょ!」


 六番目になったフレイアがマミカに詰め寄る。


「ふーん、アタシが何かした証拠はあるのかしら? それに、じゃんけんでスキル使っちゃいけないルールは無いしぃ」


「ぐぬぬぬぬ――」


 何かしたかもしれないが証拠が無くて言い負かされた。

 ただ、最下位のレジーナの方が落ち込んでいるのだが。


「とほほ……おあずけ多過ぎでありますよ」



 そんな彼女たちの不満も予測済みなのか、ナツキは胸を張って言い切る。


「大丈夫です。公平にしますから。ボクに任せて」


 ファーストキスは大切だから頑張らないと――

 世間では気軽にキスする人もいるそうだけど、ボクは結婚を前提にしたいんだ。

 やっぱり気合を入れて誠心誠意キスしないとね。

 よぉーし! 頑張るぞぉ!


 毎度のことなのだが、ナツキが余計なことまで考えてしまう。普通にキスすれば良いはずなのに、わざわざ姉喰いスキルを使い空前絶後で超絶技巧ウルトラテクのキスをしようとするのだから。


 まあ、ナツキらしいのだが。



「マミカお姉様。自信を失いそうだったボクに、人の悪口に惑わされず自分を大事にすることを教えてくれた大切な人です。お姉様のおかげでボクは強くなれた。大好きです」


「ナツキぃ♡ アタシも大好きぃ♡」


 ナツキの告白でマミカが蕩けた。帝国内乱時、玉座の間で助けられた感動が甦る。


「んっ…………」

「んふぅ♡ ちゅっ、ナツキぃ~んっ♡」


 ついに口と口とが合わさった。


 ちゅっ、ちゅぱっ、ちゅぅ~っ!


 初めてなのにナツキのキスが激しい。まさかの舌をインである。


 何事にも努力家のナツキなのだ。全員が彼女だと宣言したその日から、こっそり帝国のイケナイ本でキスを勉強していたのだ。

 更にスキルで直接舌や口の粘膜から姉喰いを打ち込むというミラクルをやってのける。


『ボクはお姉さんたちを幸せにしたい。だから一生懸命頑張ります。姉喰いスキル合成分解再構築、高次元催淫革命のキッスアストラルレボリューション!』


 ズキュズキュズキュズキュキュキュゥゥゥゥーン!

「んひぃいいぅひぃぃぃぃ♡♡♡」


 ナツキがマミカの口から超強烈な姉喰いを打ち込んだ。当然ながら、その一撃でマミカの体がビックビクと痙攣し陥落してしまった。


「んっ、次はシラユキお姉ちゃんですね」


 魔神のようにつよつよのナツキがシラユキに迫る。


「あの……ナツキ? ちょっと待って」


 先程の超絶キスを見たシラユキが怯む。ムッツリだけど本番に弱いタイプだ。


「シラユキお姉ちゃん。いつもボクの知らないことを教えてくれる優しいお姉ちゃん。そんなシラユキお姉ちゃんが大好きです」


高次元催淫革命のキッスアストラルレボリューション!』

 ズキュズキュズキュズキュキュキュゥゥゥゥーン!


「んきゅぅぅぅぅふぁぁああああ~ん♡♡♡」


 強烈なナツキの愛情キッスでシラユキも陥落した。完全に目がハートマークだ。

 その後もナツキは次々と彼女たちにキスをする。



「ネルねぇ、たまに足で踏んだり臭いを嗅がせたりするお姉さんだけど。でも、本当は皆のことを考えている真面目な人なんですよね。そんなネルねぇが大好きです」


高次元催淫革命のキッスアストラルレボリューション!』

 ズキュズキュズキュズキュキュキュゥゥゥゥーン!


「ぐひゃぁああああああ~ん♡♡♡」



「ロゼッタ姉さん、強くて優しくて弱い人の盾となって戦うお姉さんが大好きです。ボクも、その強さと優しさを見習いたいです」


高次元催淫革命のキッスアストラルレボリューション!』

 ズキュズキュズキュズキュキュキュゥゥゥゥーン!


「むっはぁあぁはぁ~ん♡♡♡ みなぎってきたぁあ!」



「クレアちゃん……クレアちゃんは、すぐ裸になって困るけど。で、でも、クレアちゃんのあそ……が綺麗で忘れられない……。ああ、ボクは何を言っているんだ。クレアちゃんの全てが大好きです」


高次元催淫革命のキッスアストラルレボリューション!』

 ズキュズキュズキュズキュキュキュゥゥゥゥーン!


「はぁああぁん、極上ですわぁああああ~ん♡♡♡」



「フレイアさん」

「ちょ、ちょっと待ってナツキ。まだ心の準備が」

「待ちません」


 変なところで強引なナツキだ。


「フレイアさんはエッチで困ったお姉さんだけど、本当は人を傷つけたくない優しい人なんですよね。そ、その大きな胸や柔らかな体で抱きしめられるとおかしくなっちゃいそうで……。とにかくフレイアさんが大好きです」


高次元催淫革命のキッスアストラルレボリューション!』

 ズキュズキュズキュズキュキュキュゥゥゥゥーン!


「おっほぉおおおおおおぉ~ん♡♡♡」



「レジーナ、いつもふざけてばかりで困った人だけど、極東ではマミカさんたちを守ってくれたと聞きました。お仕置きやおあずけばかりだけど、ホントは照れ臭いというか……。と、とにかくレジーナ師匠は大好きです」


高次元催淫革命のキッスアストラルレボリューション!』

 ズキュズキュズキュズキュキュキュゥゥゥゥーン!


「ふおぉぉぉぉおおおおっ♡♡♡」



 七人全員にキスをして、その全員を蕩けさせてしまった。これで終わりかと思いきや、再びナツキがレジーナを抱き寄せる。


「ボクは公平にファーストキスをするって言いましたよね。今度は逆にレジーナさんからキスしますね」


「「「へっ?」」」


 超強烈な姉喰いキッスでフニャフニャの彼女たちが驚きの表情を浮かべる。一回で足腰が立たないくらいなのだ。こんな超強烈なキスを何度もされたら体が持たない。


「あっ、これ10セットやる予定ですので頑張りましょう」


「「「ええええええええええ!」」」


「これから二人きりの時は朝までキスしますけど、今日は10回で我慢してくださいね。ボク、彼氏として頑張ります!」


「「「ふえぇええええええええ~~~~!」」」


 ズキュズキュズキュゥゥゥゥーン! ズキュズキュズキュゥゥゥゥーン! ズキュズキュズキュズキュキュキュゥゥゥゥーン!


 この後、滅茶苦茶キスした――――





 本当にナツキは高次元催淫革命のキッスアストラルレボリューションを10セットやりきった。有言実行の男である。

 さすがにこれには精力絶大なロゼッタを含め全員が何度も何度も堕とされ失神してしまう。つよつよナツキだ。



「皆さん、これから末永くよろしくお願いしますね。ボクは付き合うとか初めてなので分からないことばかりだけど、ちゃんと彼氏として皆を幸せにしたいです。頑張ります」


 安らかな寝息を立てているようで実際は気絶している七人にナツキが語りかける。


「でも良いのかな? 彼女が七人ということは、結婚したら重婚になってしまう……」


 帝国は一夫多妻制が認められていない。どちらかというと逆ハーレムの女性は多いのだが。貞操逆転だけに。


「あっ、そうだ。アンナ様に頼んでみようかな?」


 恐れを知らないナツキは皇帝に重婚を認めさせようとする。ナツキの頼みなら聞いてくれそうではあるが。



「よし、決めました。ボクは全員お嫁さんにします。これから大好きなお姉ちゃんたちを幸せにできるよう、徹底的に容赦なく執拗にキスやお仕置きや、い、イケナイコトしちゃいますね!」


 つよつよ姉喰いモンスターのナツキがドヤ顔で宣言する。いつでも真面目で一生懸命で徹底的だ。

 愛しい彼女たちの身を焦がすような苦悶は、どこまでも続きそうである。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る