第110話 ナツキは一つ大人になり、クレアは再び裸になる!

 ナツキが率いる帝国軍10万が帝都西方にある都市ゼノグランデに入ろうとしていた。帝都にはユリアたちを守備隊として残し、フレイア、シラユキ、ロゼッタ、ネルネルの四人の大将軍も一緒だ。


 帝国兵10万は元気が有り余り暴走気味な若い女たちで編成されているが、ナツキたちは休み無しの強行軍である。

 今は一般兵に先行して少数の兵と共に馬車で移動していた。



「ナツキ、大丈夫? 少し寝た方が……」


 心配した顔のシラユキが声をかけた。帝都での戦闘を終えたばかりであるにもかかわらず、すぐに出発したナツキが心配なのだ。


「大丈夫です。もう街に入りますから」


「あまり無理しちゃダメよ。まだバベリンは先なのだから」

 気丈に振舞うナツキに、フレイアが優しく肩を抱いた。



 帝都ルーングラードの戦い終結時には、約10万ものゲルハースラント兵が捕虜となっていた。降伏したり逃げ遅れた者だ。

 残りの50万は這々ほうほうの体で逃げ出したのだが、途中で力尽き倒れる者が続出し、まだまだ捕虜は増えそうな勢いである。


 後の処理はユリアたちに任せ、すぐに動ける兵を掻き集め出発する。これ以上犠牲を増やしたくないナツキは、とにかく早く戦争を終わらせたいと思っていた。



 ゼノグランデ市街に入ると、そこは目を背けたくなる惨状であった。街は焼け焦げ建物は破壊され、焼け出された人々は傷付き身を寄せ合うようにして座り込んでいる。


「ひ、酷い……どうしてこんな……」


 ナツキが馬車から降り駆け出した。何が起きたのかさえ分からない顔をした子供のところに近寄ると、持っていた水を飲ませる。



「ゲルハースラント軍が侵攻した跡なんだナ。移送要塞パンツァーティーゲルを通す為に、きっと邪魔になった建物を破壊して行ったんだゾ」


 いつの間にかナツキの後ろに来たネルネルが言う。


 この分だと、ゼノグランデを守備していた帝国軍はパンツァーティーゲルの勢いに総崩れし、敵軍の侵攻を許してしまったのだろう。



「ボクが……もっと早く……ボクのせいで」

「それは違うわ、ナツキ!」


 崩れ落ちそうになるナツキに、フレイア声をかけた。


「どんな英雄でも全ての人を救うなんてできないのよ。全ての事象を把握して全ての人を救済するなんて神でさえ不可能なの。ナツキのせいじゃない」


「フレイアさん……」


「ナツキは良くやってる。ナツキのおかげで助かった人が大勢いるのだから。前の戦争を止めたのだって、今回の帝都やアレクシアグラードの戦いから街を救ったのだって、ナツキは数え切れないくらいの人の命を救ったのよ!」


 フレイアの言葉で、ナツキは崩れそうな体を立て直した。それと同時にアレクサンドラの言葉を思い出す。


『私の言った通りじゃ。人間の本質は悪! 人は戦争を求めておるのじゃ』

『攻められる前に攻めるのじゃ。敵は全て滅ぼしてしまえば良い。それが世の真理なのじゃ』

『見ものじゃな。後で吠え面かいても知らぬぞ』



 高笑いするかのようなアレクサンドラのイメージを振り払い、ナツキは呟く。


「確かに人の歴史は戦争の歴史だ……。大昔から何千年も戦い続けているのかもしれない。人は誰しも悪い心を持っているのかもしれない。それでも、多くの人は平和で優しい世界を望んでいるはずなんだ。誰かの勝手な欲や悪意で、多くの人を踏みにじって良いはずがないんだ!」


 ナツキの脳裏にあどけない顔をしたアンナ皇帝の顔が浮かぶ。


「そうだ! 一つの国が平和を望んでいても戦争を防げないのなら、世界中の国々が連携して助け合う仕組みを作れたのなら」


 ナツキの想像した仕組みはこうだ。

 世界主要国のトップが定期的に会談し、事前に争い事を避けるよう話し合い、時には複数の国で連携して軍事行動を止めさせる。国際的な連合体である。


「その為にはアンナ様だけでなく、ゲルハースラントの皇帝やヤマトミコの姫巫女にも協力をしてもらわないと……。そうだ、もし連携を拒むならボクがお仕置きして……」


 ここで考えが飛躍した。


 このままだとアンナやゲルトルーデや姫巫女が、少し鬼畜なナツキのお尻ペンペンのお仕置きを受けてしまいそうだ。

 まあ、アンナの分は、全てアリーナが鞭打たれる予定なのだが。



「まだ何も終わっていない。早く戦争を終わらせないと。立ち止まっているわけにはいかないんだ。ボクにできることをやらないと」


 ナツキが真っ直ぐ前を向く。お尻ペンペンは一先ずおいておき、早くバベリンに行き戦争を終結させるのだと一歩を踏み出した。


「皆さん、街の人を救助するのに一部軍を割りましょう。それから帝都に救援要請を。食料など支援物資を運ばせてください」


 ナツキがテキパキと指示を出す。命令を受けた騎士たちがすぐに動き出した。



「ボクたちも先を急ぎましょう」


 すっかり勇者らしく、一人前の男らしくなったナツキに、彼女候補のお姉さんたちが眩しい目で見つめている。

 散々堕とされまくってデレデレのはずなのに、ますますデレ度が進みナツキ無しでは生きられない体にされていそうだ。



 こうしてナツキたちは進軍を続け、国境を越えゲルハースラント領内へと入ることになる。


 ◆ ◇ ◆




 一方ヤマトミコ軍の上陸を許してしまった極東ルーテシアでは、大将軍と織田家臣団が対決している内に、着々と世界ヤマトミコ化計画が進んでいた。


 恐るべき速さで文化侵略が進み、何故か街中ではヤマトミコの恋愛戯画ラブコメ格闘戯画バトルマンガまで売り出す始末。

 ルーテシア帝国反体制派の工作活動は名も知られぬまま消滅し、逆にヤマトミコの工作にやり込められている形だ。


 これは揚羽の経済政策である楽市楽座を活用した、自由な経済活動を利用したからめ手である。揚羽が計画し、桐が実行していた。




 当初の進軍計画から文化侵略へと移行したのには理由があった。


 時間は少しさかのぼる――――


 ヤマトミコ艦隊旗艦超大型鉄甲船日輪丸にちりんまるの一室。ルーテシア帝国海軍を打ち破った揚羽は、一部の部下を部屋に呼び軍議を開いていた。


「である! ゲルハースラントが世界各地にスパイを送り込み各国の動向を調査しておるのだ。此度のフロレンティーナの話によると、すでに西側からゲルハースラントが侵攻しておるのだろう」


 揚羽がフロレンティーナから聞いた情報を説明する。これに対し、部下から意見を求めているのだ。


「揚羽様、これはゲルハースラントが我らを利用しているということです。古来より兵法の基本は兵力の集中と敵兵の分散。ルーテシア帝国の兵力を分散させ多数をもって少数を討つつもりかと。我らが極東で争っている隙に、栄えている西側を掠め取るつもりなのでしょう」


 明智桔梗ききょうが持論を述べる。


「ほう、きんか……桔梗もそう思うか」


 一瞬だけ金柑きんかんと言いそうになり慌てて言い直す揚羽だ。この桔梗、冷静沈着で大人しく見えるが、デコが広いのをネタにすると怖いのだ。

 謀反でも起こしそうなくらいに。



サルはどう思う?」


 揚羽に話を振られて、勢いよく桐が話し始めた。


「これは罠ですな。広大で東西に長い帝国の領土を戦いながら進めば、いつか必ず疲れ果てるというもの。仮に西側の帝都まで勝ち進んだとしても、連戦で疲弊ひへいした我らは、帝国主力部隊かゲルハースラントの大軍のどちらかと戦うことになるでござる」


 ケモミミっぽい髪型をピョコピョコさせ桐が話す。見た目はゆるキャラっぽいのに、これでも意外と策士なのだ。


「仮に我らが勝ち進み帝都近くまで進めたとしても、その頃には美味しいところは全てゲルハースラントに取られておるのやも。骨折り損のくたびれ儲けでござるな」


「なるほど……」

 揚羽が意外と綺麗な指をあごに当てる。


「それに、サドノシマ砲撃事件も我らをおびき寄せる罠であるならば、ゲルハースラントとルーテシアの工作員が繋がっているのか。それとも、ただの偶然か……。いずれにしても、我らが西へ侵攻するのは危険でござる」


 もちろん偶然である。


 現政権に不満のあるアレクサンドラ派の貴族たちが勝手に起こした内紛なのだが、見事に利用される形になっていた。



「ふむ、西方への進軍は止め、先に極東を取り込むのを急ぐか。極東を固めた後に力をたくわえ徳川軍と共に進軍すれば良かろう」

 揚羽の頭の中では結論が出たようである。


「よし! サル、おぬしは極東の街の経済を取り込め」

「ははぁ!」


 揚羽の命を受けた桐が大げさに頭を下げる。


「桔梗よ、おぬしは忍びを使いサドノシマ砲撃事件を起こした者どもを調べよ」

「はっ!」


 桔梗も平伏した。



 軍議が終わりかけたところで、桐が余計な噂話を漏らしてしまう。


「そういえば、ミーアオストクを守る大将軍とやらは、それは美しい女子おなごであると聞きましたぞ」


 ピキィィィィーン!

「何っ!」


 イスから立ち上がった揚羽がギラギラした目を光らせた。まるで獰猛な肉食獣……いや、肉食系乙女が獲物を狙うように。


「やはり計画は変更だ。先に城を落とす! 決定である!」


 こうしてマミカの美貌は揚羽に狙われることになった。優秀な部下も美しい側役も欲しいお年頃だ。

 そして現在に至る――――


 ◆ ◇ ◆




「嫌ですわぁああああ~ん♡」


 ミーアオストクの街中心部に設置された土俵どひょうを前に、相撲褌まわし姿のクレアが色っぽい声を上げている。


「こ、こんなの聞いていませんわ♡ 大勢の男性が見ている中で、ふんどし姿で戦うだなんて破廉恥ですわぁ♡ ああぁん♡ こんなのエッチ奴隷と同じですわよぉ~っ♡」


 訳あって再び裸になっているクレアが、多くの人の前で神に祝福されたかのような美しい肢体を晒している。


 学生時代からパンチラしまくり男にオカズを提供していた大人気クレアだが、ここにきて帝都だけでなく極東でもスッポンポンになりそうな気配である。






 ――――――――――――


 やっぱり裸になってしまうクレアちゃん。キミが一番輝いてるぞ!

 ふんどし姿でも無双するのだ。



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