第95話 もう結婚したい! 既成事実っぽく噂される二人

 フレイアの広範囲殲滅魔法が炸裂した。


 ヒュゥゥゥゥーッ! ドゴォ! ヒュゥゥゥゥーッ! ドゴォ! ヒュゥゥゥゥーッ! ドゴォ! ヒュゥゥゥゥーッ! ドゴォ! ゴボゴボゴボゴボゴボ!


 獄炎殲滅の地獄ギーラミスカリオーネ。冥界の門から召喚した超高温の球体が新型魔導兵器の手前に落ちた。まるで青白く光る超新星スーパーノヴァが落下するかのように。


 複数個落ちた超高温の球体により、大地が融解ゆうかいしグツグツと真っ赤に煮えたぎる。さながら目の前に地獄が顕現したかのようだ。




 目の前に起きた摩訶不思議な光景を茫然と眺めていたゲルハースラント兵だったが、地面がマグマのようにドロドロになり溢れたところでパニックになった。


「う、うわあああああああ!」

「に、逃げろ! 吞み込まれるぞ!」

「あああぁ! 熱い! 地獄だ!」

「魔王だ! 敵の女は魔王に違いない!」

「真紅の悪魔だぁああああっ!」


 ダダダダダダダダダダ! ズダダダダダダダダダダ! ズダダダダダダダダダダ!


 蜘蛛の子を散らすように一斉に逃げ出すゲルハースラント兵士たち。そもそも最初から、パンツァーティーゲルは別として、一般兵士がフレイアと戦えるはずもないのだから。


 そしてパンツァーティーゲルに乗っている上官も他人事ではない。


「ああっ、熱っ! なな、何だこれは!」


 騒ぎ出す指揮官に魔導兵器を操縦している兵士が答える。


「パンツァーティーゲル姿勢制御不能! 縮退機関圧力異常! ダメです、もう機体が持ちません!」


 そう言っている側から機体が傾き始めている。融解した地面に吞み込まれているのだ。


「うっ、うわああああああああっ!! に、逃げろぉおおおおおおおっ!」


 一人の兵士が機体の操縦を放棄しハッチから逃げ出すと、次々と我先にと兵士たちが逃げ始めた。


「「「うわあああああああ!」」」


「おい、逃げるな! 何をやっている! こら! わ、ワシも連れて行けぇええええ!」


 結局、指揮官も逃げ出した。皆、泣きそうな顔で鼻水や涎を垂らし、なりふり構わず這々ほうほうの体で敗走だ。



 ゴボボボボッ! グチャ! グボボッ! ドガグァアアァン! ズドォオオーン!


 マグマのようになった地面に傾いたパンツァーティーゲルが沈んでゆく。いくら超魔法防御を誇ろうとも、焼けた地面に沈めば何もできまい。



「ぎゃああああああ! 悪魔だぁ!」

「真紅の魔王が降臨したぁああああ!」

「もう帝国乙女はこりごりだぁああ!」

「こんな怖い女の国なんか真っ平ごめんだぜ!」

「恐ルーテシアだあああああああ!」


 兵士たち一人一人の心にトラウマを植え付け、ルーテシア帝国と炎の女大将軍の恐怖伝説を広める結果となる。


 もしかしたら、毎晩のように真紅の悪魔であるフレイアの夢を見てうなされる日々が続くかもしれない。それくらいの恐怖を植え付けてしまったのだから。




「ええええ……」

 余りの大破壊力に、ナツキまで茫然としていた。


「あぁぁーっはっはっはっは! 見たか、私の最強魔法を! しかと目に焼き付けて帰るがよい! これに恐れをなしたのなら、二度と攻めてくるでないぞ!」


 フレイアが高らかに言い放つ。とても、さっきまで泣きべそかいてナツキにしがみ付いていた女と同一人物には見えない。



「ふ、フレイアお姉さん、やりましたよ! ゲルハースラント軍が撤退していきます」


「やったわ、ナツキぃ! ナツキのおかげよ! もぉ、好き好き好きぃ♡ ちゅぅ~っ!」


 興奮したフレイアがナツキに抱きついてキスをしようとする。


「だ、ダメですって! キスはダメ」

「はぁ、はぁ、もうムリ♡ むちゅ♡」

「うわああっ! ダメって言ってるのに」


 必死に口をガードするナツキだが、昂ってしまったフレイアは止まらない。口がダメなら頬や首筋にと、キスの連打を繰り出してくる。


「んちゅ♡ ちゅぅ♡ ちゅっちゅっちゅっ♡」

「ダメなのにぃ……気持良くてもう負けそう……」

「いいよっ♡ 負けちゃって良いからぁ♡ ちゅっ♡」


 ムッチリと柔らかなフレイアの体に包まれ、敏感な首筋やうなじや耳元にキスされているのだ。こんなの男子なら誰でも耐えらるはずがない。

 しかも相手が滅茶苦茶美人で色っぽいお姉さんなのだから尚更だ。


「ほら、ナツキ、私と結婚しよ。ねっ、今すぐ結婚しよ。良いよね。私を選んでよ。それで毎日エッチするの♡」


「ああ……もうゴールインしちゃっても良いのかな……ボク、十分耐えたよね……こんなの我慢できないよ…………って、良くなぁぁぁぁーい!」


 危うくナツキが堕ちかけたが、すんでのところで思い留まった。


 まだ極東や帝都で戦っている姉たちがいるのだ。優しくしてくれたマミカたちの顔を想像すると、一人に決めて他の姉を振るなどできるはずがない。



「もうっ、まだ帝都が戦闘中なのにダメです! 悪いフレイアさんにはお仕置きスペシャルですよ!」


 ズキュズキュズッキュゥゥゥゥーン!

「おっほぉおおおおおおっ♡」


 密着したまま強烈な姉喰い振動波攻撃をくらってしまうフレイア。従来の姉喰いとは違い、より研鑽けんさんを重ね練り込まれた技だ。

 連続した姉喰い波動を一気に連射する姉堕ち奥義である。


「まったく、まだ戦いは終わってないのですから、そういうのは後にしてください! 言うこと聞かないお姉さんには恥ずかしいお仕置きしないと!」


 ペロッ!

 フレイアを四つん這いにさせると、スカートを捲り大きな尻を露出させる。そこに屈辱のスパンキングだ。


 ペチンペチンペチンペチンペチンペチンペチンペチンペチンペチンペチンペチンペチンペチンペチン――


「うごぉっ♡ おっ♡ ゆ、ゆるじでぇ♡ ナツキ少年の言うこと何でもききますからぁ♡ 一生従いますぅ♡」


「ホントですか? エッチなのはダメですよ。もう、油断するとすぐエッチなことするんだから」


 どっちがエッチなのか分からないが、ナツキはエッチな女フレイアに説教だ。もう連続姉堕ち技で、骨の髄まで……いや、魂の根源までナツキに躾けられてしまう。


「反省しましたか?」

「はひぃ♡ はぁ、反省っ、しま、しましたぁ♡」

「これに懲りたら……あっ、ついでにもっと躾けておこうかな?」

「ふひぃいいっ! き、鬼畜なナツキもしゅきぃ♡♡♡」


 この後、フレイアは滅茶苦茶躾けられた――――


 ◆ ◇ ◆




 ゲルハースラント軍を撃退した二人は、後退させていたアレクシアグラード防衛部隊のところまで戻った。


 兵士たちのところにも前線で炸裂したフレイアの広範囲殲滅魔法の光と音が届いていたようだ。二人の帰還を待っていた兵士たちが熱狂的に迎える。


「うぁああああああっ! さすがフレイア様だ!」

「きゃぁああああっ! 勇者ナツキ様ぁ♡」

「救国の英雄フレイア様とナツキ様、万歳!」


 大歓声が響き渡る。もし、この二人がいなかったら、部隊は全滅し新型魔導兵器の侵攻を許していただろう。そうなればアレクシアグラードは火に包まれ多くの者が亡くなっていたはずである。


 兵士らが熱狂するのも無理はない。

 しかし、中には逆侵攻を主張する意見も出始める。


「よし、このまま追撃して皆殺しにしろ!」

「ゲルハースラントに逆侵攻だ!」

「ヤツらを殲滅するわよ!」

「「「おおおおおおおおーっ!!」」」


 これにはナツキも止めに入る。せっかく被害を少なくしたのに、このまま戦闘を継続したら両軍に大きな被害がでるのは明白だろう。


「待ってください! 追撃なんてダメです。せっかく戦闘が終わったのに、そんなことしたら大きな被害が」


 兵士たちにはナツキの言葉は届かない。


「追撃して全滅させなければ、また攻めてくるぞ!」

「そうよ! 敵は全て殲滅よ!」

「そうだそうだぁああっ!」



 元々好戦的な帝国である。元老院議長が和平派に変わったからといって、そう簡単に国民性まで変わるものではないだろう。

 熱狂する人々の状況に、ナツキの心に悲しみが込み上げてきた。


「そ、そんな……こちらから侵略なんかしたら多くの人が犠牲に……。何で、何で争いが終わらないんだ……」


 話し合いで解決すれば、それに越したことはない。しかし、世の中はそう簡単には行かないのもナツキは知っている。こちらが話し合いの精神でも、敵が攻めて来れば殺されてしまう。

 戦争とは、どちらか一方が負け降参するまで続くものなのだから。


 それでも、ナツキは争いのない平和な世界を夢見ていた。



「黙らぬかっ!」

 その時、フレイアの一喝で兵士たちが静まり返った。


「馬鹿者! このまま無計画に敵国内に進行しては包囲殲滅されるのは我らであるぞ! 一旦街に帰還して補給だ! 私の命令に不服な者は前に出ろ!」


 シィィィィィィーン!


 誰も前に出る者はいない。恐怖の大将軍フレイアに逆らう愚か者など皆無だからだ。


 そのまま話を続けるフレイアだが、上半身の凛々しさとは裏腹に、下半身はピクピクプルプルと震えていた。


「このまま、あんっ、アレクシアグラードに帰還しぃ♡ あふっ、ほっ♡ ほきゅっ、補給を終えたらぁん♡ た、待機ぃ♡」


 フレイアの腰がビクンビクンと痙攣けいれんし、膝が笑うようにガックガクである。時々変な吐息や声を出していて、何とも色っぽい感じになってしまう。


 凛々しい顔で威厳を見せるフレイアだが、塹壕ざんごうの中で徹底的に躾けられ、もう完堕ち状態で立っているのがやっとなのだ。



「あんっ、フレイア様が……」

「もしかしてナツキ様とメイクラブ?」

「戦闘中でもイケナイコトするなんて、さすがフレイア様」

「まさに理想の帝国乙女ね!」


 一時は熱狂した兵士たちが暴走しそうになったが、どうやらナツキの姉喰いペンペンで別の熱狂になってしまったようだ。


「ナツキ様のエッチぃ♡」

「あのフレイア様を野外で……」

「とんでもないスケコマシね!」

「奇跡のエッチ勇者!」


 交戦的な雰囲気は解消されたが、代わりに女兵士たちをエッチな雰囲気にしてしまう。


「ううっ、ボク何もしていないのに……」


 無意識に姉を堕としているのに、何もしていないと主張するナツキ。彼にとっては不本意だが、エチエチ技で世界を平和にしているのは本当かもしれなかった。


 ――――――――――――






 凛々しく気高い女将軍フレイアなのに、部下の兵士たちの間では、年下男子に何度も何度も堕とされている女というイメージに。強がっているけどナツキにはよわよわなお姉ちゃん最高です。


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