第88話 愛と屈辱のお仕置き
ゲルハースラントの勢いは留まるところを知らず、フランシーヌに続き周辺国を次々と占領していった。
領土を広げ国力を上げた後に、かつてその地を支配していた帝国の嫡子を帝位に就けたのだ。
ここにゲルハースラント帝国の誕生である。
ゲルトルーデ・フォン・ローゼンベルク、それが彼女の名前だった。緩くカールした薄黄色の髪。くりっと大きな目には黄緑色の瞳。小柄なのに胸だけは大きなロリ巨乳の少女。
もうだいぶ昔に廃嫡となった皇帝の血筋の娘。
「あの、私は何をすれば……」
そう少女が呟く。
帝国宰相となったギュンターに無理やり利用され、まさかの初代ゲルハースラント皇帝にされてしまったのだ。戸惑うなと言う方が無理な話だろう。
「おい、貴様は私の命令通りにしていれば良いんだ。決して変なことは喋るなよ! しかし、本当にマインドコントロールは効いているのか? やっぱり怪しいな」
国民への演説を前にして、ギュンターは少女に最終確認をしている。彼のスキルでマインドコントロールされたまま台本通り喋らせる為に。
「あーあー、私、台本通りに演説します」
「よし、効いておるようだな」
「あーあー、おっぱいぷるんぷるん」
「それは本番で言うなよ」
若干、いやかなり不安ではあるが、二人は国民を前に演説に臨んだ。
帝都バベリンの宮殿前に詰めかけた多くの民衆の前に、ギュンターは少女を伴って現れた。すると、まるで人の海のように広場や道路を埋め尽くした人々から歓声が上がる。
「「「ウオォオオオオオオ!」」」
ギュンターが手を広げると民衆が固唾を呑んで静まり返った。
「何故、我々ゲルハースラントは優れた技術力を持っているにもかかわらず貧しかったのか!」
いきなり民衆に問いかけるような語り口だ。
「それは我らの血と汗と涙の金を吸い上げている国家や特権階級がいるからである!」
「「「ウォオオオオオオオオッ!」」」
再び大きな歓声が上がる。
「私は政治家になってから、この血税を吸い上げる特権階級共を尽く倒してきた。汚職政治家や売国奴は一網打尽にだ! 国を蝕む腐敗した政治家や官僚には鉄槌を与えねばならないのだ!」
「「「ウォオオオオオオオオッ!」」」
「私は止まらない! 次の標的は長年にわたり我が国を虐げてきたルーテシア帝国である。奴らが世界を搾取し続けるから我々の暮らしは苦しいのだ! 悪の帝国を倒し我々の富を取り戻せ! 私はここにルーテシア帝国に対して宣戦布告する! ジークライヒ! ジークゲルハースラント!」
「「「ウォオオオオオオオオッ! ジークライヒ! ジークゲルハースラント!」」」
熱狂した民衆が大声で叫び謳う。
これもギュンターのマインドコントロールである。民衆の心の隙を突き、日々の不安や不満を刺激する。そこにスキルを乗せた演説で一気に捲し立てれば、誰もが熱狂的に信じ込んでしまう。
こうして彼は政治の実権を握ったのだ。
「私はゲルハースラント皇帝の正当な後継者を探し出した。それがこちらのお方、ゲルトルーデ・フォン・ローゼンベルク様である。我が国を率いる女帝陛下だ!」
「「「ウォオオオオオオオオッ!」」」
「えーっと、ゲルトルーデです。ロリ巨乳のアイドル13歳。彼氏募集中です」
ゲルトルーデは適当に挨拶した。
「「「ウォオオオオオオオオッ!」」」
不満を代弁する政治家、外にある強大な敵、崇拝する対象。これにより民衆は団結し一気に対ルーテシア戦に傾いた。
ただ、崇拝の対象となっている少女は誰にも聞こえないように愚痴を漏らす。
「はぁ……これ、いつまでやらないとならないのです? 何で私がこんなことに……」
ただ静かに暮らしたいだけなのに、古い皇帝の血筋というだけで担ぎ上げられてしまったのだ。こんなものは望んでいなかった。
「ああぁ、もう疲れたです。もう敵の王子様と愛の逃避行でもしたいです。なんてね……ふふっ」
誰にも届かないように呟くゲルトルーデ。だが、後に自分でも信じられない愛の四角関係になるのは知らなかった。
◆ ◇ ◆
ヤマトミコ
ヤマトミコ海軍提督の
「揚羽様、いよいよですな」
巴が畏まる。
「うむ、であるな!」
揚羽が見つめる先には大海が広がっている。その先に巨大なルーテシア帝国が存在する。彼女の目は、遥か遠くの野望を見つめているようだ。
この出航には姫巫女も見送りに来ていた。意気揚々と出撃する女武者を、
「これで良かったのであろうか。ヤマトミコとルーテシアの国力は十倍はあると聞く。恐るべき強さの大将軍もおるようじゃ。もし、負けるようなことがあったら……」
不安を口にする姫巫女に、ゆったりとした口調で側近が答える。
「姫巫女様、戦のことは織田殿に任せておきましょう。きっと勝利してくれると信じて待ちましょうではありませんか」
「うむ、そうなのじゃが。何か、恐ろしいことが朕の身に起きそうな気がするのじゃ……」
ブルブルブル――
姫巫女が体を震わせる。
「何か、こう、とんでもない恥ずかしく身も心も熱く燃えるような何かが……」
そう言った姫巫女は両腕でギュッと体を包んだ。予知夢なのか虫の知らせなのかよく分からないが、とんでもなくエッチな目に遭いそうな気がしてならない。
ルーテシア皇帝、ゲルハースラント皇帝、そしてヤマトミコ姫巫女。この三人の少女による、熱く激しい身を焦がす戦いの始まりの予感が。
◆ ◇ ◆
この世界的な大戦の予兆に、ナツキの故郷であるデノア王国は揺れに揺れていた。ここ、王城で開かれた会議は紛糾しているのだ。
「こ、ここは勇者ナツキのいるルーテシア帝国に肩入れするのが得策かと」
大臣の一人がそう意見するが、これには批判が殺到する。
「何を言うか! もし帝国が負けたら、デノアまで敗戦国の憂き目に遭うではないか!」
これに反論する者が怒気を上げる。
「だったらゲルハースラントに付くと言うのか! あのようなフランシーヌを一方的に占領した国に味方すれば、我が国までどのようなことになるか!」
「でしたら中立ということですかな?」
「中立など、この軍隊もろくに機能していないデノアでは無理でしょうな。もし、敵が攻めてきたらどうするのです」
全く結論が出ない状況に、国王が口を開いた。
「うむ、皆の意見は分かった。ワシは聞く耳を持つ王じゃからな。ここは検討に検討を重ね、慎重に検討するということでどうじゃ」
「おおっ、さすが国王陛下。やはり検討ですな」
「なるほど、慎重に検討とは御見それしました」
「うむ、やはり慎重を期して検討でありますな」
「何かあれば遺憾の意で済ませば良いですからな」
こうして、デノア王国は慎重に検討するという結論になった。何も決定してはいないのだが、このぐだぐだぶりはデノアらしい。
◆ ◇ ◆
世界中が混乱するこの状況に、カリンダノールにいるナツキは帝都ルーングラードに向かう準備をしていた。
「せっかく平和になったと思ったのに、こんなに早く次の戦争になってしまうなんて……」
旅支度をしながらナツキは考えていた。
「こんなの間違ってる。力で他者を踏みにじったり従えたり。これじゃアレクサンドラさんの言った通りになってしまう。ボクが……ボクの力でどうにかなるか分からないけど……でも、ボクは助けたい。世界を救う勇者になるのが夢なんだから!」
ガチャ!
「ナツキ様、準備が整いました」
そこにグロリアが入ってきた。馬車の手配など万事万端に整えて。
「グロリアさん、ありがとうございます」
「こちらは私に任せてください」
グロリアの瞳が揺れる。
「あの、ナツキ様。お気をつけて……」
「はい」
頬を染めながらグロリアがナツキの前に行く。
「私……最初はエロ勇者の下で働くなんて最悪だと思っていたんです。でも、ナツキ様と共に仕事をさせていただき、私は考えを改めました。ナツキ様は真面目でお優しい方です」
「グロリアさん……」
グロリアの顔は、まるで恋する少女のようだが、色恋沙汰に疎いナツキは気付かない。いや、グロリア本人も気付いていないだろう。
「そうだ、忘れてた」
「何ですかナツキ様?」
「お仕置き、じゃなくご褒美です」
「は?」
ナツキの変なセリフで、それまで良い感じだったグロリアの表情が一変する。
「ほら、ボク言いましたよね。これからは仕事をした人にお仕置きするって。ボクも心苦しいのですが、やっぱり有言実行しないと示しがつかないと思って」
「へ?」
「グロリアさんが一番仕事をしましたからね。ボクは心を鬼にしてグロリアさんにお仕置きします! あっ、お仕置きじゃなくご褒美なのかな?」
意味不明なナツキの言動に、グロリアがハイライトの消えたような目になった。
「えいっ!」
「きゃっ」
ナツキがグロリアの小柄な体を抱き上げると、その小ぶりなお尻を高く上げさせる。屈辱的なワンワンスタイルにさせたグロリアのスカートを捲って下着の臀部を出すと、鬼畜な姉喰いお尻ペンペンを打ち込み始めた。
ペチンペチンペチンペチン――
「うっきゃぁ~ん♡ バカバカバカぁ!」
「これもルールです。帝都に行く前にしないと」
「はぁああああ~ん♡ この破廉恥クソガキぃ♡」
ペチンペチンペチンペチン――
ズキュゥゥゥゥーン! ズキュゥゥゥゥーン! ズキュゥゥゥゥーン! ズキュゥゥゥゥーン!
「あっ♡ んあぁん♡ おっ、んんっくぁ♡ な、ナツキ様のばかぁ~っ! ひぐぅ♡ もう知りませぇん♡ うきゅぅぅぅ~っ♡」
ずっと年下の少年に屈辱的なお仕置きをされてしまう。しかも変な理由で。
こうして清純派で潔癖なグロリアは、無意識にエロいことをするナツキに身も心も堕とされてしまう。ただ、どんなに堕とされても表面的には屈しないのだが。
せっかくナツキのことを見直していたグロリアだが、やっぱりドスケベエロ勇者のクソガキだと認識を新たにしたのだった。
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