第81話 もう爆発寸前
あれからというもの、女家令の様子がおかしい。妙にチラチラとナツキを見たりしたかと思えば、今度はツーンと無視するかのように無口になる。
まさに、グロリア心と秋の空である。
そして今もだ。ナツキと執務室で打ち合わせしている間にも、何やら情緒不安定なグロリアだった。
「ありがとうございますグロリアさん。このまま進めてください」
グロリアから書類を見せられナツキが指示を出す。まあ、ナツキは難しい公文書や見積書など分からないので彼女にお任せだが。
「はい、分かりました。そのように進めます」
ツンッ!
気難しい顔をしたグロリアが事務的に話をして顔を背けてしまう。そうかと思えば、ナツキの方をチラ見したりするのだ。
これではナツキも気になって仕方がない。
「ふうっ……」
慣れない事務仕事で疲れたナツキが肩を回す。
丁度そこにドアを開けロゼッタが入ってきた。
ガチャ!
「ナツキ君、仕事は終わったかい?」
入室して開口一番ロゼッタが言う。実はナツキと遊びたくて部屋の前を行ったり来たりしていたのだ。
「はい、ちょっと休憩しようと思ったところです」
笑顔でナツキが返事すると、ロゼッタは子供のような無邪気な顔になった。笑顔は無邪気だが、下半身は大人な感じで。
「ナツキ君、疲れているみたいだね。ほらほら、姉さんが肩を揉んであげるよ」
「良いんですか? じゃあお願いしようかな」
ソファーに座ったナツキが背中を向けると、ロゼッタは体を掴んで持ち上げギュッと抱きしめてしまう。そのままナツキを膝の上に乗せるようにしてソファーに座った。
まるで男女が背面座位的な何かでイケナイコトしているみたいだが、この場合は男女逆だ。ロゼッタの体が大き過ぎて、ナツキは包み込まれているように見える。
「あ、あの、ロゼッタ姉さん、あ、当たってます」
「ふんすっ! 大丈夫だよ」
「大丈夫じゃないです。ああっ、凄く柔らかい」
まるで肉に包まれるような感覚だ。爆乳巨尻で太もももムッチリムチムチなロゼッタなのだ。太ももクッションの感覚も凄いが、背中に当たる柔らかな弾力もたまらない。
「ほら、肩から始めるよ」
もみもみもみもみ――
「ふはぁ、ああっ、き、気持ち良いいけど色々当たってダメかも。くううっ、うあぁ……」
当たっているのではなく当てているのだ。最近ナツキとのスキンシップが足りないロゼッタとしては、一分一秒でも長く密着していたいのだから。
有り余る性欲を持て余したロゼッタは、ナツキにお腹ポンポンだけで焦らされて、もう色々と我慢の限界に達していた。ちょっと過激にイチャイチャするのは許して欲しいところだろう。
「ふんす、ふんす! な、ナツキ君♡ なんて美味しそうなんだ♡ も、もう食べちゃいたいよ♡」
「くああぁ、ダメです……そんなに触られたら。まだ付き合うまでエッチは禁止なのにぃ」
「はぁはぁはぁ、も、もう彼女みたいなもんだよ。チョットだけ、チョットで良いからさ。そうだ、キスしようよ」
密着していることで更に欲情したのか、ロゼッタの鼻息が荒い。もうブチュっとキスしてしまいそうだ。
「ちゅー♡」
「だ、ダメです」
「じゃあ、〇〇にちゅー♡」
「もっとダメですよ」
バンッ!
ロゼッタがイケナイところにキスしそうになったところで、遂にグロリアがブチ切れた。
「いい加減にしてください! まだ仕事中です。ひ、人前で、ええ、エッチなことするなんて、ふ、不潔です! この破廉恥勇者!」
「ええぇ……ボクじゃないのに」
エッチなことをしようとしていたのはロゼッタなのに、何故かナツキが怒られてしまう。グロリアの機嫌が悪いようだ。
「いいえ、ナツキ様が悪いです。何かこう、ナツキ様から女性を誘惑する悪いオーラが出ているんです! きっとそうです! ナツキ様のエッチ、変態、破廉恥!」
「そんなぁ……」
グロリアに色々言われてナツキがしょんぼりする。姉喰いスキルは出していないのに、何か他に出ているのかとキョロキョロした。
一方、ちょっとキツい言い方をしてしまったグロリアだが、何やら独り言をブツブツ続けているようだ。
「ああぁ、やっぱり私もおかしいわ。ナツキ様のエッチオーラに影響されているのかしら。昨夜も一人でイケナイコトしそうになってしまうし……。くぅうっ、不潔だわ……。わ、私としたことが。ああ、助けてもらったお礼を言いたいのに、エッチなことばかり頭に浮かんで素直になれないのです。それに、ナツキ様が女性と一緒にいるのを見ると、何やらイライラして落ち着かないわ。どうしたら……」
そんなグロリアは放置気味で、ロゼッタのイチャイチャは止まらない。
「ふんすふんすっ! な、ナツキ君♡ す、ストレッチとかしないかい? こう肌と肌を密着させて大人の……じゃなかった、健全な体操だよ」
ベタベタと触りまくって健全には見えないのだが、ロゼッタはナツキとストレッチしたいようだ。
「健全ですか? 本当に? エッチなのはダメですよ」
ナツキは半信半疑だ。帝国騎士としてのロゼッタは尊敬しているナツキだが、ベッドでのロゼッタには性欲全開で信用が無かった。
「ほら、これを着るんだよ」
そう言ってロゼッタが懐からストレッチ素材のシャツを出した。体にピッタリフィットするタイツみたいだ。
「それは?」
ナツキが不思議がっていると、その場でロゼッタが脱ぎだした。
「ちょ、脱がないでください! 伝統文化はお風呂とベッドとヌーディストビーチだけです」
シュルシュル――
ナツキが目を逸らした一瞬で着替えが終わっていた。この恵体女、足も速いが着替えも速いようだ。
「よし、これで完了だよ」
ただでさえムッチリしているロゼッタが、上半身タイツみたいな恰好になってしまった。体のラインがバッチリ出ていて目のやり場に困る。
「ううっ、直視できない……」
「ナツキ君、ストレッチしようか」
「どうやるんですか?」
「このシャツの中にナツキ君が一緒に入ってだね」
何をするのかとナツキが油断していると、ロゼッタが自分の着ているシャツの中にナツキを入れようとする。ストレッチシャツの中で密着しようとする魂胆か。
「ちょ、なな、何するんですかぁロゼッタ姉さん! それストレッチじゃないです!」
「何を言っているんだいナツキ君♡ このシャツがストレッチ素材じゃないか。さあレッツストレェエーッチ♡」
「うぁああああっ! それ、ボクの知ってるストレッチじゃない!」
違うストレッチだった――――
「あああぁ~っ! もうダメだぁ。姉さんの柔らかな体に埋もれてイケナイコトしちゃう~っ!」
色々とアウトになりそうなその時、妄想の世界から戻ってきたグロリアが大激怒した。
「ちょ、ちょ、ちょっと、何してるんですかぁぁぁぁ! この破廉恥ぃいいいいっ!」
案の定ロゼッタが暴走してしまいグロリアの説教タイムになった。
「もうっ、私が目を離すとすぐエッチなことしようとするんですから! このエロエロドスケベ勇者ぁ!」
ナツキとロゼッタが二人して正座している。
「ロゼッタ様もです。いくらナツキ様のエッチオーラに影響されているとはいえ、タイツの中で密着だなんて……。あんな羨まし……じゃない、いやらしいことをするなんて」
遂にロゼッタにまで矛先が向いてしまう。
「でもグロリア、これは違うんだよ。私はナツキ君の彼女候補。つまり彼女と言っても良いはずなんだ。愛を確かめ合うイケナイコトはイイコトなんだよ。それに帝国ではナツキ君の年齢は結婚できるし」
※帝国の法律ではナツキは合法です。
法を盾に取られてはグロリアに反論の余地は無い。これではまるで、ナツキがロゼッタとイチャイチャしているのを妬いているみたいだ。
「お、お言葉ですがロゼッタ様。た、確かに帝国では合法かもしれませんが、人前でエッチなことするのは問題だと思います。それに、アリーナ議長から再三にわたって帰還命令が出ているのに、いつまでここに居るおつもりですか」
嫉妬しているように見えるのを気にしたのか、グロリアは話しを逸らした。
「そろそろ帝都に戻らないとならないのは十分承知しているのだけど、誰かが先に戻ると他の
「大将軍の皆様が全員同時に戻ればよろしいじゃありませんか」
「それだと、ここに残ったグロリアやマリーがエッチしちゃうかもしれないだろ」
「ししししし、しません! 私は、え、エッチなんかしません! 破廉恥なぁああっ!」
全力で否定するグロリアだが、ナツキに生乳揉まれてからというもの、度々エッチな気分になっているのだ。ナツキと二人っきりにでもなったら、自分まで破廉恥してしまいそうで自信がない。
「ロゼッタ姉さん、グロリアさんは真面目な人ですからイケナイコトしないですよ」
ナツキが庇ってくれるようだ。
「そ、その通りです。女性は結婚するまで純潔を守るべきだと思っていますから」
グロリアがナツキみたいなことを言う。似てないようで似ている二人だ。
「ですよね、グロリアさん。ボクは一緒に街を視察して気付いたんです。グロリアさんは本当に素晴らしい人だって」
「えっ、ナツキ様……」
「ちょっと厳しいところもあるけど、本当に街の人や国民のことを考えている人なんです。ボクは帝国文化については尊重しますけど、グロリアさんの考えも同じように尊重します」
「ああぁ、ナツキ様がそんな風に思ってくださっていたとは。私、嬉しいです」
ナツキに褒められてグロリアがご満悦だ。エロい女が多い貞操逆転帝国に於いて、やっと自分を理解してくれる人が現れたのだと感激している。
「そうです! 私は大将軍の皆様のように情婦になったりしません。たとえナツキ様のエロオーラに侵されようとも。私は自分を律していますので。性欲で我を忘れるなど恥ずべき行為です。真に気高き女性とは、たとえエッチな気持ちにされたとしても決して自分を保てなくなったりはしません!」
何かのフラグのようなことをグロリアが言い出した。もう、何も無いのを祈るばかりだ。
「ホントかなぁ?」
半信半疑の顔をしているロゼッタが呟く。
「本当です。嘘だと思うのでしたらエロオーラを打ち込んでみてください」
「姉喰いスキルでも耐えられるのかな?」
「アネクイだかアネモネだか知りませんが、どんとこいです」
特にやれと言っているわけでもないロゼッタの呟きだったのだが、勝手にグロリアがやる気になってしまった。
姉系女性にしか効かないナツキの姉喰い。果たして年上だけど見た目は幼く見えるグロリアに効果はあるのだろうか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます