第75話 人前で羞恥プレイさせられる大将軍
ナツキ邸のリビングは完全に修羅場と化していた。ちょっとお高い革張りソファーに座る女たち。ナツキを狙う女たちの戦いが勃発してしまったのだ。
先頭はもちろんこの人。大本命、彼女候補二号にして帝国大将軍シラユキ・スノーホワイト。煌く新雪のような銀髪と
大きく離され二番手につけるのは幼馴染ミア・フォスター。メスガキっぽい顔の、生意気な雰囲気の小娘だ。幼年学校では人気があるようだが、大人の色気には遠く及ばない。
更に大きく離され三番手はイケナイ女教師マリー24歳彼氏いない歴イコール年齢。素材は悪くないのだが、ガチに気合が入ったメイクと、若い男を狙う飢えた肉食獣のような眼光がマイナスポイントだ。
今ここに、ナツキを巡る戦いの火ぶたが切られた。
「それで、この子娘は誰?」
声で相手を凍り付かせそうなシラユキが言葉を発した。特に魔力は込めていないのに、部屋の空気が10度ほど下がったように感じる。
「あ、あたしはナツキの幼馴染ですけど」
ミアが無い胸を張り精一杯の勇気を振り絞って向かい合う。
ナツキに会いにきたのに、部屋の中には帝国大将軍と女教師がいて若干パニック気味である。
「ふっ、幼馴染は負けヒロイン」
「はあ? ま、負けてませんけど」
「私はナツキの彼女候補。実質彼女みたいなもの」
「あ、あなたのような悪い大人にナツキは渡しません」
「くっ……やっぱり極刑」
相変わらずナツキ以外にはコミュ障が発動しているのか言葉が少ないシラユキ。短絡的に極刑にしようとする。
「お、脅しても無駄です。あなたみたいな超綺麗だけど怖い女なんかにナツキは任せられません。あたしが面倒を見ます。そ、そりゃ……ビッグサイズはちょっと怖いけど……」
圧倒的強者であるシラユキにも反論するミアだが、ナツキのビッグサイズは怖いようだ。因みに何がビッグなのかは分からない。
「ミア、その辺で。シラユキお姉ちゃんは悪い人じゃないよ」
ビッグサイズは完全スルーしたナツキが声をかけた。
「あんたは黙ってて! ちょっとアレが大きいからって、色んな女としちゃうなんてナツキのバカっ! エッチ! スケベ! 変態!」
「えええ……」
エッチはしていないので、多分ミアが誤解しているはずだ。だが、帝国文化に染まってポンポンやペンペンしているナツキは反論できない。ちょっとだけエッチに思い当たるところがあるので。
冷静に考えてみると、女子と添い寝したり抱き合ったり、『あーん』で食べさせ合ったりしていた。幼年学校時代では考えられないエチエチぶりだ。
因みにナツキも、何がビッグなのかは分からないままだが。
「あ、あの、私もナツキ君の秘書に永久就職を……」
小声になったマリーが控え目に言う。
メイクもバッチリ、勝負下着までつけてきたのに、修羅場に巻き込まれて出番がない状態だった。
「キッ!」
シラユキの目が更に鋭くなる。
幼馴染ヒロインだけでも許せないのに、女教師がお手付きしようなど言語道断だ。
「ナツキを狙う女は徹底排除。即ち極刑! この世は弱肉強食、女狐には死あるのみ――うきゅっ!」
視線で人を殺しそうなシラユキが暴言を吐いたところで、ナツキのお仕置きが炸裂した。
ペチペチペチペチ!
「お姉ちゃん! 冗談でもそんなこと言っちゃダメでしょ。ホントはシラユキお姉ちゃんも仲良くしたいんですよね?」
ペチペチペチペチ!
ナツキはシラユキを自分の方に寄せると、膝に彼女の上半身を乗せた。そのまま尻を高く上げさせ、プリッと締まったシラユキのケツ目掛けて手のひらを打ち付ける。
これぞ、姉を躾ける容赦ない羞恥技、お尻ペンペンである。
ペチペチペチペチ!
「ほら、お姉ちゃん、反省しましたか?」
「はぁああぁん♡ 許してぇ♡ こんな人前でぇ♡ ごめんなさいぃ! ホントは極刑だなんて思ってませんっ! ちょっと言ってみただけなのぉ♡ ダメぇ……でも、ちょっと至福♡」
敏感なケツに何度もナツキの手がヒットして、シラユキは人前なのに堕とされてしまいそうだ。ライバル女に見られながらの完堕ち。彼女にとっては恥ずかしいのも至福の時間だった。
ペチペチペチペチ!
「んんっああっ♡ おっ、おほっ♡ もう許してぇ!」
完璧な脚線美を描くシラユキの脚がジタバタと揺れる。程よい肉付きとムッチリさで、誰もが憧れる魅惑の脚や尻が容赦なく躾けられる。
今やシラユキは、ナツキに弄ばれてされるがままだ。
これには大将軍を恐れていたミアやマリーも
「ええええっ! あの恐怖の大将軍シラユキさんが……キャラが変わっちゃってるし。な、ナツキ……ホントにシラユキさんと……」
ミアは二人が大人の関係だと誤解した。こんなイチャラブシーンを見せつけられたら誰でも誤解するだろう。
「やぁあん♡ ナツキくぅん、それぇ、先生にもお願いよぉ♡ 悪さしちゃえばお仕置きしてくれるのぉ♡」
マリーはマリーでナツキのお仕置きが欲しくてたまらないようだ。わざと秘書の仕事をミスして、何度もお仕置きをされようなどと考えるくらいに。
そんな二人は置いてけぼりにして、ナツキのペンペンに熱が入る。ここまでくると本当に無意識なのか怪しくなってくるかもしれない。
ペチペチペチペチ!
「お姉ちゃん、反省しましたか?」
「はふぅ♡ 反省したぁ♡ でも、やっぱしない♡」
「もう暴言吐いちゃダメですよ」
「はぁああん♡ 弟くんのお仕置きしゅきぃ♡」
反省しているのかいないのか、シラユキはナツキの膝の上でぐったりしてしまっている。
「あの、シラユキお姉ちゃんも反省していますから、ミアも先生も仲良くしてあげてください。お姉ちゃんは怖そうに見えるけど、本当は優しくて面白い人なんですよ」
ナツキとしては気を遣っているのだろうが、こんな状況で言われても二人とも困ってしまうだろう。
「あ、あの……ナツキって、いつもそんなことしてるの?
恐る恐るミアが聞いてみるも、ナツキはドヤ顔になって言い放った。
「勿論です。ボク、姉の躾には厳しいんです。悪いお姉ちゃんにはとことんお仕置きしちゃいますから。これが帝国の伝統文化です」
本人は大真面目なのかもしれないが、ミアは引き気味になりマリーは目がトロンとさせる。
「ねっ、シラユキお姉ちゃん?」
「うん、ナツキには何でも言うこと聞かされちゃってるぅ♡」
「ななななな、何でも! い、いやぁああああああっ! ナツキが不良になっちゃったぁああああっ!」
何でもすると聞いてミアが絶叫した。
「あ、あの、ミア?」
「ナツキのアホぉぉぉぉ! エッチ! 変態! ビッグサイズぅううううっ! もう知らないぃぃぃぃっ!」
ダダダダッ! バタンッ!
何がビッグなのか知らないが、ミアが絶叫したまま家を飛び出してしまった。
シラユキがシャッキリしていれば、きっと『男子三日会わざれば
そう、ひと夏の帝国文化を経験して、ナツキはイケナイ男に成長していた。ナツキを
オマセな少女を自認していたミアだが、どうやらナツキが先に大人の階段を上ってしまったのかもしれない。
「ミア、行っちゃった……。あれっ? お姉ちゃん、大丈夫?」
ポンポンポンポン――
「うひぃ、らいひょうぶぅ♡ はひぃ――」
無意識にナツキがお腹ポンポンまでしているのだが、シラユキにはトドメの一撃になったのか、陥落して夢の世界に行ってしまったようだ。
これにはマリーもテンションマックスだ。
「な、な、ナツキ君……私、頑張るわね。もう秘書の件は国王も了承済みなのぉよん♡ 何でも命令して良いのよぉ♡ あはぁん♡」
目の前で凄いものを見せられ、マリーのやる気が俄然上がってしまう。
もうナツキの秘書に永久就職して、キッツイお仕置きをくらいまくりたいとか思っていた。
「ううっ……ちょっと前まで先生だった人を部下にするなんて、なんか気まずいんですが……」
チェンジしたいのは山々だが、もう手続きが済んでしまっているようで受け入れるしかないようだ。
こうして女教師マリー24歳彼氏いない歴イコール年齢が、女秘書マリー24歳彼氏いない歴イコール年齢にジョブチェンジした。
◆ ◇ ◆
アレクシアグラードから続く街道を進む馬車があった。草木が生命力に満ち青々と茂っていた季節は終わりを告げ、そろそろ冬枯れの景色がやってきそうな草原を見つめながら馬車に揺られる女が一人。
「はあ、不幸だわ……」
そう呟いたのは、グロリア・アリオスティ。元老院議長アリーナからナツキの
少し気難しそうな顔をしているが、水色の髪をツーサイドアップにした髪型は幼い印象にも見える。
「よりによって、勇者ナツキ……あの大胆不敵なヤリ〇ン男の職場だなんて……。私は……この貞操逆転世界と言われる帝国でも貞淑に生きようと心に誓ったのに」
そう、このグロリア。エロい女が多い帝国で、数少ない純潔を守ろうとする女だった。
「私は絶対に堕とされたりしない。あ、ああぁんな破廉恥な男に負けるものかっ! はぁっ……やっぱり不幸だわ」
帝国に似つかわしくない貞淑な女家令と、帝国に生まれるべきであった女豹な女秘書。まさか、この二人がナツキの実務担当となるとは。
果たして、ナツキの領地運営はどうなってしまうのか。
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