第30話 ナツキのポンポンで堕とされまくる大将軍たち

 帝国乙女の気品漂うフレイアとシラユキが優雅な仕草で朝食をとる。そして、その隣のテーブルではガチャガチャドタバタと騒々しく食べるナツキたち一行が座っていた。

 お互いに気付かないまま。



「はむっ、もぐもぐ……うん、美味しい。店員さん、おかわり」

 ガチャガチャ――


 もの凄い勢いで目の前の料理を腹に入れてゆくロゼッタ。見た目通りの健啖家腹ペコヒロインのようだ。


「うぐっ、もぐっ、げほっ、む、むせたんだナ」

 トタバタドタバタ――

「はい、お水」

「どうもだナ。うぐっ、うぐっ――」


 一気に口に入れて咽るネルネル。慌てたロゼッタに水を渡されがぶ飲みする。

 総じて二人とも騒がしい。



「えっと、お二人とも、お腹空いてたんですね」

 二人のがっつき具合を見ていたナツキが言う。


「あはは、昨日は走ったりエッチしたくなったりで体力使ったからね。もう、お腹ペコペコでさあ。はぐっ」


 新しく運ばれてきた料理を食べながら話すロゼッタ。それにネルネルも続いた。


「げほげほっ、き、昨日は乗り物酔いで食べてないんだナ。久しぶりの食事なんだゾ」



「何でアタシこいつらと食事してるんだろ」

 機嫌斜めのマミカが呟く。


 ナツキの強気攻めで堕とされた余韻よいんに浸っていたのに、いきなり二人に押しかけられ台無しだ。


「お姉様。仲間なんだから、もっと仲良くしましょうよ」

「結婚迫ってる女や殺そうとしてる女と仲良くできるわけないでしょ」


 ここで奇跡のユニゾンが巻き起こる。

 ガタッ!

「あのっ――」


「アタシのナツキなんだから!」

「私のナツキ、私の弟くん!」

「私のナツキ少年なのよぉ!」


 ナツキがマミカに声をかけようと立ち上がったタイミングで、同じテーブルのマミカと、隣のテーブルにいるシラユキとフレイアが同時にナツキの名前を出す。ぴったりとセリフが重なるように。


「は? ナツキって」

「えっ、ナツキ?」

「今ナツキって言った?」


 三人が同時に振り向く。

「「「っ………………!!」」」


 お互いに見つめ合い言葉に詰まる。特にフレイアとシラユキは、ナツキの姿を見て固まってしまう。



 ヒュゥゥゥゥ――――


「な、ナツキぃぃぃぃーっ! って、やっぱりマミカが隠してたのかぁぁぁぁっ!」

 ナツキとマミカが一緒にいるのを見たフレイアが吼える。


「弟くんっ! や、やや、やっぱりマミカが監禁していた……」

 再会の喜びで一瞬顔が緩んだシラユキだが、マミカを見て目を鋭くする。


「はああ!? な、なんで、あんたらが……」

 マミカも驚きの余り声を上げた。まさか真後ろに二人がいるとは思っていなかっただろう。


「マミカ、あなた昨日は知らないって言ってたわよね。これ、どういうこと?」

 大切なナツキを奪われ、フレイアが顔を赤くして怒り出した。


「ぐぬぬぬっ……マミカ……極刑」

 ヤンデレっぽいハイライトが消えた目で恐ろしい発言をするシラユキ。超怖い。


「はあ? しらないし! ナツキはアタシのだから! 毎晩一緒に寝て、毎晩抱き合ってイチャイチャして、毎晩ちゅっちゅペロペロさせてんだからっ! もうラブラブだしぃ! どうっ、羨ましいでしょ!」


 二人の発言にイラっとしたマミカが、話を盛って挑発する。自慢しまくりだ。もうラブラブらしい。


「きゃああああぁぁーっ! ナツキ少年の貞操がぁぁぁぁ~っ!」

「もうるしかない。地獄の最下層、永久不変の凍土より来たりて敵を討て――」


 フレイアが絶叫し、シラユキが氷系魔法の詠唱に入る。さすがに大魔法は迷惑千万なのでフレイアが止めに入った。


「ちょっと待ったぁぁーっ! シラユキやめなさいって!」

「止めないで。どいて、そいつれない」

「店ごと破壊する気かぁぁぁぁああああぁぁーっ!」

「だってナツキの初めてが」

「あんた、そんなんだからモテないって言ってるでしょ!」



 せっかく最近は柔らかくなったシラユキなのに、やっぱり極端で暴走気味だ。フレイアが言う通りモテないのも納得だろう。

 そして、唐突に始まったナツキ争奪戦に、ロゼッタまで参戦してしまう。


「あの、ナツキ君は私の婚約者なんだけどな。結婚するんだ。あはは」


 これには彼女候補の三人も黙っていない。


「はあ? はああっ!? ナツキはアタシのですしぃ! ロゼッタみたいな性欲脳女には渡さないしぃ!」

 マミカもキレた。


「ちょっと、何でロゼッタまでいるのよっ! ここで何やってるのよ! もう、大将軍の大安売りかっ!」

 これにはフレイアもビックリだ。ここにいるはずのないメンバーが揃っているのだから。


「だから会ったら逃げろって言ったのに……やっぱりるしかない。全員まとめて。弟くんは私のもの。ふひひっ」

 シラユキは相変わらずだ。



「皆さん! 喧嘩はやめてください!」

 騒々しい女たちを、ナツキが一喝した。


 シィィィィーン!


「こんなところで騒いだらお店の人に迷惑ですよ。言うこときかない人は、もう一緒に寝てあげません」


 ガアアアアァァァァーン!

 ナツキの言葉で四人の帝国乙女が大ショックだ。添い寝を禁止されたら生きてゆけない。それくらいの一大事なのである。


「ナツキぃ、う、嘘よね。添い寝してくれないとアタシ……」

 恐る恐るといった感じにマミカがナツキに声をかける。


「本当です。悪いお姉さんにはお仕置きです。もう、お腹ポンポンも抱っこもしてあげません。マミカお姉様、『何でも言うこときく』って言いましたよね」


「ううぅ……言いましたぁ。何でも言うこときくから捨てないでぇ♡ もう、ナツキがいないと眠れないのぉ♡ うえぇ~ん」


 目の前でマミカが完全屈服しているのを見せつけられて、そこにいる四人の大将軍が茫然とする。こんなマミカを見るのは初めてだ。



「マミカお姉様、反省しましたか?」

「反省したしぃ」

「じゃあ、ご褒美です」


 ぎゅっ! ぽんぽんぽんぽん――

 ご褒美のハグとお腹ポンポンをするナツキ。若干ポンポンが下腹部に入っていて危なっかしい。


「あふっ、こ、こんなとこでぇ♡ ダメぇ♡ おかしくなっちゃうからぁ♡ あんっ♡ おっ、おほっ♡」


 多少オホりながらマミカが良い子になった。


「あはぁん♡ 腋ペロもしてぇ♡」

「あれは敵にしかできません」

「もうっ、イジワルぅ♡」


 姉喰いスキルを打ち込まれているマミカには、ナツキの抱っことポンポンは極上の快感だ。優しい手つきが体の奥にズンズンと浸透する。



「ちょっとぉ! ナツキ少年がマミカまで……ああぁん! 悔しい! もしかして、その女にも腋ペロしたのっ!」


 フレイアがジタバタしながら悔しがる。マミカにまでベッドでイチャコラして、何でも言うこときかせてるのは嫉妬でしかない。


「フレイアお姉さん、何でアレクシアグラードに?」


 マミカを堕として良い子にさせたナツキが、フレイアの方に振り向きに話しかける。


「だって、ナツキ少年が心配だから追いかけてきたの♡ もぉ、ずっと気にしてたんだからね♡」


 普段は凛々しく威厳のあるフレイアなのに、相変わらずナツキの前では甘々な声だ。


「フレイアお姉さん、迷惑をかけないように一人で行ったのに。でも嬉しいです」

「はぁん、ナツキぃ♡ 好きぃ♡」

「フレイアお姉さん」


 ぎゅぅぅ~っ!


 ナツキに優しく抱きしめられてフレイアの頬が緩む。あのリリアナでの甘い日々と会えなかった時間が、よりフレイアの恋心を燃えさせたのかもしれない。もう完堕ち女のようだ。


 ぎゅっ! ぽんぽんぽんぽん――

 フレイアにもご褒美の抱っことポンポンだ。若干ポンポンが下乳に入っていて危なっかしい。


「ちょ、だ、ダメぇ♡ 前より更に積極的ぃ♡ 当たってる、当たってるからぁ♡ そこポンポンしないでぇ♡ あひぃ♡」


 多少アヘりながらフレイアが良い子になった。



「シラユキお姉ちゃん。お久しぶりです」

 フレイアを堕としたナツキが、今度はシラユキに話しかける。


「お、弟くん……会いたかった」

「ボクも会いたかったです」

「うんっ、うんっ」


 シラユキの目に涙がにじむ。会ったら色々と伝えたいことがあったのに、今はただ見つめ合うだけになってしまった。



 ぎゅっ! ぽんぽんぽんぽん――


 当然、シラユキにもご褒美の抱っことポンポンだ。完全にポンポンが胸の辺りに入っていてアウトだ。


「ちょちょっ、ナツキ、当たってる♡ 当たってるからぁ♡」

「はい、頑張ります」


 ぽんぽんぽんぽん――

 ナツキは無意識なのかもしれないが、シラユキとしては人前で恥ずかしいことされて限界だ。


「あっ、あひっ♡ ふひっ♡ ひ、人が見てるのにっ♡ ダメ、ダメだよぉ~っ♡」

「店の中で魔法を使っちゃダメですよ」

「わか、分かったから。もうゆるじでぇ~っ♡」


 完全に屈服されたシラユキが良い子になった。



 三人を堕としてしまったナツキが席に戻ると、ニコニコと笑顔のロゼッタが横に来て指で自分を指した。期待を込めた顔で『自分の番は?』と言っているみたいだ。


「えっと……ロゼッタさんはおあずけ・・・・で」


「ちょぉおおおおっとおおおおおぉぉぉぉっ! なんでさぁぁ~っ! 私もギュッてして欲しいのにぃ! あと、ポンポンもぉ! やだやだぁ」


 むちっ、むちっ、むちっ――

 超恵体のロゼッタが駄々をこねる。手足をバタバタして店を壊しそうで危なっかしい。ムチムチと肉の音が聞こえてきそうだ。



「ぐはぁ……なんだコレ。わ、わたしは何を見せられているんだ。こ、これは意味不明なんだゾ。もう付き合っていられないんだゾ」


 目の前の光景が信じられないといった感じにネルネルが愚痴ぐちをこぼす。最強の大将軍が一人の少年を取り合って大騒ぎなのだから。



 この冗談のように変な組み合わせが、この後まさかの運命を辿るとは誰も想像できないだろう。帝国や世界を変えてしまう新時代が到来する。

 次々と年上女性を堕とし、甘々で超恥ずかしいことをさせるナツキ。世界を救う奇跡の勇者によって――――


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