第25話 NTRで修羅場?

 ロゼッタがシャツを脱ぐと、意外と柔らかそうな肉体が現れた。褐色の肌はムチムチと張り艶があり、まるで手に吸い付きそうなきめ細やかさだ。

 ウエストが絞られているのに、バストとヒップはド迫力に突き出ている。


 腹に浮かぶ美しいシックスパックや、盛り上がった上腕二頭筋が眩しい二の腕や、パツパツに張った長く逞しい太ももからは想像できない、十分に色気のある女らしい肢体である。


「はあっ、はあっ、走って汗かいちゃったけど……もう我慢できないというか……い、いいよね」


 少し顔を赤らめながら言うロゼッタの体からは、モワァっと湯気のようなものが立ち上がる。まるでフェロモンのように。

 肌には薄く汗をかき、テカテカと光り輝いて何だか美味しそうに見える。


「さあ、キミも脱いで。私が温めてあげるよ」


 とんでもない迫力で迫るロゼッタ。まるで肉の祭典だ。見た目のインパクトではナツキの何倍もありそうな巨体である。こんな肉布団があったら、きっと三割くらいの男は使ってみたいと思うだろう。(当社比)


「ダメです! お姉さん、ダメって言ってるのでしょ! まだお互い名前も知らないのに! エッチは三回デートして、手を繋いで、き、キスをしてからです」


 ナツキの発言に、ロゼッタはキョトンとした顔になる。


「き、キミは面白いな。デートは三回してからキスなのかい? 古風で良いじゃないか。き、気に入ったよ。う、うん、やっぱり男は古風で清純派に限るよね。そうだ、そういえば自己紹介がまだだったね」


 興奮してロゼッタが更にテンションを上げる。古風な男子が好きらしい。


「そうそう言い忘れていたよ。私は帝国大将軍、ロゼッタ・デア・ゲルマイアー。帝国騎士さ。キミの名は?」


「えっ、ええええええええええぇぇぇぇ――っ!」


 これにはナツキも驚愕きょうがくする。とんでもない偶然で大将軍に出会ってしまったのだから。しかもエッチ寸前だ。


「だ、だだ、大将軍……ロゼッタさん……」

「そうだよ。ロゼッタ姉さんとでも呼んでくれたまえ。えへへっ♡」


 ロゼッタがニコニコと良い笑顔をする。きっと性格も良い女なのだろう。ただ、ちょっと……いや凄くエッチなだけで。性欲強いのが玉にきずなのかもしれない。



 もうナツキは覚悟を決めていた。覚悟を決めると言ってもエッチの覚悟ではない。ここがスキルの使い時という意味だ。


 まさか帝国大将軍と出会ってしまうなんて。もうやるしかない! ここで大将軍の一人を倒して、戦争を止めてもらうようにしないと。


「ごめんなさい、ロゼッタさん。えいっ!」

 ずきゅぅぅぅぅーん!


 ベッドに抑え込まれ絶体絶命の中、ナツキの姉喰いスキルが炸裂した。突き出た爆乳をなるべく見ないようにして腹に一撃だ。


「ど、どうですか?」

 収容所で戦ってスキルをかなり消費しているけど、まだ使えるはず。これで――


「うっ、ううっ、こ、これは……」


 ロゼッタの巨体と声が震える。ムチムチパツパツの褐色肌がプルプルと動き、上気した顔はデレェっと緩んでいる。


「た、た、た……」

「た?」

 ナツキが聞き返す。

「たたたたた……」

「ど、どうしました?」

「昂ってきたぁぁああああああああぁぁぁぁーっ!」


 逆効果だった――――


「ええええええっ!」

「な、なんか、すっごくムラムラする。こ、これは運命かな?」

「ち、違いますぅ~っ!」

「これは仕方ないんだ。もう止められないよ♡」


 このロゼッタという女。色々と規格外なのだ。


 通常ならば立っていられないほどの快感をもたらす姉喰いスキルだが、底なしの性欲と常人を遥かに超える精力を持つ彼女には逆効果なのだ。

 余計にロゼッタのハートと性欲に火を点ける結果になってしまった。


「ふ、ふ、ふんす! ふんすっ! こ、これはしょうがないよね。うん、しょうがない。何だか分からないけど、キミに触れてから私の感度が3200倍くらいになった気がするんだ。何て罪な男なんだよキミは」


「き、気のせいですぅ! たすけてぇーっ!」


「そ、そうだ、まだキミの名を聞いてなかったね。ほらほら、言わないとイタズラしちゃうぞ。トリック・オア・エッチー」


 ちょっと寒いギャグを言うロゼッタ。これでもナツキの緊張を解こうとしているのかもしれない。


「名前はナツキです。でも、そんなお菓子をくれみたいに言ってもダメです!」


「な、ナツキ君かい。良い名前だね。ふんすふんす! ななな、何だか私のハートがどっきゅんどっきゅん昂って切ないんだ。これはアレだね! エッチから始めてください! おなしゃす!」


 そこは『友達から始めてください』だろとツッコまれそうだが、貞操逆転世界である帝国乙女は、エッチから始める人も多いのだ。

 ただ、ロゼッタは規格外の性欲なので、エッチに始まりエッチに終わるようでいて永遠にエッチかもしれない。


「ああっ、予定を変更してアレクシアグラードにきて良かったぁ。う、運命の人に出会えたのだからね♡ もう離さないぞぉ♡」


「ぎゃああぁーっ! こんな女の人、初めてだああああぁぁーっ!」


 むっちぃぃぃぃ~っ!


 ド迫力の肉体がナツキの上に覆いかぶさる。その爆乳に顔が埋もれ、それだけでナツキは昇天しそうになった。

 汗でヌルヌルのロゼッタの体からモワァっと汗の臭いがし、ナツキはロゼッタの体臭に包まれてしまう。汗臭いのに何故かクセになりそうなエッチな香りだ。


「ダメって言ってるのにぃ!」

 グイグイッ! グイグイッ!


 何とか巨体を退かそうとするが、爆乳を押す羽目になり余計にロゼッタを刺激しただけだった。


「ナツキ君のえっちぃ♡ もうもう、おっぱい触り過ぎだぞ♡ こうなったら、お尻でオシリオキじゃなかった、オシオキだぁーっ!」


 もう訳が分からない。一旦ロゼッタが立ち上がると、今度はヒップ100cmは優に超えていそうな巨尻を向けてきた。上に乗ろうとでも言うのだろうか? そのまんまお尻置きオシリオキだ。


「ほらほら、乗っちゃうぞぉ♡」

「うああっ、そんな大きなお尻で踏まれたら死んじゃう!」


 ナツキの顔の何倍もある巨尻だ。そんな巨大な質量が落下してくるのだから恐怖でしかない。エッチ以前に潰されてしまいそうだ。


「いきなりマニアックすぎますぅ」

「よいではないか、よいではないかぁ♡」




 タッ、タッ、タッ、タッ――

 サッ!


 そんなエチエチな展開真っ只中の部屋に緊急事態が起こる。アイカ改めマミカが帰ってきたのだ。

 扉の前まできたマミカが、音や声で室内の様子がおかしいことに気付く。


 ドォォォォォォーン!

「ナツキ、何かあったの!」


 戦闘態勢をとったままマミカが部屋に飛び込んできた。しかし、そこで見たのは――――ベッドの上でくんずほぐれつ裸で絡み合うナツキとロゼッタだった。


「――――へっ…………」


 最初、マミカは状況が飲み込めず茫然ぼうぜんと立ち尽くす。そして、次の瞬間にナツキがロゼッタに襲われているのだと理解した。


「あ、ああ、あああ……アタシのナツキに何すんのよっ! 精神掌握セイズマインド!」


 シュバァァァァアアアアッ!

「ぐああああっ! か、体が!」


 強力な精神魔法の一撃をくらい、ロゼッタの体が硬直する。どんな屈強な人間でも精神を支配し体の自由を奪う恐るべきスキルだ。


「ナツキ、大丈夫……って、怪我してるじゃない! まさかコイツが……」


 ナツキの腫れあがった腕や傷のついた顔を見てマミカが逆上する。ロゼッタが無理やり暴力で襲ったのだと思い込んだのだ。


「アイカさん、ち、違うんです! こ、これは……」


 ナツキが説明しようとするが、その前にロゼッタが放った一言で衝撃を受けることになる。


「ま、マミカ! カワイイ大将軍マミカじゃないか。な、何でここに……」


「えっ、マミカ……カワイイ大将軍……あれっ、アイカさんですよね? えっ……」


 ナツキが絶句する。旅の美少女アイカだと思っていたお姉様は、帝国軍七大女将軍の一人マミカだったのだ。



 呆然とするナツキを他所に、二人の大将軍が対峙する。


「き、聞いてくれ。私はただ倒れていたナツキ君を運んで……というか、何でマミカがここにいるんだ?」


「それはこっちのセリフよ! 何であんたがアレクシアグラードに! 許さない! 絶対に許さない! アタシのナツキを……汚された……ナツキの純潔を……もう、ぶっ殺す!」


 怒りで我を忘れたマミカがスキルを強める。体の自由を奪ったロゼッタに、更にスキルで身体機能を掌握し始めたのだ。


「ぐっ、ぐおおおおおおおおぉぉぉぉおおおおっ!」

 ぐにゃぁぁああああぁぁぁぁ~っ!


 ロゼッタの周囲の空間が捻じ曲がる。まるで蜃気楼しんきろうのように、そこだけ別次元に切り取られたかのようだ。


「くおぉぉぉぉーっ、こおおおおぉぉぉぉーっ!」


 マミカ必殺の精神魔法が破られようとしていた。スキル精神掌握セイズマインドを受けてなおロゼッタは動いている。巨体から立ち上る空間を歪めるような戦闘バトルオーラが放出されているのだ。


 まさかの事態、大将軍同士の戦いが始まってしまった。


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