第24話 超ムチムチ恵体姉が暴走

 「ううっ、体が重い……目がかすんで……だ、ダメだ、ここで倒れたら。宿まで辿り着かないと……」


 収容所を抜け出したナツキだったが、ガーレンのパンチが予想以上に効いていたようだ。フラフラと目が回り、街の片隅で座り込んでしまう。


「まだ、倒れるわけには……ボクは、まだ何も成し遂げていない……ううっ」


 体重が何倍もある大男のパンチを受けたのだ。肉体へのダメージは回復していないだろう。本来ならノックアウトしていてもおかしくない状態だったはず。それをナツキは気力で立ち上がったのだから。


 路地の壁に寄りかかったナツキは、意識が遠くなっていった。


 ◆ ◇ ◆




 地上を隼のように高速滑空する帝国乙女がアレクシアグラードに入った。何者をも寄せ付けないスピードで、誰もが畏怖いふする究極の肉体美で。


 ズドドドドドドドドドッ!

 ビュゥゥゥゥゥゥウウウウウウゥゥゥゥ――――ズシャアアアアアアァァァァーッ!


 人の合間を縫うように街を駆け抜けたロゼッタが急ブレーキをかけ、まるでドリフトするように体をスライドさせて止まった。途中で壁を垂直に走るという芸当まで披露させて。


「よし、着いたぞ。ネルネル、もう降りて良いよ」

 背中の同僚に声をかけるが返事がない。


「あれ? ネルネル……」


 ロゼッタが背中のネルネルを掴み、グイッと前に持ってくる。逞しい腕の筋肉が脈動し、軽々と女性一人を片手で持ち上げてしまう。


「うげぇぇぇぇ~っ……」


 ネルネルは完全に目を回していた。超スピードで走っていただけでも酔っていたのに、最後のアクロバティックな三次元立体軌道でトドメを刺されたのだろう。


「えっと、ネルネル……大丈夫?」

「うげぇ……ぎぼじわるいゾ……」

「ごめん。宿に向かうから今日は休んでよ」

「ぞうざぜでもらうゾ……」



 ロゼッタはネルネルを宿に寝かせ、一人で夜の帳が下りた街へと出た。

 男日照りのロゼッタとしては、一度火が付いた体の奥のムラムラを抑えられないのだ。今にも爆発しそうな性欲に身を震わせ、デノアの勇者を探して街を歩く。


「ううっ、ムラムラが収まらない。このままじゃ道行く男子にチカンしちゃいそうだよ……。い、いかんいかん、仮にも帝国騎士で大将軍であろう者が、エッチな犯罪など犯しては部下に示しがつかん」


 ぶつぶつと独り言を続けながら街を歩くロゼッタ。

 そんなロゼッタが薄暗い路地に差し掛かると、何やら不穏な会話が聞こえてきた。


「アニキ、ガキが倒れてますぜ」

「金目の物でも持ってないか調べろ」

「へい」


 少年がぐったりと横たわり、そこにハイエナのような男たちが集っている。盗賊の類いだろう。


「おい、何をしている?」

 ロゼッタが声をかけた。明らかに犯罪の臭いがするので放ってはおけない。


「っんだと、ゴラッ!」

「ああんっ!」

 ドォォォォオオオオ――――ン!

「「っ、ひぎゃあっ!」」


 威勢よく振り返った男たちが一瞬で怯んだ。そこに立っているのは見るからに只者ではない女なのだから当然だろう。


 身長は男たちよりも高く190cmはあると思われる。体重もヘビー級(失礼)くらいありそうだ。乙女なので体重にツッコんでほしくはないだろうが、爆乳と巨尻のコンボでそれなりに重いのは想像が付く。


 褐色の肌は露出し、腹には美しく均整の取れたシックスパックが盛り上がっている。ただ、全体的には柔らかそうなムッチリとした女の体だ。ボーイッシュな顔をしているのに、人の良さそうな澄んだ瞳とフリフリと揺れるポニーテールが可愛らしい。



「犯罪? なら制裁が必要かな?」


 むちっ、むちっ――

 ロゼッタが話しながら腕を上げると、艶やかに光る上腕二頭筋がムチムチと音を立てるように膨らんだ。


 男たちは悟った。この女には絶対に勝てないと。ロゼッタには誰をも納得させてしまうだけの肉体美と、空間を捻じ曲げてしまいそうな存在感があるのだから。


「ひぃ、す、すいませんでしたぁーっ!」

「まだ何もしてませーん!」


 男たちが一目散に逃げ出し、そこには気を失った少年……ナツキが残される。


「キミ、大丈夫かい? あっ、怪我をしてるじゃないか」

「うっ……うぅん……あ、あなたは?」


 ナツキが薄目を開けると、覗き込んでいる大きな女と目が合った。


「私は通りすがりのお姉さんさ。キミ、怪我をしているみたいだから送るよ」


 ロゼッタがナツキを抱き上げる。当然のように、お姫様抱っこだ。


「あ、ありがとうございます」

「なんのなんの。これくらい帝国乙女なら当然だよ」


 ナツキを抱いたまま歩き出すロゼッタ。親切を装ってはいるが、頭の中ではエッチなことでいっぱいだ。


 どどどどど、どうしよう! 本当に少年を拾っちゃった。無茶苦茶好みなんだけど。い、イケナイコトしちゃっても良いのかな? そ、そうだ、助けた御礼ということで。良いよね、助けてあげたんだから、体で支払ってもらうってのも。


 完全に思考がイケナイコトモードになっているロゼッタ。毎度おなじみ、ナツキ貞操の危機である。




 ムッチリ爆乳を抱き枕にするようなお姫様抱っこで運ばれるナツキ。顔がおっぱいに埋まり大変なことになっている。


「あ、あのっ、ふがっ、あ、当たってます」

 むにっ、むにっ――


 ロゼッタが歩く度に、張りと弾力のあるおっぱいがボヨンボヨンと顔に当たる。まるで乳ビンタだ。


 ぱつんっ! ぱつんっ!

「わぷっ、んんっ……あ、あた……」


 このロゼッタ、迫力の爆乳なのに少しも垂れていない。まるで重力に逆らうかのように前に突き出た極上おっぱいなのだ。


 これにはさすがに真面目なナツキも狼狽うろたえる。結婚を前提に付き合わなければエッチはダメだと思っていたのに、容赦のない極上乳ビンタ攻撃で、体の底からムクムクと何かが立ち上ってきてしまうのだ。


「ああっ、こんな、ぱふっ、ダメです……ぷはぁ」

「キミぃ、そんなに胸ばかり触られると、変な気分になっちゃうよ」

「さ、触ってません! 当たってるんです」

「どっちでも良いじゃないか」

「良くないですよーっ!」


 ぱつんっ、ぱつんっ、ぱつんっ、ぱつんっ!

 余計に胸を当ててくるロゼッタ。もう偶然ではない気がする。


「ぷはっ、ああ……意識が……」

 ロゼッタの乳攻撃で意識が飛びそうになるナツキ。ある意味、ガーレンのパンチより効いている気がする。



 もう色々とギリギリな感じで宿の前に到着した。

 ロゼッタが宿の看板を見上げる。


「この宿で良いのかい?」

「は、はい……あの、もう歩けますから」

「ダメダメ! 部屋まで行くよ。心配だから」

「で、でも……」

「な、何もしないから。絶対……いや、ちょっとは……」

「ええっ!」


 何もしないとか言っているロゼッタの顔が怪しい。絶対に何かしそうな気がする。


「ふんす、すんす! この部屋で良いんだね」

 ガチャ!

「お、お姉さん、鼻息が荒いですよ」

「ふすーっ! 荒くないよ」


 めっちゃ鼻息荒かった。


 ギシッ!

 興奮した顔のロゼッタが、ナツキをベッドに横にする。ムッチリとした肉の圧力で上から迫られ、完全に逃げ場を無くしてしまう。



「ダメですダメです! まだダメ!」


 大きなお姉さんに乗られそうになり、ナツキの心臓が早鐘のように脈打つ。今までも色々あったが、こんな大きなおっぱいは初めてなのだ。


 ああっ! おっぱい……じゃなかった、大きなお姉さんが! 助けてくれたから悪い人じゃなさそうだけど。ダメだ、このまま流されたら。彼女候補って言ってくれたフレイアお姉さんやシラユキお姉ちゃんに合わせる顔が無くなっちゃう!


 もう、スキルを使って倒すしかないのかな――



「ふ、ふんすっ! い、いいよね……」


 初心うぶな少年がベッドに横たわっていて、ロゼッタの心臓が早鐘のように脈打つ。今まで男から怖がられ非モテ人生だったが、こんな好みの男子は初めてなのだ。


 ああっ! しょ、ショタ……じゃなかった、好みの少年が! この初心うぶな反応、絶対良い子だ。ダメだよ、このまま流されたら。普段は部下に規律を正せって言ってるのに、私が本能の赴くままイケナイコトしちゃったら部下に合わせる顔がなくなっちゃうよ!


 でも、少しだけならOKだよね――

 ロゼッタ的にはKOらしい。


「あれっ、そうだ、怪我をしているんだった」

 エッチ寸前でロゼッタがナツキの怪我を思い出す。



 ロゼッタがナツキの腕に触れた。

「腕……腫れてるね」


「あっ、その、殴られて……腕でガードしたから頭は無事なはずなのに……」


「それは脳しんとうだよ。強い衝撃を受けて頭が揺れたからだね」


 それだけガーレンのパンチが強かったのだろう。ガードの上からなのに、顔が少し腫れくちびるに血が滲んでいた。


 ロゼッタがナツキの顔を撫でる。


「顔の傷は大した事ないから大丈夫だよ。腕の方は……折れてはいないようだけど、少し安静にしていた方が良いね」


 一時は襲ってしまいそうだったのに、体の傷を心配するロゼッタ。痛そうな傷を見て一旦正気を取り戻したようだ。


「ありがとうございます。助けてくれて」


 ナツキの言葉でロゼッタが笑顔になる。ボーイッシュな顔なのに愛嬌がありとても可愛い。


「なんのなんの、これくらい当然さ。幼気いたいけな少年を一人になんてできないからね。今夜は一晩付きっ切りで看病するよ」


「へ?」

 途中からおかしな話になり、ナツキが絶句する。


「そ、そうだ! 体を温めないと。こういう時は裸で抱き合い温め合うって聞いたことがあるような? よしっ! わ、私が全身全霊で添い寝する! そうしよう! ふんす!」


 鼻息荒いロゼッタが服を脱ぎだした。やっぱり帝国乙女は裸になりたがるようだ。


「ま、待って! ダメですって!」

「よ、よいではないか、よいではないか」


 もうオヤクソクのようにナツキ貞操のピンチだ。選りにも選って最強レベルにエッチなロゼッタが相手なのだから。

 そして、フレイアたちと別れたアイカ改めマミカが、NTR的な展開の部屋に向かっているのだった。






 ――――――――――――――――

 NTRダメっ! いや、どうなんだろう――

 遂に恐ろしいことになってしまいそうな大将軍たち。果たしてナツキの運命は。


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