第15話 姉喰いvs人間使い
ナツキとアイカが宿に入り一息ついた。もう夕食も入浴も済ませ、後はベッドに入って眠るだけ。そう、エッチなお姉さんと密室で二人っきり。またしてもナツキ貞操の危機である。
「さっ、一緒に寝るわよ」
ごく自然に、至極当然のように
「えっ、あの、ベッドは二つあるので別々に……」
アイカを直視できないナツキは、目が泳いで床やベッドを見ながら話す。それもそのはず、アイカが服を脱いでスッポンポンなのである。
「ほらナツキ、帝国では男女一緒に寝るの。女の誘いを断るのは許されないんだし」
「ええっ、そうなんですか?」
そういえば……フレイアさんもシラユキさんもボクと一緒に寝たがってたぞ。やっぱりルーテシア帝国では男女一緒に寝るのが文化なのかな。
ナツキが騙されている。ただ、アイカが一緒に寝たいだけだ。
「さあさあ、明日は早いから寝るよ」
「あの……アイカさん裸だから……」
「アタシは、寝るときいつも裸なの」
「帝国の女性って皆脱ぎたがりますよね」
「そうよ、よく分かってるじゃない」
フレイアも裸になっていたのを思い出す。ただ、ナツキの知っているルーテシア帝国の女性は三人だけなのでデータが偏っているかもしれない。
しかし、実際に帝国では女がすぐ裸になり、男は慎みと恥じらいを持つ。それが常識である。
結局、一緒の布団に入って寝ることになってしまった。
「ほら、もっと近くに。ナツキも脱いだら?」
「ダメです。そういうのは恋人同士でないと」
「きゃはっ、ナツキって純情なんだ」
「と、当然です。本来なら結婚しないとダメなのに」
「ふふっ、可愛いっ」
ナツキのセリフでアイカのテンションが爆上がりした。
ちょちょちょっとぉ! 結婚するまで
はぁぁ~ん、もう最高っ!
ナツキを滅茶苦茶にしたい。大切に守ってきた操を汚したい。無理やりイケナイコトして泣き叫ぶナツキの顔を見たい。
アイカのドSな部分がムクムクと顔を出す。相手がナツキのような
ただ、今はまだ手を出さないと決めていた。もっともっと自分を信頼させてから、ここぞという時に裏切る。その方が、よりナツキの絶望が大きくなるのだから。
「まあ、今日のところはいいわ。でも、帝国では男が女に夜のサービスをするものなの。ナツキも覚えておきなさいよね」
「はい、アイカさんの言うようなのはできませんが、ボクにできる精一杯でサービスします」
「えっ、ええっ」
ナツキがアイカを優しく抱きしめ、お腹をポンポンし始めた。意表を突かれ、これにはアイカもビックリだ。
「ちょ、ちょっとナツキ?」
「任せて下さい。頑張ります」
「あぁん♡ アタシ、服着てないのにぃ」
ぽんぽんぽんぽん――
「ひゃあぁん♡」
スッポンポンの体を抱きしめられたアイカが変な声を上げる。優しくお腹をポンポンされる度に、体の奥の方にズンズンとエッチな感覚を送り込まれているようだ。
そう、この女、口では偉そうなことを言っているが、実はバキバキの処女である。日々、
今、アイカの中では初めて積極的に接してくる男との出会いで頭が混乱していた。
ちょ、ちょっとぉ! 何なのこの子。
あ、ああっ♡ そ、そんな……ナツキの手が心地良いなんてぇ♡ 触られる度に、体の奥の方にまで熱い振動を送り込まれているみたいだし。も、もしかしてナツキのスキルなの? はあぁん♡ こんなの初めてぇ♡
で、でも大丈夫よ! なんたってアタシは精神系魔法最強のスキルを持っているんだから。アタシの
ぽんぽんぽんぽん――
「くうぅ~ん♡ 負けちゃうぅ~っ♡」
「が、頑張ります」
どんな精神魔法も防いでしまうアイカが負けそうだ。
姉喰いスキルを使っているように見えるかもしれないが、実はナツキはスキルを使用していなかった。ただ、抱きしめてお腹ポンポンしているだけである。
フレイアにスキルの使い方を教わってからというもの、ナツキは一人で練習を欠かさなかった。今ではある程度のコントロールができるまでに成長しているのだ。
そして、むやみやたらにスキルを使うのは控えていた。いざという時の戦闘に備える為に。
ぽんぽんぽんぽん――
「アイカさん、ゆっくり休んでください」
「うひぃ♡ おっ、おほっ♡ もうムリぃ~っ」
自称最強の精神系魔法の使い手アイカ。ナツキのポンポンで陥落し、多少オホりながら無防備にも眠りの世界に入ってしまう。お腹ポンポンが心地良くて抗えないのだ。
――――――――――――
アタシは夢を見ている――
『〇〇〇……そう、あなたは〇〇〇よ。私達の大切な子供』
『ああ、俺達の子供だ』
遠い記憶を手繰り寄せるように、誰かの声が頭の中に響いている。女と男……夫婦だろう。そう、これは悪夢だ。アタシは、いつも悪夢に
そこから夢の中で時が流れる。
『ああああっ、もう限界よ! 何なのこの子。まるで悪魔の子だわ』
先程まで慈愛に満ちた笑顔で接していた女性が
『おかっ、お母さん……』
『あなたに母などと呼ばれたくない! 恐ろしい。何であなたは私達の心を操るの? ま、まさか、記憶まで操作しているんじゃないでしょうね! そ、そうだわ。私があなたの母だと思っているのも嘘かもしれないじゃない』
『ち、ちがっ……』
『そうよ! そうに違いないわ! あなたは悪魔の子よ! ああああああっ! 出て行きなさい! あなたは私の子じゃない! あなたなんて産むんじゃなかった!』
『ああ……あああ……いやぁああああああぁぁーっ!』
そう、アタシは五歳で親に棄てられた。この恐ろしいスキルを持って生まれたから。
それからのアタシは誰も信じなかった。
アタシは施設に入れられ、弱肉強食の世の中で悟ったのだ。この世は強い者が弱い者を虐げる残酷な世界なのだと。
『あんた新入りのくせに生意気よ!』
『そうよそうよ、新入りは私達の命令に従いなさい』
『あんたの食事は全部私達によこすのよ!』
『ぐっ…………』
施設では誰もが常に標的を探していた。自分より弱い存在を見つけ、自分はそいつより上だと確認する為に。
『スキル、
ドカッ! バキッ! ガタンッ!
イジメてくる先輩達は全部ボコってやった。アタシが殴ったのではない。自分で自分を殴らせたのだ。アタシは無敵だから。
やがて誰もがアタシを怖がって話しかけなくなった。
『〇〇〇、貴様はルーテシア帝国士官学校に入学できることになった。その中でも選りすぐりのエリートコースだ。その類い稀なる才能を帝国軍で活かせ』
ある日、帝国軍の人間がアタシを連れ出しにきた。この最強の力を軍で活かす為らしい。その女兵士が、終始子供のアタシを恐れて震えているのが面白かったが。
『そうね、いいわ、行ってあげる』
『お、おい、何だその口の利き方は……』
キッ!
アタシが
『い、いや、何でもない。ついてきてくれ』
エリートコースに入れば栄達は約束されていた。帝国中から選りすぐりの才能ある子供が集められているのだから。
その中でもアタシは飛びぬけているだろう。どんなに剣が強くても、どんなに魔法が強くても、アタシの精神系魔法の敵じゃない。
このスキルでアタシは成り上がってみせる。
『そうだ、アタシは強くなる。強くなって思い知らせてやる。この弱肉強食の世の中で、弱い者は常に虐げられてしまうのだから。誰も逆らえないくらい強くなって見返してやる。アタシが最強で最高に可愛いって』
ぽんぽんぽんぽん――
不意に優しい鼓動が夢に紛れ込んできた。
『何だろう……この温かくて優しい気持ちは……』
いつも悪夢でうなされるはずなのに、今日は不思議に心が落ち着いている。爆発しそうな怒りも、耐えられない程の苦しみもない。
この感覚は――――
――――――――――――
「んっ、あ、朝…………」
アイカが目を覚ました。窓の外では小鳥がさえずっている。朝チュン展開のようでいて、実際は何もしていない。
ギシッ!
体を起こそうとして、
「あっ、ナツキ……そういえば一緒だった」
そう言って、アイカはナツキの髪を撫でた。
「不思議な子……温かい気持ち……いつも、あんなにうなされていたのに。今日は何だか落ち着いている」
「んっ……あ、朝ですか……」
ナツキが目を覚ました。
「ほら、早く起きるわよ。今日から特訓もするんでしょ。ナツキ」
「はい、アイカさん!」
奇妙な関係になった二人の旅が始まる。そして、それがこの戦争や帝国にどのような影響をもたらすのか……今はまだ誰も知らない。
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