第8話 ぶっ壊れた氷の女王
ルーテシア帝国七大女将軍の一人、氷の魔法使いシラユキ・スノーホワイト19歳。帝国士官学校時代から、その美貌と迫力は健在だった。
学校の廊下を歩けば、男子共は
キラキラと光り輝く銀髪は、あらゆる者を魅了し
そう、余りにも完璧な容姿をしているシラユキは、近寄りがたい印象を人に与えてしまい、彼女を理解してくれる人は誰も居なかったのだ。
そんなシラユキに、かつてないほどの年下男子とイチャコラするチャンスが巡ってきていた。
「勝ったら何でも…………」
シラユキの恋愛脳が高速回転し、目の前の少年にイケナイコトされちゃう未来と、自分が少年にイケナイコトしちゃう未来を想像した。
ちょ、ちょ、ちょっと待って!
もしかして、負けたらエッチなことされちゃうんだよね。いやいやいや、私が負けるはずがない。勝ったら逆に私が何でもしちゃうのかな?
よく考えたら、どっちでも初エッチってことよね。この子、私を怖がってないみたいだし。これ、勝っても負けても美味しいような……。
脳が高速回転しているようで、考えていることは全部エッチだった。
そう、このシラユキ――――
見た目はクールな女なのに、中身はムッツリスケベで好き好き大好き弟くん属性だった。
「こ、コホン……いいわ、あなたと勝負する」
表情こそ怖いが心の中はエッチへの期待でいっぱいのシラユキが答えた。
「ホントですか。じゃあやりましょう」
「ふっ、私は強い。あなたがデノアの勇者でも負けはしない」
「ボクだって特訓して強くなったんです。負けません」
二人が向き合い決闘が始まった。
ゴオオオオォォォォーッ!
「地獄の最下層、永久不変の凍土より来たりて敵を討て!
シラユキが詠唱しスキルによる魔法術式を構築した。彼女の周囲には冷気による結界が張めぐされ、構えた手の前方に圧縮されたかのような青白い超低温の球体が出現する。
このシラユキ、何者にも犯されることない鉄壁防御と、何者をも破壊する超攻撃力を併せ持つ氷の魔法使いなのだ。周囲に展開した冷気の結界で敵の攻撃を防ぎ、超破壊力の魔法で敵を粉砕する。まさに男を拒絶する鋼鉄の処女。
「一瞬で終わる……私は強い」
シラユキが攻撃態勢に入る。
「何やってんのよシラユキ! そんな大魔法をここで使ったら、城が崩れて全員生き埋めでしょ!」
血相を変えたフレイアが怒鳴る。そもそもそんな超破壊力の魔法で攻撃したらナツキが死んでしまう。
シュゥゥゥゥ――――
「言われてみれば……私としたことが……」
頭の中が初エッチでいっぱいのシラユキが暴走していたようだ。展開した魔法をキャンセルし、自身を守る結界も解除した。
「言われてみればじゃないでしょ! あんた相変わらずね。そんなだから男にモテないのよ!」
グサグサグサ!
図星過ぎてシラユキのハートがダメージを受けた。
「フレイアお姉さん! だから、シラユキさんを悪く言っちゃダメですって。異性にモテないのはツラいことなんですよ。きっとシラユキさんも、今まで何度も悲しい思いをしてきたはずなんです」
またしてもナツキが止めに入る。
「ええぇ~っ、だってだってぇ。何でシラユキの味方するのよぉ」
「もうっ、ケンカはダメって言ってるじゃないですか。そうやってフレイアお姉さんがからかうから仲悪くなっちゃうんですよ。悪口ばかり言ってると、もう一緒にお昼寝してあげません!」
ガァァァァーン!
「うわぁぁん、ごめんなさぁい! もうしないから添い寝してよぉ」
添い寝禁止でフレイアが折れた。完全に年下男子に躾けられているフレイアである。
「あのフレイアが……男の言いなりに……」
信じられないものを見たという目をするシラユキ。頭の中で妄想ばかり膨らむ。
ちょっと待って! 添い寝って言ったよね。付き合うと添い寝してもらえるの?
き、きっと、添い寝だけでは済まないのよね。何か熱くて逞しいのを打ち込まれるとか言ってたし……。気になる……すっごく気になる……。
それに、あの子、私を庇ってくれる。良い子。あの子が私のものになったら、一晩中抱き枕にして手足を絡めて……ぐふっ、ぐふふふっ…………。
「ふっ、手加減してあげる」
心の中ではナツキとイケナイコトしているのに、見た目だけは涼しい顔でシラユキが言う。
シュバァァーッ!
スキルを最小限に留めたシラユキが、魔法で氷の棒を作る。その弱そうな装備で戦ってくれるようだ。
「あなた、デノア王国の勇者とか聞いたけど、弱そうだからこんな武器で十分。勝負」
「はい、ボクも行きます! 絶対に戦争を終結させ世界を平和にします!」
「ふふっ、面白い子。平和になんかなるはずがない。争い、憎しみ、裏切りこそが世界の現実。私が現実の厳しさを教えてあげる。私が勝ったら、あなたは私の奴隷。徹底的に、い、イケナイコトしちゃう……」
「ボクこそシラユキさんに教えてあげます。世界には良い人や優しい人がいるってことを。ボクが勝ったら命令に従ってもらいますからね」
「んきゅ♡ い、いけない……顔が緩むところだった……」
命令に従ってもらうのセリフでシラユキの顔が緩みそうになる。コミュ障故に笑顔が苦手だったり、緊張から人と話す時に表情が強張っているだけなのだ。一人の時はエッチな小説を読んで、少年との熱愛を想像しグヘグヘと
ダンッ!
「はああぁぁっ!」
シラユキが床を蹴って飛ぶ。手には小さな氷の棒を持って。
最初に使おうとした
「たああっ!」
向かってくるシラユキにナツキが手を伸ばす。姉喰いスキルを集約し、手の先から解き放つように放出した。
ビビビビビッ!
「ぐあっ!」
シラユキが一瞬よろめく。しかし、すぐに体勢を整え、見惚れるほど美しい脚を伸ばして立ちはだかる。
「ぐっ、こ、この程度の攻撃が私に効くと思ったか」
「ええっ、ボクの攻撃が効かない」
「精神系スキルの攻撃か。だが、私に精神魔法は効かない」
クールな表情を崩さないシラユキに、ナツキもフレイアも驚きで目を見開いた。
「ちょっと! ナツキ少年の強烈なアレで立ってられるって、一体何なのよシラユキって……やっぱり男嫌いなの?」
フレイアもビックリだ。自分がくらった時は、とても抗えないほどの感覚だったのだから無理もない。
「そんな……つ、強い」
ナツキは心の中で驚愕した。
フレイアお姉さんとの特訓で強くなったと思ったのに。まだまだ修行が足りないのか。でも、ボクは諦めないぞ。まだ他に何か策があるはずだ!
「ふっ、ボッチ歴が長い私は強メンタルなの。精神攻撃など無意味……」
シラユキは心の中で超動揺した。
ぐっ、あああっ、あふっああぁ♡ だ、ダメぇ、膝が震えて倒れちゃいそう。何なのこの子、すっごく強い。こんなの聞いてないよ。
強メンタルなんて嘘です。ホントは寂しくて悲しくて、いつも涙で枕を濡らしてるのよ。他人の心無い言葉で傷付いてばかりのガラスのハートなんだから。弱メンタルでごめんなさいぃぃぃ~っ!
涼しく見えても滅茶苦茶無理して我慢しているシラユキだった。
「こ、こうなったら直接注入するしか……おっぱいとお尻を掴んで強く抱きしめ……」
ナツキが軍事訓練を思い出す。理由を考えてはいけない。返事は全てサー、イエッサーなのだ。
「お、おおお、おっぱいとか言うなぁ……気にしてるのにぃ。くぅ♡」
ナツキのおっぱい発言で更に動揺するシラユキ。完璧な造形美をしたシラユキでも、一つだけコンプレックスがあった。少々控え目な胸を気にしているのだ。
ちょっぴり控え目に見えるが、見事に均整のとれた美乳である。しかし、他の女将軍に巨乳が多いからか、やっぱり気にしてしまうのだろう。
「行きますシラユキさん! でやぁぁぁぁーっ!」
「ちょ、ま、待って!」
抱きっ! ギュゥゥゥゥーッ!
ナツキの姉喰いスキルで膝ガックガクなところに、直接タックルをくらって抱きしめられてしまうシラユキ。そこからゼロ距離で姉喰いスキルを打ち込まれる。
「えいっ!」
「ひぐぅ♡ な、なんのこれしき……」
「えいえいっ!」
「おっ♡ おほっ♡ き、効かないから……」
「うっ、強い。でも、えいえいえいっ!」
「ぎゅむぅぅぅ~っ♡ ひ、ひかにゃいって、うひっ♡ 言ってるれしょ」
滅茶苦茶効いていた――――
「あ、あひっ♡ ひょ、ひょうは、これくらいにしといてあげる。つ、続きは明日ね……」
氷の女であるシラユキの顔が真っ赤だ。今にも意識が飛びそうなほどフラフラなのに、限界を超えたところでギリギリ踏みとどまっていた。こんな蕩けた顔のシラユキは初めてである。部下が皆逃げ出して誰も見ていないのが救いだろうか。
「あ、えっと、シラユキ……部屋は用意してあるから、そこで休め……」
見かねたフレイアが声をかける。
フラフラと足を引きずり、シラユキが部屋へと向かう。そこに狡猾で残忍な女の顔など無かった。ただ、蕩けた事後っぽい顔の女だけだ。
この後、シラユキは部屋で一人、無茶苦茶イケナイコトした。
――――――――――――――――
お読みいただきありがとうございます。
フレイアとシラユキは、ちょろ……ゲフンゲフン、上手くいったようですが、この先の大将軍は、かなり強力だったりナツキがピンチになったりもします。でも、たぶん一生懸命なナツキなら大丈夫だと……
新ヒロインも続々登場しますのでお楽しみに。
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