第3話 抜き差しならぬエッチな戦い

 国境線リリアナ南部都市の城門前に立つ帝国最強七大女将軍の一人、炎の魔法使いフレイア・ガーラント。

 対するは、デノア王国幼年学校で、天の祝福ギフトが『ゴミスキル』と呼ばれているナツキ・ホシミヤ。


 攻撃力より見た目の破壊力が凄い露出度高めのムッチリ巨乳女と、まだ幼さの残る一見少女のような少年の戦いである。


「くっ、やりづらいわね。なんなの、この弱そうな少年。こんなの本気で攻撃したら後味が悪いじゃない。そ、それに、さっきから何か変な気分に……あんっ♡」


 フレイアが攻撃態勢をとりながら文句を言う。一人で来た相手が歴戦の勇者だと思って出撃したのに、こんな弱そうな若い少年で調子が狂っているようだ。


「あ、あの、フレイアさん」

 ナツキがフレイアに呼びかけた。


「な、何だ! 気安く私の名前を呼ぶな!」

「えっ、あの、じゃあ、お姉さん」


 ずきゅぅぅぅぅーん♡

「ぐっはっ♡ ううっ、な、何という破壊力だぁ♡ き、貴様ぁ! 何か精神系のスキルを使っているな! 見た目に騙された私が愚かだったわ!」


「えええ……ボク、何もしてないのに」


 ナツキが『お姉さん』と呼びかけただけで、フレイアが大ダメージを受けた。


 実はこのフレイア、エロくて破壊力抜群のボディと気の強そうな見た目から『悪魔のように凶悪な女』と評されているが、実は可愛い男の子大好きな超姉属性女だった。


 しかも噂が独り歩きして、男が怖がって誰も近寄らない。貞操逆転世界であるルーテシア帝国において、男に怖がられているフレイアは、まるで童貞をこじらせた男と同じなのだ。

 欲求不満が溜まりまくり、日々エロいことばかり考えているドスケベさんなのである。


「お、お、おのれ! デノア王国め! こんな恐ろしい敵を送り込んでくるとは! この最強の女将軍である私を恐怖させるなんて……ああぁ♡」


 ナツキの姉喰いスキルがクリティカルで効いているフレイア。もう陥落寸前の体を奮い立たせ、強靭きょうじんな精神力によってギリギリのところで踏みとどまっているのだ。


「あの、ボクの話を聞いてください」

「くぁあぁん♡ ボクとか可愛く言うなぁ」

「デノア王国は軍が崩壊し戦える状態じゃないんです」

「ああぁ♡ 少年の可愛い声が頭と腰の奥に響くぅ♡」

「だから兵を退いてくれませんか?」

「んああぁ♡ もう限界ぃぃ~っ♡」


 全く話が嚙み合っていない。


「はぁん♡ もう、何だか分からないけど、戦いで決着をつけるわよ! 少年が勝ったら何でも言うことを聞いてあげる!」


「ホントですか! な、何でも……分りました。じゃあ、勝負しましょう」


 フレイアが自分に勝ったら何でもすると約束してしまった。これが、そこらの男だったら必ずエロいことを考えるものだが、この時のナツキはマリーや幼年学校の女子達を無事に逃がすことしか考えていなかった。


 そして、純粋故にフレイアにとっては最強の敵だったのだが。



 ナツキは考えていた。帝国最強大将軍フレイアに勝つ方法を。


 そうだ……

 ボクは軍事訓練を受けたんだ。小一時間だけど。

 あの名前も知らない教官の話を思い出せ!

 確か、ふところに入り込み……おっぱいとお尻を掴んで……ベッドで無茶苦茶するように強く抱きしめる……。


「よしっ! ボクはやってやる! ゴミスキルだって、頑張れば何とかなるはずだ!」



 フレイアは考えていた。デノア王国最強の刺客……と思い込んでいる少年とラッキースケベする方法を。


 そうだ……

 私は帝国最強の七大女将軍なのよ。あんな少年に負けるはずがない。

 ちょっと私の大魔法でビビらせてやれば降参するだろう。ついでに少年がよろけて私の方に倒れ込み、うっかりおっぱいをタッチしちゃったり、太ももの上にダイブしてイケナイところをチョメチョメしちゃったり……。


「ぐっはぁ♡ たまんないわぁ~っ! 若い少年最高♡ 私ならやれる! なんたって最強スキルなんだから。楽勝でラッキードスケベよっ!」


 妄想が漏れまくっているフレイアが叫ぶ。何も隠れていない。



「行きます!」

「来なさい!」


 ナツキが飛び掛かろうとした瞬間、フレイアの体から獄炎のようなオーラが立ち上る。これが炎系スキル世界最強の力なのだ。


「全てを焼き尽くす深淵なる炎よ、我が力で顕現けんげんして敵を討て! 獄炎の矢ギーライーテ!」


 ゴバアアアアアアァァァァーッ!

 フレイアの詠唱で直上に巨大な炎の矢が出現する。


「えっ、ええっ! す、凄い!」


 ナツキが本気で驚いている。未だかつて、これほどに強力な炎スキルを使う者を見たことがないからだ。


 ゴオオオオオオッ!

 フレイアの真紅の髪が揺れ、体から立ち上るオーラで煌いている。黄玉トパーズのような美しい瞳と、露出度高めなローブから見える肉感的で魅惑的な胸や太ももが艶めかしい。


 絶体絶命の状態にもかかわらず、ナツキはフレイアの美しさに見惚れてしまっていた。


「き、綺麗だ……」

「へっ?」

「お姉さん、凄く綺麗」

「き、き、キレイって、ななな、なに言ってんのよ!」


 グワンッ! ズドドドドドドドドドォォォォーン!


 予期せぬナツキの誉め言葉に真っ赤になったフレイアが、天に伸ばしていた腕を振り下ろす。上空に留まっていた巨大な炎の矢が発射され、凄まじい轟音ごうおんと共にナツキの遥後方の地面に着弾した。


 当然、わざと外したのだ。あんな超強力な攻撃を受けたら、骨まで跡形もなく消え去ってしまうだろう。


「うわああああっ!」

「きゃっ♡」


 後方からの爆風で飛ばされたナツキが、見事フレイアの体に飛び込み、胸の谷間にホールインワンした。


 もみっもみっ! むにっ!

「あ、ああ、あの、ごめんな……」

「ラッキースケベ、キタァァァァーッ!」


 この場合のラッキースケベは逆である。

 謝ろうとしたナツキに対し、フレイアの方は初心うぶな男子に抱きつかれて大喜びだ。

 汗ばんだ胸の谷間に顔を埋めたナツキは、フレイアの甘ったるい匂いと柔らかな胸に包まれてアタフタしている。


 デノア王国で女子の胸を触ろうものならば、セクハラだと訴えられたりビンタでも飛んできそうなものだ。しかし、ルーテシア帝国では逆なのだ。セクハラとは女子が男子にするものである。


「あっ、そうだ! 胸とお尻を掴んで強く抱きしめるんだった」


 軍事訓練を思い出し、ナツキはフレイアを強く抱きしめ、重力に逆らうように突き出た巨乳とムッチリ感満載の尻を掴む。


「はあああぁん♡ こ、この子、純な見た目なのに積極的ぃ♡」


「え、ええっ! ここからどうすれば」


 ここまでしかナツキは教わっていなかった。やはり、女教官の誘いを快諾かいだくし、ベッドで夜の特訓を受けるべきだったのかもしれない。まさに手取り足取り腰取りだ。


「くぅぅ~っ、はああぁん♡ こんなの初めてぇ♡ 負けちゃう♡」


 ナツキの姉喰いスキルを直で受けたフレイアが陥落した。勿論、初めて男に胸や尻を触られた興奮もある。何かもう、いっぱいいっぱいだ。


「あの……もしかして、ボクの勝ちですか?」

「そ、そうとも言うかしら? ま、まあ、そういうことにしといてあげるわ」


 半信半疑のナツキがフレイアに確認すると、上気した顔と火照った体のフレイアが遠回しに認める。


「じゃあ、何でも言うことを聞いてくれるんですよね?」

「ひゃうっ! な、何でも……う、うん♡」

「ほ、本当に何でもですか!」

「うん……キミになら……い、いいよ」



 敵将が何でも言うことを聞いてくれるとあって、ナツキが心の中で歓喜した。


 やったぁぁぁぁっ!

 これでマリー先生や学校の皆が助かるぞ。平和的に解決できて良かった。これでボクも少しは強くなれたのかな。



 敵の勇者が何でも命令するとあって、フレイアが心の中で歓喜した。


 やったわぁぁぁぁっ!

 これで少年がエッチな命令をしてくるわね。合法的に少年とエッチできて良かったぁ♡ 遂に私も処女卒業ね♡


 ※ちなみにルーテシア帝国ではナツキの年齢は合法である。


 ここに、お互いの想いと欲望が合致して、デノア王国とルーテシア帝国のリリアナ国境会戦が終結した。

 ナツキは一人の犠牲者も出すことなく帝国最強七大女将軍の一人を打ち破ったのだ。かつて誰もが成し得なかった、帝国の大将軍に初めて土を付けたのである。


 だがナツキよ、油断してはいけない。フレイアは帝国七大女将軍の中で一番ショタ好きなのだ。他にも恐ろしいドS女将軍が待っている。


 進めナツキ。負けるなナツキ。夜の特訓も頑張れナツキ。帝国の大軍を退け救国の勇者となるのだ。


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